「紅白」の裏で台頭した3つの新勢力

 44年ぶりに旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)に所属する歌手の出場がゼロとなり、その影響が視聴率にどう出るかが気になる「第74回NHK紅白歌合戦」だが、旧ジャニーズが衰退する裏で3つの勢力が台頭している。

 1つ目は、大手レコード会社のソニーだ。44組の「紅白」出場歌手うち3分の1を超える14組が所属している。

「かつての『紅白』は、各レコード会社から均等に出場歌手を選定していました。アイドルやポップス、演歌など、バランスを取る意味もありましたが、ここ7〜8年でその流れが崩れました。2016年の西野カナから20年のLiSA(リサ)までの5年間、ソニー所属の歌手が日本レコード大賞を獲り、この5連覇に合わせるようにソニーの歌手が音楽業界を席巻しています。しばらく“ひとり勝ち”が続くでしょうし、『紅白』出場歌手もさらに増えるのではないでしょうか」(音楽業界関係者)

 2つ目は、K−POP勢である。韓国発の多国籍ガールズグループ・TWICE(トゥワイス)から派生した日本人ユニット・MISAMO(ミサモ)、男性グループのStray Kids(ストレイキッズ)とSEVENTEEN(セブンティーン)の3組が初出場、2回目となるLE SSERAFIM(ル・セラフィム)を加え総勢4組を送り込んだ。

「4組のうちMISAMOとStray KidsはNiziU(ニジュー)と同じくJYPエンターテインメントの所属で、SEVENTEENとLE SSERAFIMは世界的な人気を誇るBTSと同じHYBE(ハイブ)の所属です。いずれも日本市場に力を入れている韓国の芸能プロです。空前のK-POPブームを巻き起こしたKARA(カラ)と少女時代が2011年に『紅白』に初出場したのをきっかけに、NHKは韓国芸能界とのパイプを強化しています。日本の若い女性を中心にK-POPは大変な人気です。歌だけではなくそのファッションもマネているだけに、若い女性視聴者を取り込むには格好のコンテンツです。とはいえ、大晦日には韓国でも『紅白』と同じような大型音楽番組が放送されます。『紅白』に出場するということは、日本での活動に本格的であるという意気込みの表れでしょう」(同前)

 そして3つ目が、老舗芸能事務所のアミューズだ。「紅白」常連組の福山雅治、星野源、Perfume、2回目となるエレファントカシマシ、そして歌手としては初出場となる大泉洋の5組を送り込んだ。

 特に注目すべきは、昨年まで3年連続で司会を務めた大泉を、今年は歌手として初出場させるという“離れ業”を成し遂げたことだろう。

「紅白」を埋めるアミューズ勢

 大泉はNHKの音楽番組「SONGS」の司会を2018年5月から務めている。今年11月2日に放送された「SONGS 生放送スペシャル」では、大泉と同じく北海道出身の玉置浩二が曲を提供した新曲「あの空に立つ塔のように」をテレビ初披露。よくよく考えると、これは歌手としての「紅白」出場への布石でもあった。

「福山と大泉が出演した今年4月期のドラマ『ラストマン−全盲の捜査官−』(TBS系)は、平均視聴率12・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)を獲得しました。他局のドラマとはいえ、『紅白』で2人を絡ませる演出があるかもしれません。大泉が主演した19年7月期のドラマ『ノーサイド・ゲーム』(同前)も平均12・0%。大泉もそれなりに“数字を持っている”と言われていますから、歌手としての初出場にゴーサインが出たのでしょう」(レコード会社社員)

 他のアミューズ勢を見ると、デビュー30周年で初出場した17年以来の返り咲きとなるエレファントカシマシ。そして、もう一組――、

「08年から16年連続で出場となるPerfumeは、ここ数年、最新映像技術でなんとか見せてはいますが、実際に歌っているわけではないのに連続出場を続けています。『紅白』は本来、口パクには厳しいことで有名ですが、どうやら例外のようです。おそらく今後、デビュー45周年を迎えたサザンオールスターズの特別枠での出演と、来年の大河ドラマ『光る君へ』で主演を務める吉高由里子 の審査員就任が発表されると思います。いずれもアミューズの所属タレントです。そうなったら、“アミューズ祭り”になってしまいますね」(前出の音楽業界関係者)

