神戸市出身の同級生

 お笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザーが「次世代のダウンタウン」と太鼓判を押す次世代芸人が注目を集めている。吉本興業に所属する芸歴8年目のコンビ・フースーヤだ。デビュー間もない頃、ブレークを逃した過去がある彼らは、熱心なお笑いファンからも再び熱い視線が注がれている。今年、最も注目すべき芸人・フースーヤは、どんな芸人人生を歩んできたのか――。カズレーザー、業界関係者の証言と共に、改めて紹介する。

 フースーヤは、兵庫県神戸市出身の田中ショータイムと谷口理からなるコンビで2016年4月に結成。高校時代の同級生であり、神戸学院大学在学中に吉本興業のお笑い養成所・NSC大阪校に38期生として入所し、お笑いの世界に足を踏み入れた。

 もともとは正統派漫才師を目指していたそうだが、“ふざける”という自分たちの持ち味を生かしたスタイルに変更。「オーマイゴッドファーザー降臨!」「ナッシングトゥーマッチ!」など、意味は分からないが何故か癖になるフレーズを「よいしょ!」の掛け声で締めくくる“ギャグ漫才”が若い世代に突き刺さり話題を呼んだ。

 今では芸人も公式YouTubeチャンネルを持つことが当たり前となっているが、フースーヤは2017年5月に公式チャンネルを開設。X、VineなどのSNSでも、彼らのギャグ、ネタ動画が拡散され、女子中高生からの人気も絶大だった。

 お笑いファンからも注目を集め、過去に「めちゃ×2イケてるッ!」「はねるのトびら」などの大ヒットバラエティーを生んだフジテレビの次世代お笑いスター発掘番組「新しい波」シリーズにも、結成1年目から出演。

「新しい波24」(2017年4月放送開始)には、M-1グランプリ2018優勝の霜降り明星、キングオブコント2018優勝のハナコ、女芸人NO1決定戦 THE W 2017や R-1グランプリ2021優勝のゆりやんレトリィバァ、さらにさや香、カミナリ、四千頭身というそうそうたるメンバーが出演している。当時、新世代と呼ばれた彼らのその後の活躍は説明するまでもないだろう。

「新しい波24」終了後は、霜降り明星や四千頭身とともに、毎週月曜日午後11時台のバラエティー番組「AI‐TV」のレギュラーメンバーに選抜され、更なる飛躍が期待された。しかし、同番組はわずか4ヵ月で終了してしまう。デビュー当時からフースーヤを知るテレビ業界関係者はこう語る。

「新しい波」シリーズに出演

「カズレーザーさんは『ネクストダウンタウン』と称賛していましたが、デビュー間もない頃は、『新しい波』シリーズに出演していたこともあって、ネクストナインティナイン、ネクストキングコングと業界内で期待されていました。しかし、『AI‐TV』の終了で初めて壁にぶつかることになり、ブレークを逃しました。全国ネット番組への露出が減り、劇場やローカル番組での活動が中心となったのです」

 若さと勢いのある芸風は当時、「大学生ノリ」「意味不明で笑えない」と否定されることもあった。しかし、彼らはギャグをギャグで返す自分たちのスタイルを曲げることはなかった。大阪の劇場出番や単独ライブで、ギャグとリズミカルなネタをさらに磨き上げ、NHK上方漫才コンテスト、ytv漫才新人賞といった賞レースでも結果を残し始める。

 日本一の漫才師を決めるM-1グランプリにも、アマチュア時代の2015年から毎年欠かさずエントリー。2023年には初めて準決勝進出を果たしている。激戦区と言われる準決勝を現地で見届けた構成作家は感想をこう述べる。

「フースーヤが登場したのはAブロックの6組目。準決勝ならではの緊張感がある中、あそこまで爆笑をかっさらえるのは正直びっくりしました。全31組を見ても笑いの量はトップクラスでしたね。昨年、決勝進出を果たしたのは後半組が多かったのですが、フースーヤも出順が後半だったら決勝進出していたと思います」と振り返った。

 惜しくもM-1の決勝進出は逃したものの、今年5月に「第54回NHK上方漫才コンテスト」で優勝し、悲願の初タイトルを獲得。自分たちのお笑いが間違っていなかったことを証明したのだ。

 以前からフースーヤを推していたというカズレーザー。フースーヤの優勝を受け、ぺこぱ・松陰寺太勇とのYouTubeチャンネル「カズレーザーと松陰寺のチルるーム【公式】」の2024年6月27日更新分動画で、「芸人でフースーヤ推さない奴なんかいないでしょ。めちゃめちゃ面白くないですか」と言及した。

 さらに、カズレーザーは、フースーヤが築き上げたスタイルを称賛。「ずっとオレは言っている、フースーヤの天下になるというのを。時代がやっと追いついた。フースーヤが次のダウンタウン。ネクストダウンタウンをみんな探していたけど、ぜんぜん違うところから来た。間違いない」と熱弁し、「M-1獲ってほしいわー」と語った。

あるのか、M-1王者喰い

 カズレーザーは2023年10月9日に公開された同チャンネルの動画でも、フースーヤについてコメントしており、「M-1の予選は毎年、フースーヤをずっと楽しみにしている。あの人たちがすごいのは、ずっとあそこから逃げなかった。超おもしれえ!」と解説。「あの人たちの中で、ちゃんとあれが面白いという覚悟とルール付けがあるんじゃないっすか。変なことやりますだけだと無理ですもん」と評価していた。

 芸人たちも目を見張るほど勢いのあるフースーヤは、7日に放送されるABCお笑いグランプリ2024の決勝にも進出。ダウンタウンも同コンテストの前身である『ABC漫才・落語新人コンクール』で、漫才の部・最優秀新人賞を獲得している。今年はM-1グランプリ2023王者・令和ロマンの参戦で注目が集まっているが、決勝大会でフースーヤと令和ロマンは同じCブロックとなった。

「初タイトル獲得で自信にみなぎるフースーヤであれば、この勢いのままM-1王者喰いという大仕事をやってのけるのではないでしょうか。Cブロックは実力派コント師のかが屋もいますが、ブロック突破から優勝まで突き進んでほしいです」(前出の構成作家)

 フースーヤが7年前に果たせなかった本当のブレーク。自分たちが信じた笑いを貫いた彼らは再び、そのチャンスを射程圏内に捉えている。

デイリー新潮編集部