NHKは昨年8月、連続テレビ小説「虎に翼」の出演者について「第2弾」の発表を行った。公式サイトに《寅子が通う明律大学の仲間たち》として6人の俳優が紹介され、その筆頭に掲載されたのが土居志央梨だった。

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 土居は1992年7月生まれの31歳。NHKは役柄の説明として冒頭に《さっそうとした男装の女性》と記した。番組側は土居の男装が視聴者への“アピールポイント”になると当初から考えていたのだろう。とはいえ、これほど話題を集めると予想できた関係者は、さすがにいなかったのではないだろうか。担当記者が言う。

「『虎に翼』がスタートしたのは4月1日。17日に第13話が放送されると、土居さんが演じる『山田よね』の苛酷な生い立ちが描かれました。その際に男装の理由も明かされると、XなどのSNSには衝撃を受けた視聴者からの投稿が殺到。日刊スポーツの電子版などがネット上の反響を記事にするほどの盛り上がりを見せました。それ以来、常に土居さんの演技に注目が集まっているのです」

 5月14日にはスポーツ報知が「『虎に翼』男装話題の土居志央梨ってどんな人?『朝ドラ反響は予想外です』…役のため短髪&鉛筆持ち方矯正」とのインタビュー記事を配信。土居は朝ドラの反響を「想像外。正直驚いていますし、うれしいです」と手放しで喜んだ。

 民放キー局で番組制作に携わるスタッフは、「土居さんは身長が168センチと高く、これも《さっそうとした男装の女性》という役のイメージに合ったかもしれません」と言う。

在学中から活躍

「3歳の時からクラシックバレエのレッスンを受け、高校在学中からバレエ団の本公演にも出演するほどの実力でした。バレリーナとしてプロになるのは確実と思われていたようですが、土居さんは『バレエ以外の人生を知らずに終わってしまう』と京都芸術大学(註:当時は京都造形芸術大学)の映画学科俳優コースに進んだのです」(同・スタッフ)

 朝ドラで土居が好演していることもあり、特に民放キー局のドラマ班では京都芸術大学のことが話題になっているという。これについては後で詳述する。

「土居さんは在学中からプロの役者として認められ、主演の舞台が上映されたり、TBSの『水戸黄門』に出演したりするなど、その才能が注目されていました。そして大学4年生の時にオーディションを受けて、高橋伴明監督の映画『赤い玉、』の役を勝ち取りました。2015年9月に公開されると、まさに体当たりと表現すべき大胆な演技姿が披露され、一気に知名度を上げたのです」(同・スタッフ)

 2018年2月に公開された映画「リバーズ・エッジ」で土居は女子高生役を熱演。さらに同年8月に上映された舞台「グレーテルとヘンゼル」は小日向星一との二人舞台で、土居は5歳児を演じてこれも注目された。

京都造形大学の好循環

「今、テレビ業界では京都芸術大学出身の役者さんは要注目と言われています。筆頭は黒木華さんで、彼女が4年生の時、土居さんは1年生でした。さらに『虎に翼』で、主人公寅子の兄・猪爪直道を演じている上川周作さんは土居さんの同級生。さらに土居さんと上川さんの先輩が、映画『夜明けまでバス停で』の大西礼芳さんと、テレビドラマ『恋がヘタでも生きてます』の土村芳さん、という具合です。さらに土居さんの後輩にも辻凪子さんという将来を期待されている役者さんが控えており、今後もいい俳優が続きそうな気配です」(同・スタッフ)

 俳優だけでなく、演出やプロデュースを学ぶコースもあるため、スタッフとして頭角を現しているOB・OGも少なくないという。

「まさに黒木さんがフロントランナーで、京都芸術大学出身の役者さんに光が当たりました。すると黒木さんの後輩が様々な作品で好演して話題が膨らむ。土居さんや上川さんが朝ドラで脚光を浴びると、さらに京都芸術大学の名前が広く知られる。こんな好循環が生まれています。さらに土居さんの場合、芸能界広しといえども、彼女のような個性を持っている役者さんはそうはいません」(同・スタッフ)

他の役者にはない魅力

 今の「虎に翼」で土居は、背の高さを活かした、凛とした雰囲気の女性を演じている。すると業界からは「次回は全く逆の役を演じているところを見たい」という声が出るという。よほど演技力に期待されているのだろう。

「土居さんは若手の役者さんですが、早くも江口のりこさんのような、オリジナリティあふれる魅力を放ちつつあります。あまりいないタイプなので、今後はキャスティングの候補として常に名前が挙がるのではないでしょうか。朝ドラが終わってからも、テレビドラマに映画、舞台と大活躍するのは間違いないと思います」(同・スタッフ)

デイリー新潮編集部