4年ぶり開催「a-nation」

 大手レコード会社・エイベックスが開催してきた夏の大型音楽フェスティバル「a-nation(エイ・ネーション)」が4年ぶりに復活する。コロナ禍以降、開催が中止されてきたが、同社が6月末に東京・調布市の味の素スタジアムで開催することを公式HPで発表した。華やかな祭典が戻ってくることは喜ばしいが、業界関係者は“悪夢の光景”の再現を心配しているという。

 出演予定のアーティストは現状計9組で、浜崎あゆみ、Da-iCE、GENERATIONS、倖田來未、MAZZEL(マーゼル)のほか、Red Velvet、東方神起、NCT WISHというK-POP系が3組。TWICEを擁する韓国の大手芸能事務所JYPに所属するNiziUの初参加も決まった。華やかなラインナップではあるが、2018年の「a-nation」では東京公演だけで約30組(オープニングアクト、シューティングアクト含む)が出演していたのに比べると一抹の寂しさを感じさせる。

 過去に「a-nation」を取材した音楽ライターがこう明かす。

「浜崎あゆみは最多19回目の出演となりますが、大トリを務めることができるのかと心配する声が上がっています。というのも、2000年代後半から東方神起の出番が終わると大量の観客が帰宅してしまい、“大トリ”を務める浜崎のステージでは、観客席がガラガラという悪夢のような光景が広がったことがあったからです。エイベックス関係者は『何とかしないといけませんが、東方神起の動員力は外せない。かといって、エイベックスの看板である浜崎を下ろすこともできません』と困り果てていました」

 かつて浜崎は2001年から3年連続で日本レコード大賞を受賞するなど破竹の快進撃を続けていた。一方、2005年春に日本デビューした東方神起は同年夏の「a-nation」神戸公演に初出演。オープニングアクトとして「Stay With Me Tonight」「Somebody to Love」の2曲を披露しただけで会場の盛り上がりもそれほどではなかった。ところが、2008年に東方神起が日本で大ブレイクしてから「a-nation」の風向きが急激に変わったという。

「浜崎は『a-nation』の大トリを通算15回務めましたが、次第にCD売り上げやコンサートの観客動員数が落ち始めたためか、青森、福岡、大阪の3会場で開催された2019年の『a-nation』(三重会場は台風接近で中止)ではついに浜崎の名前が消えてしまいました。代わって、最終日の大阪公演の大トリを務めたのが東方神起です。浜崎はこの年、5月から8月まで全国19会場を回る全国ツアーを行っていたので、そちらに集中したのかもしれませんが、“主役交代”を完全に印象付けてしまいました」(前出の音楽ライター)

注目される大物の“隠し玉”

 浜崎が出演する前に大量の観客が帰宅するのを防ぐため、この前年となる2018年8月の2日連続東京公演(味の素スタジアム)では、25日のトリは東方神起、26日のトリは浜崎、というように分ける作戦に出たほど。ただ、今年開催の「a-nation」は9月1日のみ。浜崎と東方神起が同じ日にステージに立つことになる。K-POP系ファンと浜崎のファン層の相性の悪さは覆い隠せない。

 果たして順番はどうなるのか。芸能デスクがこう予想する。

「東方神起は昨年、3年ぶりとなる日本での全国ツアーを行い、30万人を動員するパワーを見せつけました。9月1日に味の素スタジアムを埋める多くの観客は、東方神起ファンの中高年女性になりそうです。ただ、エイベックスの公式HPでは『AND MORE』と書かれているので大物の“隠し玉”が控えている可能性が大きいです。注目はエイベックスのもうひとつの看板である小室哲哉。2010年発売の浜崎の12枚目のアルバム『Love songs』で、小室は全16曲中10曲を作曲し、20年のシングル『Dreamed a Dream』でも作曲を務めています。もし、2人のコラボステージが実現すれば、ある程度観客を引き止められそうです」

 小室は今年、究極のオーケストラコンサートと位置付ける全国5都市6公演ツアーを開催。8月12日に札幌文化芸術劇場 hitaru、次いで9月3日に東京文化会館大ホールで開演予定だ。合間を縫って9月1日に味の素スタジアムに駆けつけ、浜崎とのコラボステージを披露すれば大きな話題になるだろう。

「ただ、それでも浜崎の出番の前に、動員力の強い東方神起を持ってくるのは、かなりの冒険となりそうです。気になるのは、音楽事務所・BMSGに所属する8人組ボーイズグループ・MAZZELです。同事務所の代表を務めるSKY-HI(日高光啓、ひだか・みつひろ)は、パフォーマンスグループAAA(トリプルエー)のメンバーとして2005年から毎年、a-nationに出演してきました。SKY-HIや、同事務所所属で今年春に東阪ドームツアーを成功させた7人組ボーイズグループBE:FIRST(ビーファースト)が、浜崎と絡めば、かなりの見どころとなりそうです」(前出の芸能デスク)

 90年代後半から2000年代にかけて最強の歌姫としてシンデレラストーリーを歩んだ浜崎。再び輝きを放てるのか。

デイリー新潮編集部