 アミューズは渡辺プロダクションでキャンディーズのマネジャーを務めた大里洋吉 氏が1977年に設立。サザンオールスターズやタレントの三宅裕司、女優の富田靖子らを売り出し、創立10周年のオーディションで後に事務所の看板となる福山を発掘している。その後も続々と売れっ子になる俳優や歌手を発掘・育成し、芸能界で確固たる地位を築いた。

 大里氏が還暦を迎えた2006年には東証1部(現・プライム)に上場し、株式の一部を所属タレントや従業員に贈与して話題になったこともある。大里氏は現在、代表取締役会長の職に就いているが、ハラスメントや過剰労働といったブラックなイメージが強い芸能界において、アミューズは数少ない上場企業というクリーンな会社でもあり、NHKと太いパイプを築いてきた。

「10年の大河ドラマ『龍馬伝』の主演に福山が、翌11年の『江〜姫たちの戦国〜』の主演に上野樹里が起用されました。2年連続で同じ事務所のタレントが大河の主演に起用されるのは極めて異例のことでした。福山はNHKからのオファーでしたが、上野は『女性の大河をやりたい』とNHKが思っていたところにアミューズが売り込んで見事にハマったといいます。当時、アミューズの看板を背負っていたサザンは、無期限の活動休止中でした。活動を再開した年の『紅白』には、なんとしてもブッキングしたいという思惑もあったのでしょう。復活した13年には、中継ながら『紅白』にシークレットゲストで出演を果たしています」(ベテラン芸能記者)

 この頃から双方の関係は、より深いものになっていったようだ。大河ドラマでは、21年の「青天を衝け」で吉沢亮、来年の「光る君へ」で吉高が主演を務める。朝の連続テレビ小説では、14年前期の「花子とアン」で吉高がヒロインを務め、15年後期の「あさが来た」では当時はまだ無名だったディーン・フジオカをねじ込んでブレークを果たす。そして21年前期の「おかえりモネ」では清原果耶、同年後期の「カムカムエヴリバディ」ではトリプル主演の1人で深津絵里がヒロインを務めている。

NHKとベッタリするよりも…

 芸能事務所としては盤石なはずだったが、21年4月、俳優の佐藤健と神木隆之介がアミューズ出資の新会社に移籍。海外でも活動する人気バンドのONE OK ROCKが独立。続いて22年3月に上野樹里、同年9月に賀来賢人が退所し、非常事態かと思われた。

 19年に社長に就任した中西正樹 氏は、21年7月、山梨県富士河口湖町に創立したアミューズヴィレッジに本社を移転させるなど、斬新な経営で話題になった。しかし、佐藤や上野らは、その経営方針に賛同していなかったとも言われている。

「中西社長はそれまでの経営方針を受け継いでテレビや映画に固執していましたが、事務所を出たタレントたちはネット配信のコンテンツやYouTubeなど、ニューメディアに新たな可能性を求めたかったのです。しかし、中西社長は佐藤と神木を“身内”扱いしたかったようで、彼らの新会社に出資することで落ち着きました。とはいえ、事務所の屋台骨を支えるのは、俳優ではいまだに福山で、女優は吉高。サザン、三宅は相変わらず健在で、女優の堀田真由、俳優の渡邊圭祐らも台頭。新日本プロレスと業務提携し、所属レスラーとマネジメント契約を結ぶなどしていますが、11月14日に発表された23年4〜9月の連結決算で、最終損益は1億6300万円の赤字。他局に比べて出演料が安いNHKと太いパイプがあったとしても、経営的には安泰ではないでしょう。それに、旧態依然のNHKとベッタリするより、配信系とガッツリ仕事をしたほうが将来的にはよさそうです。今後も長く活躍できる若手の役者や歌手の発掘・育成が喫緊の課題でしょうね」(前出のベテラン芸能記者)

デイリー新潮編集部