鈴木亮平が主演する日曜劇場「下剋上球児」(TBS)の視聴率が振るわない。物語が終盤に入った12月3日放送の第8話も、視聴率9・9%と二桁に乗せることができなかった(以下、視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)。

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「下剋上球児」の原案は、スポーツライター・菊地高弘氏が上梓した同名のノンフィクション。10年連続で県大会初戦敗退だった三重県立白山高校の野球部が、2018年夏の甲子園に初出場するまでの軌跡を描いた。実話を元にした野球ドラマということで、高校野球ファンからも期待されていたのだが……。民放ディレクターは言う。

「高校野球を描いたドラマといえば、05年の山田孝之・主演『H2〜君といた日々』、08年の佐藤隆太・主演『ROOKIES』などがあります。いずれもTBSのドラマで、原作はあだち充の「H2」、森田まさのりの「ROOKIES」といずれも漫画でした」

 特に「ROOKIES」は、熱血教師が不良の溜まり場と化していた野球部の再建に乗り出し、球児たちの葛藤を描きながら野球シーンも丁寧に描いたことで人気を呼んだ。最終回には視聴率19・5%を叩き出し、映画化もされた。

「視聴者は『下剋上球児』に“リアル・ROOKIES”を期待していたと思います。あるいは、弱小ラグビー部が熱血教師の指導で全国優勝を果たした実話をドラマ化した『スクール☆ウォーズ』(TBS)の高校野球版を思い描いていたのでは。ところが、いまだ初回の10・8%が最高の数字です」

 なぜ数字が上がらないのだろう。

野球シーンにアニメ

「元高校球児などの野球経験者をオーディションで選んだということで、本格的な野球シーンが期待されていました。初回には元阪神の内野手・鳥谷敬も出演。ところが、そのような出演者を集めた割にはプレーのシーンが少なく、球児の成長ぶりや強くなる過程が見えてこない。それが数字が上がらない原因のひとつだと思います。投手と打者の駆け引きや得点シーンなど、実際の試合の手に汗握るゲーム展開が見たい野球ファンにとっては、球児たちを応援したくなるような感情移入ができないのだと思います。野球シーンに見どころがないため、このチームがなぜ“下剋上”できたのか疑問に思う人も少なくないでしょう」

 当初は、野球シーンの一部がアニメで表現されることも話題を呼んだ。アニメを用いた理由について、担当プロデューサーの新井順子氏は、次のように発言している(『下剋上球児』迫力ある野球シーンに反響 「エモさを出すため」アニメーションも用いて表現:マイナビニュース・10月16日)。

《バットに球が当たるとき、アニメだと周りに線を描いたりして「ビューン!」「カキーン!」と描きやすいですが、実写だと「コン!」って当たるだけで盛り上がらない。ものすごくスローで撮影しても、球がぐにゃっとはならないので、当たる球や走る足元など、実写では伝わりづらい表現をアニメーションで描いています》

 まあ確かにアニメなら、「巨人の星」(日本テレビ)の“大リーグボール”や「侍ジャイアンツ」(同前)の“エビ投げハイジャンプ魔球”のような、実写では描けないシーンも可能だ。

 ところが逆にSNSでは「アニメが邪魔」「リアリティがない」という声が上がった。

無免許教師

「実写に突然アニメが挿入されると、興ざめしますからね。日曜劇場には『ルーズヴェルト・ゲーム』という社会人野球を描いたドラマがありましたが、こちらは人間ドラマが中心ながら野球シーンも丁寧に描かれていて、野球ドラマとして十分に見応えがありました。『下剋上球児』は、そもそも野球シーンに重きを置いていなかったのかもしれません」

 野球に重きを置かないとは?

「野球シーンや球児たちにスポットを当てるのではなく、その周りの大人たちにスポットを当てる人間ドラマの作品にしたかったのでしょう。前半で物語の主軸となった鈴木亮平が教員免許を偽造したことに葛藤するところとか……。もっとも、このサイドストーリーは原作にはありませんが」

 教師が無免とは意外だったが、創作だったのか。

「なぜ無免許教師にしたかったのかはわかりませんが、リアルではないストーリーが足を引っ張り、選手の成長やチームが強くなる過程が雑になっているのだと思います。そのため野球ファンが付いていかなかったのでしょう」

 最高視聴率19・6%を記録した前作「VIVANT」と比べるのは酷かもしれないが、初回の10・8%が最高とはかなり厳しい。

「視聴率10%でも低いと言われてしまうのが日曜劇場です。県大会もベスト8まで進み、いよいよ甲子園出場に向け野球シーンが増えるはずですが、数字が上がるかどうか……」

デイリー新潮編集部