NHKの朝ドラ「虎に翼」の評判がますますアップしている。6月21日の視聴率は18・1%と最高記録を更新(ビデオリサーチ調べ:関東地区・世帯)。このまま行けば2021年後期の「カムカムエヴリバディ」以来となる平均17%超えも期待できそうだ。

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 民放プロデューサーは言う。

「『虎に翼』は意外なことに、大物や大御所と呼べるような役者がほとんど出ていません。あえて言うなら、民放のドラマで主役を張れるのは沢村一樹(56)と松山ケンイチ(39)、岡田将生(34)くらいでしょう。にもかかわらず評判がいいのは、脚本の良さもありますが、有名ではなくてもいい役者を揃えているからでしょう」

 なぜそうした役者たちがキャスティングされたのだろう。

「NHKのギャラは民放に比べ安いのですが、それはどの朝ドラも同じです。とはいえ、大阪放送局が制作の朝ドラには必ず吉本興業の芸人が出ているように、スタッフごとに色が違います。『虎に翼』の場合、チーフ監督の梛川(なぎかわ)善郎さんが舞台好きということが大きいと思います。ヒロイン・虎子(伊藤沙莉=30)の父親役を演じた岡部たかし(52)は、今でこそドラマの出演が増えましたが、もともとは舞台役者です。虎子の兄役の上川周作(31)も、虎子の同級生を経て相続問題を家庭裁判所に相談する梅子役の平岩紙(44)も、劇団・大人計画の役者です。学生時代から何かと虎子に絡む前髪がピンと跳ね上がった小橋役の名村辰(27)は、脚本家・倉本聰が主宰する富良野塾の出身です。第三舞台の筒井真理子(63)や小須田康人(62)も出演していましたし、話題となった土居志央梨(31)をよね役に起用したのも梛川さんです」

 そうだったのか。

キャスティングに関わったもう一人

「そもそもヒロイン役の伊藤も子役を経て小劇場の舞台に出演していましたし、彼女と交際が報じられた蓬莱竜太さんも劇団の座付き作家です。梛川さんは舞台役者をリスペクトしているので、それがキャスティングに反映されていると言われています。おかげで芝居がきちっと固まっている人ばかりなので、見応ええのあるドラマになっていると思います」

 キャスティングにはもう一人、重要な人物がいるという。

「『虎に翼』には映画キャスティングプロデューサーとして有名な、おおずさわこさんが加わっていることも大きい」

 朝ドラに映画の人が?

「最近はNHKも外部のキャスティングプロデューサーを入れて、まだ世に出ていないもののいい役者を抜擢する傾向にあります。おおずさんは『下妻物語』の深田恭子と土屋アンナ、『嫌われ松子の一生』の中谷美紀、『蟲師』の蒼井優、『モテキ』の森山未來など、旬な俳優の意外性のあるキャスティングを数々の映画でしてきました」

 彼女はインタビューでこう答えている。

#俺たちの轟

《おおずさわこ氏は「私はオーディションで、すっぴん参加を必須にして、“化粧をしてきたら、落としますよ”と言うこともあります」という。/「最近の10代は、本当はきれいなのに、自分の顔に自信がなくて、“気が強く見えるメイク”とかをして、メイクで自分を演じてしまっている人が意外と多い。すっぴんにさせると自信がなくなって、素と本性が出ます。なかには、すっぴんでも堂々としている子もいて、そういうほうが印象に残る」》(日経エンタテインメント!電子版:2012年7月2日)

 オーディション会場はすごいことになってそうだ。

「かつて朝ドラは、ヒロインをオーディションで決めるため“女優の登竜門”と言われていました。最近はそれも少なくなり、むしろ脇役に無名の俳優を抜擢するようになりました。『虎に翼』ですっぴんオーディションが行われたかはわかりませんが、役者の素と本性をよく見極めているのでしょう。いずれにせよ、個性的な役者が多いことは間違いありません」

 SNS上で“#俺たちの轟”として話題になった、寅子の同級生で弁護士の轟太一を演じる戸塚純貴(31)もその一人だろう。

「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出身で『仮面ライダーウィザード』(テレビ朝日)出演という輝かしいスタートを切った戸塚ですが、仮面ライダーでは変身キャラでなく脇役でした。福田雄一監督に見出され、『今日から俺は!!』(日本テレビ)や映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』にも出演していますが、それほどの知名度はありませんでした」

 そんな戸塚がいきなり人気となったのはなぜか。

アクション女優が愛人役に

「『虎に翼』に初めて登場した際は、学ランに破れた学帽、髭面に下駄という、宮下あきらの漫画『魁!!男塾』の実写版のようでもあり、ドラマ『ROOKIES』(TBS)で桐谷健太が演じた平塚のような情に熱いキャラも視聴者にハマったのでしょう。出征したためしばらくの間、出演がなく心配されていましたが、無事に戻ると、よねと一緒に弁護士事務所を開くというのもよかった」

 梅子の夫の元愛人で今度は梅子の息子と恋仲になるすみれを演じる武田梨奈(33)はアクション女優だったはずだが。

「空手は黒帯の腕前で、09年公開の映画『ハイキック・ガール!』で主演デビューしました。その後も激しいアクションを演じてきましたが、『虎に翼』では一転、色っぽくもウラがありそうな女性を演じています。キャスティングのおおずさんは、配役で心がけていることとして『役者のイメージを裏切ること』と答えたこともありました。まさにそれを実践したキャスティングかもしれません」

「虎に翼」も折り返し地点だ。撮影も残り2カ月もないという。

「すでに制作サイドは相当気分を良くしているようです。これからさらに視聴率が上がれば、打ち上げは盛大になるでしょうね」

デイリー新潮編集部