3月30日に最終放送を迎えた「日立 世界ふしぎ発見!」(TBS系、以下「ふしぎ発見!」)が取り上げた国は約170カ国にのぼる。司会の草野仁氏(80)が、出演者の知られざる素顔を明かしてくれた。

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「番組が放送された38年間は、大学を出て就職した会社員が60歳の定年を迎えるまでの期間とほぼ同じです。これほどの長寿番組となったのですからやるべきことはやったという思いがある。だから寂しいということはないんですよ」

「ふしぎ発見!」が始まったのは1986年。クイズ番組では最後発だった。

黒柳徹子は「クイズ番組には出ないの」

「当時はNHKを辞めて2年目。そこへ歴史をテーマにした番組をやらないかとの話が来たのです。しかし、私はスポーツと報道しか経験がないから断った。ところが、TBSのそばにある店でテレビマンユニオンの社長さんたち6人に説得されまして、見せてもらった企画書をよく覚えています。扉のページを開くと、

〈あなたもインディ・ジョーンズになってみたいと思いませんか〉

 とあり、エジプトを例に、30項目ほどのテーマが書き込まれていた。ざっと考えただけで、これだけのアイデアが浮かぶのだから、10年は続けられる、とある。その熱意に押されて、“じゃあ、やってみましょうか”となったのです。しかし、他にも難題がありました。解答者として黒柳徹子さんの名前はすぐに挙がったのですが、“クイズ番組には出ないの”とそっけない返事。間違えると馬鹿にされるというのが理由でした。でも、正解を求めるだけではなく世界史の謎を楽しむ企画なのだと力説したら、“1週間考える時間をちょうだい”と。その後で再びスタッフが打診すると“やっぱり出させてください”と応じてくださった」

“答えを教えていた”説の真相

「黒柳さんの正答率が高かった(通算で約6割)ことから、答えを教えているのではないかと疑われたこともありました。実は出演交渉の際に“収録の1週間前に次の回の大まかなテーマを教えてほしい。少しでも準備をして出演したいので”というご希望があったので、黒柳さんはもちろんのことゲスト全員に同じ条件で始めることになったのです。すると何と毎回、関連書籍を何冊も読んで収録に臨むようになりました。ある時目を赤く充血させたままスタジオに現れたので、どうしたのかと聞いてみたらヨーロッパの古代史の専門書を10時間以上読んできたという。その番組に真剣に向き合う姿勢は本当に頭が下がりました。

 一方でご存じのように野々村真君は、正答率が高くなかった。最初の頃は間違ってばかりで、会議で“交代してもらったほうがいいのでは”という意見も出たのです。でも、私が“解答者全員の出来がいい必要はない”と反対したら、3カ月様子を見ることに。すると、彼のお母さん世代の女性視聴者が熱心に支持してくれた。懸命に答える姿が好感されて、レギュラーに定着したのです。

「100歳が目標」

 当時、似ている番組として『なるほど!ザ・ワールド』(フジ系)がありましたが、向こうは視聴率30%を記録するお化け番組。こちらは3%台と低迷したこともありました。でも(スポンサーの)日立の宣伝部長さんが、“慌てる必要はない”と言ってくれたのが大きかった。やがて視聴率は2桁に乗り、反対に『なるほど!〜』はコンセプトを変えたこともあって、数字を落としてしまいました。『ふしぎ発見!』も終わる1年ほど前から、『ヒトシ君人形』を没収する“ボッシュート”をやめてしまったのですが、コンセプトまで崩すのは良くなかったかもしれません」

 合計1700回余りの放送ではお蔵入りになったロケもある。

「例えば、元大関の栃ノ心の故郷・ジョージア(グルジア)を取り上げた回(2018年)です。8000年前から世界最古のワイン作りが行われており、その製法はかめを地中に保管しておくという独特なもの。貴重な映像を撮ることができたのですが番組ではその部分に十分に時間を割くことができず、もう少し歴史を見てみたかったと思います。

 以前ほどではありませんが、エアロバイクや腹筋は毎日行っており、ウォーキングも続けています。私の父親(数学者)が102歳まで生きたから、私も当面は100歳が目標。日本は世界一の長寿国ですが、自立して生活できる「健康寿命」はそれほどでもない。これからは、それをどうやって延ばすのかについて関心が高まるはずです。だから、次は何をやりたいかと聞かれたら健康長寿番組を司会したいですね」

「週刊新潮」2024年5月2・9日号 掲載