YouTuberとして活動している元雨上がり決死隊の宮迫博之の5年ぶりのテレビ復帰が白紙になった騒動。ライターの冨士海ネコ氏は、今回の騒動で彼の「優秀」ゆえの弱点が浮き彫りになったと分析する。

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 元雨上がり決死隊の宮迫博之さんは、力のあるお笑い芸人なのか。少なくとも本人は自負があるようだ。「Youtuberおもんない」発言を皮切りに、前々から因縁のあった霜降り明星・粗品さんとの舌戦の流れで、「テレビに出てた時の俺を超えてから言え!」「『アメトーーク!』みたいな番組、作ったっけ?」との発言は反響を呼んだ。これに対し、粗品さんは他の芸人の見せ場を奪ってドヤ顔をする宮迫さんのやり口を取り上げて応酬、「よく言ってくれた」との声も上がっている。

 宮迫さんは、5年ぶりの地上波復帰が立ち消えになるという憂き目にも合った。千葉テレビのバラエティー番組「匠の教室」にゲストとしてオファーがあり、撮影・納品まで済ませたがお蔵入りになったという。放送前に宮迫さんがYouTubeで告知をしたことが問題ではないかといわれているが、制作会社プロデューサーは直々に動画に出演して否定。事前告知も番組側からの依頼だったそうだ。粗品さんやアンチに何を言われようと、宮迫さんのタレントパワーはまだ健在だと考える業界人は少なくないということだろう。

 コンビ時代はABCお笑いグランプリ優秀新人賞や上方漫才大賞新人奨励賞などを受賞し、「ワンナイR&R」などで人気を博した宮迫さん。俳優としての演技力にも定評があり、山口智充さんとのデュオ「くず」は、紅白に出る話もあったという。お笑い芸人としての力量はさておき、芸達者なタレントということは認めざるを得ない。

 ただ、いま宮迫さんが苦境に追い込まれているのは、本人も自負するその「優秀さ」のせいであるともいえる。なんでも一人でこなせてしまう器用さで、人を頼らず自己解決しようとする「優秀さ」が、裏目に出ているなとつくづく思うのだ。

闇営業からYouTubeまで……悪手を繰り返す宮迫に見る「カッコつけ」な自己解決グセ

 自分は優秀だから、人の手を借りずとも失敗はカバーできる。おそらく宮迫さんは、今までそうした成功体験があったのだろう。でも闇営業から今回のテレビ復帰騒動に至るまで、ことごとく悪手を繰り返している。問題を解決することではなく、優秀な自分を証明したいということを優先し、差し伸べられた手をつっぱねているからだ。

 闇営業問題の発覚直後、相方の蛍原徹さんに相談もなしにYouTubeを始めただけでなく、事件について釈明するロンドンブーツ1号2号の記者会見前日にチャンネル開設をぶつけてきた宮迫さん。さらに動画内では吉本興業への不満をぶちまけ、当時の会長である大崎洋氏の不興を買った。しかしそれだけの不義理をしながらも、2年後には「アメトーーク 特別編 雨上がり決死隊解散報告会」という企画が、Abemaと吉本興業公式YouTubeチャンネルで配信される。ただここでも、宮迫さんに反省の色は見られなかった。蛍原さんにはいつもの「ブスイジリ」、ゲストの出川哲朗さんにも「(九九の)7の段」を言わせて「そういう場じゃないって」と返されていたが、薄笑いでスルー。「俺はお前らが思うほどダメージを受けてない」と言いたかったのだろうか。せっかくテレビ朝日や吉本興業、芸人たちが苦労して整えてくれた場所を、無駄にしたと思われても仕方ない振る舞いだった。

 多くの芸人と親交のある芸能記者による記事では、宮迫さんを表現するワードとして、「カッコいい」と「カッコつけ」を挙げている(「雨上がり決死隊」、解散への分岐点(中西正男) - エキスパート - Yahoo!ニュース)。後輩から何か頼まれると、断るのは「カッコ悪い」から二つ返事でOKする。しかし客観的に見ると、やめた方がいい、スルーした方がいいと思われることも了承してしまうと書かれていた。

 自分の優秀さを周囲に分からせたい、他人の手を借りた成功やトラブル解決では意味がない。宮迫さんの行動が批判される時は、、そうした独りよがりな「カッコつけ」気質が一貫して見られる。

本当に反省すべき時も「カッコつけ」を優先する態度への失望 「優秀さ」の証明よりも必要なことは

 騒動を受けて、宮迫さんはYouTubeを更新。「知名度ある一般人から、お話があります」という動画で、粗品さんたちの名前を挙げつつ「勘弁してくれへんか」「しんどい」と白旗を上げた。ただ、つらいと言いつつも余裕な態度は崩さない。「僕はもう負けでいい」「コラボする気もなさそうだし」と、負け惜しみとも聞こえる言葉を連ねていた。動画再生回数は公開から3日で75万回を超えている。

 解散報告会の時も、蛍原さんや出川さんたちから、「今はそういう態度を取る時じゃないよ」と言われていたものだ。今回も、宮迫さん側は粗品さんが仕掛けたプロレスだと思っていたため、強気な発言を繰り出していたようである。人気YouTuberのヒカルさんがそばにいたこともあって、また「カッコつけ」が発動してしまったのだろう。

 宮迫さんがテレビに復帰できないのは、こうした言動の積み重ねで周囲からの信用がないからだ。それは確かに宮迫さんの現状を言い当ててはいるが、人を信用していないのは宮迫さんの方だともいえる。だからなんでも自分一人で先走り、周囲から人が離れていく。

 闇営業でYouTuberになり、飲食店経営に手を出し、テレビ復帰を画策する。一発逆転したいとはやる気持ちは分かるが、宮迫さんは自分の能力の証明にこだわりすぎて、他人からの信頼を得ることを二の次にしている人のように見える。今回の宮迫さんの騒動は、そういう人が果たして本当に「優秀」といえるのかという疑問を、多くの人の心に抱かせたことだろう。

 テレビ復帰に必要なのは、「一人でできる優秀さ」を見せつけることではないはず。宮迫さんはそのことに、いつ気付くだろう。「『アメトーーク!』みたいな番組、作ったっけ?」と自信を見せていた宮迫さんだが、では「僕たち、宮迫さん大好き芸人です!」という企画は成立すると思うか、ちょっと聞いてみたいものである。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部