日テレ「街並み照らすヤツら」

 人気アイドルグループ・SixTONES(ストーンズ)の森本慎太郎(26)が主演を務める日本テレビ系ドラマ「街並み照らすヤツら」(土曜午後10時)。第1話(4月27日)の視聴率は世帯平均5.1%、個人3.0%、第2話(5月4日)は3.4%、2.0%、第3話(同11日)は3.0%、1.6%と下降気味だが、意外な評判が聞こえてきた(ビデオリサーチ、関東地区)。※以下、ネタバレがあります。

 オリジナルの同作はさびれた商店街が舞台。父親からケーキ屋を受け継いだ店主の竹野正義(森本)が、経営難の店を立て直すため偽装強盗という悪事に手を染める。それをきっかけにどんどんドツボにはまっていくという悲喜劇を描いたヒューマンエンターテインメントだ。

 放送ライターがこう話す。

「この枠はもともと小学館の漫画原作ドラマを放送する予定でした。しかし、昨年10月期放送の日テレ系連続ドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんが死去した影響で予定されていた作品が急きょ中止になってしまったのです。『セクシー田中さん』と同じ小学館の漫画原作だったことがその理由です」

 日テレが当初のドラマの見送りを決めたため、スタッフは急ごしらえで別のドラマの制作に追い込まれてしまった。突貫工事を強いられたスタッフたちには気の毒な話だ。

 第3話では、主人公の正義たちが保険金目当てで偽装強盗を繰り返しているという噂が、商店街に広まり始めていた。それなのに正義は、愛妻の彩(森川葵)が毎晩スナックで働いていることにイライラを募らせる。気になってスナックをのぞくと彩は、商店会長で大地主の大村一郎(船越英一郎)の隣で楽しそうに笑い声を立てていた。一方、時計店主の向井(竹財輝之助)から偽装強盗を頼まれた正義は、腐れ縁のビリアードスナック店主の荒木(浜野謙太)と計画を実行に移そうとする……。

「第1話から3話を通して目立つのは屋外ロケが極端に少ないことです。TBS日曜劇場『アンチヒーロー』は都内繁華街のビル屋上や雑踏、居酒屋など多くのスポットでロケをしていて見ごたえ十分。比べるのは酷ですが、『街並み』のロケはほぼ都内の小さな商店街や公園です。ほとんどの撮影はスタジオ内に作ったセットの中で進んでいるためスケール感がなく狭苦しい感じがしますね。準備する時間が少なかったため無理もありませんが」(前出の放送ライター)

森本慎太郎のオドオド演技

 ところが、このドラマ。さびれた商店街に昭和の雰囲気が漂い、懐かしさが胸にこみあげてくることもあってネットでは意外と好評なのだ。

「予定調和と真逆の即興劇に立ち会っている感じ」「下北沢の芝居小屋に座っているような気になる」「筋も読めないしそんなに視聴者に親切じゃないけどそこがいい。かなり面白い」「なんかハマってしまった。じわじわ面白いんだよね」「殴ろうにも殴れない荒木と殴られたい向井の『間』が面白かった!」「このドラマだけリアルタイムで見ている」など賞賛する声が目立つ。

 脚本を担当したのは綾野剛主演の映画「そこのみにて光輝く」(2014年)でキネマ旬報ベスト・テン脚本賞を受賞した高田亮氏と、山下智久主演のNHK4月期ドラマ「正直不動産2」(2024年)を共同担当した清水匡氏。いずれも人間ドラマを深く掘り下げる手腕で知られている。

 スポーツ紙芸能デスクが指摘する。「森本のオドオドとした演技は正義の優柔不断な人柄をよく表現していますし、妻役の森川葵のホステス姿も見違えるような色っぽさ。浜野の目の据わった演技も卓越です。何より些細なきっかけで偽装強盗を繰り返すようになってしまった主人公と友人たちの姿は、飲酒のせいで雪だるま式に状況が悪化していく仲間たちの大騒動を描いたアメリカの大ヒットコメディー映画『ハングオーバー!』シリーズを思い出させます」

 正義と荒木、その常連客の計4人で始めた偽装強盗が商店街のあちこちで始まり状況はどんどん悪化していく。しかし、それは自分たちの生活を守るための自衛手段というのも、現代社会に向けられた皮肉になっているようだ。

「ロケが少ないためセットがフル活用されていますが、それがかえって効果的で斬新ですね。ブラックな吉本新喜劇を見ているような錯覚を抱きますし、ブラックジョーク満載のストーリーは宮藤官九郎作品のような悪ノリを感じます。実際、酒店店主役で出演している俳優の皆川猿時は、松尾スズキが主宰する『大人計画』に所属していて、クドカン作品の常連としても有名です。今作では、売り物の酒を飲んでしまう典型的なダメ親父をオーバーな演劇調で演じているところも、芝居を見ているようで痛快です」(前出の芸能デスク)

 今後、正義が暮らす商店街は“正義”を取り戻せるのか。コアなファンは偽装強盗の行く末を、固唾を飲んで見守っている。

デイリー新潮編集部