先日、デイリー新潮編集部に、こんな【情報提供】が寄せられた。

《5月に横浜で開催される「横浜韓日にぎわい祭り」というイベントに、元東方神起のユチョンがゲストとして出演します。彼は覚醒剤使用の前科、税金の滞納も報じられていますが、来日できるのでしょうか。またそんなイベントを神奈川県と横浜市が後援しているのはおかしくはないでしょうか。日本で行われるのに、日韓ではなく韓日という表記も気になります》

 確かに気になる。

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 件の「横浜韓日にぎわい祭り」をネットで検索すると、トップに現れるのは駐横浜大韓民国総領事館の公式ホームページだ。「お知らせ」として以下のように紹介されている。

《「2024横浜韓日にぎわい祭り」開催(5/18〜5/19)/当館では昨年に続き、韓日市民交流の拡大及び両国の友好促進のために「2024横浜韓日にぎわい祭り」を下記のように開催いたします。是非とも多くのご関心をお寄せいただき皆様お誘い合わせの上、会場までお越し下さい》

 山下公園にほど近い横浜港の発祥地「象の鼻パーク」で開催されるこのイベントの主催は2024横浜韓日にぎわい祭り実行委員会、共催に駐横浜大韓民国総領事館、その下には確かに《後援:神奈川県/横浜市》とある。

 そして18日に予定されているステージ公演のトリに《韓流歌手公演:PARK YUCHUN》の文言が。

 パク・ユチョン(37)という名に聞き覚えのない方も東方神起はご存知だろう。2004年に5人組のアカペラ・ダンスグループとして韓国でデビューし、翌05年には日本にも活動の場を広げ、07年に日本武道館でのライブを成功させるなど大人気となった。その後の彼については、韓国の日刊紙・中央日報の日本語電子版が今年2月11日、「麻薬・脱税・性暴行の韓国芸能人、国内活動ふさがり日本攻略…『厚かましい』」との見出しで報じている。

母国の新聞が非難

《麻薬、飲酒測定拒否、集団性暴行、脱税など各種犯罪で社会的物議をかもした芸能人が海外活動を続けており公憤を買っている。事実上韓国国内で活動できない状況になり海外ファンを攻略したのだ。/麻薬投薬容疑に続き税金滞納で議論を起こした歌手で俳優のパク・ユチョンは9日に東京で10日まで2日間にわたりファンミーティングを開催した。11日には横浜のホテルでディナーショーも開催する。(中略)14日に韓国国税庁が公開した国税を1年以上滞納した高額・常習滞納者7966人の名簿で、パク・ユチョンは2016年に譲渡所得税など合計4億900万ウォンの税金を払っていないことがわかった。/パク・ユチョンは2015年8月に社会服務要員として代替服務している間に性暴行容疑で訴えられている。無嫌疑処分を受けたが、2019年4月には覚醒剤投薬容疑で逮捕起訴され懲役10月に執行猶予2年を宣告された。》

 彼は覚醒剤使用で有罪判決を受け、税金滞納者リストにも名前があるという。韓国内では活動できない状態にもかかわらず、日本でファンミーティングやディナーショーを開催して稼いでいることを非難しているようだ。

 その昔、ローリング・ストーンズが日本でライブができなかったのは、たとえ国外であっても、薬物犯罪の前科がある場合、日本に入国できないという入国管理法(出入国管理及び難民認定法)があるためと言われてきた。最近は入国できない期限が短くなったのだろうか。出入国在留管理庁に聞いた。

無期限です

「個別の案件については回答を控えさせていただきますが、我が国の入管法第5条には《次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない》とあり、第5条第1項5号には《麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者》が定められています。つまり、上陸できない期限は無期限となります」(出入国在留管理庁)

 無期限!?

「ただし、本邦に上陸できない外国人に対して、上陸を特別に許可できることが入管法第12条で《法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該外国人が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の上陸を特別に許可することができる》と定められています。先ほどの上陸できない外国人から上陸申請がなされた場合、上陸を希望する理由や該当する上陸拒否理由の概要、経過した期間などを勘案して総合的に判断しています」(同前)

 つまり、基本的には無期限だが、特例として入国が認められる場合もあるということだ。すでにユチョンは、2月に入国済みだ。ファンミーテイングやディナーショーの開催が理由でも入国が認められるのだろうか。

「仮に興行が目的であっても、審査を行って問題ないということになれば認められることもあります」(同前)

市と県の回答

 そんなユチョンが、5月に開催予定の神奈川県と横浜市が後援するイベントに出演する。なぜイベントを後援しているのか、横浜市に聞いた。

「横浜市では後援の名義を使用する際の規則があり、その要綱に則って確認したことになります。特に不備がない限り認められますが、今回は申請をされた方々が総領事館という国を代表される団体であるということ、行事の公益性、会場が横浜市内だということで広く市民の皆さんにもご参加できるものということから名義使用を承諾したものです。ちなみに、予算などは一切発生しておりません」(横浜市広報)

 なるほど。とはいえ、薬物の前科や税金未払いなどがあるタレントがゲスト出演するイベントを後援するのはどうだろう。

「提出していただいた申請書には、具体的な出演者のお名前などは書かれていませんでした」(同前)

 では、いくら韓国を代表する団体の主催でも、日本で開催するイベントに“韓日”というのは?

「私どもは『2024横浜“日韓”にぎわい祭り』という行事について後援名義の使用申請をいただいておりました。それに対して承諾をしたということです」(同前)

 申請時は“日韓”だったのに、いざ開催となったら“韓日”にすり替わっていたというのだ。

 神奈川県にも話を聞くと、答えはほとんど同じ。あくまでも後援の名義貸しということだった。では、申請書のイベント名はどうなっていましたか?

「行事の名前ですか? えー、『2024横浜“日韓”にぎわい祭り』ですね」(神奈川県広報)

 ちなみに、横浜市も神奈川県も申請とは異なり“日韓”が“韓日”に置き換えられていても、特に問題はないという。後援に名を連ねておきながら、主催に丸投げというのは無責任ではないか。最後に、両者の言うとおり、イベントを主催する2024横浜韓日にぎやか祭り実行委員会に聞いてみよう。

「はい、駐横浜大韓民国総領事館です」

 電話番号は総領事館と共通だった。デイリー新潮であることを名乗り、なぜユチョンをゲストにしたのか、“日韓”ではなく“韓日”にしたのはなぜか、質問事項を伝えた。

「わかりました。いま担当者が会議中なので、終わり次第連絡させます」

 その後、一切連絡はなかった。情報提供者の懸念に、主催者も後援者も誠実に答えるべきではないだろうか。

デイリー新潮編集部