凡庸なグルメ番組!?

 日曜の午後8時台のテレビ番組と言えば、視聴率を巡る“三つ巴”の激戦で知られる。念のため3番組を、ビデオリサーチが発表した視聴率(関東地方、平均、世帯)の高い順にご紹介しよう。

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 10月25日、3番組のうち視聴率トップに輝いたのは「ポツンと一軒家」(朝日放送テレビ制作/テレビ朝日系列・19:58)で、15・5%だった。

 第2位は「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系列・19:58)の13・9%。第3位は「麒麟がくる」(NHK総合・20:00)の13・2%だった。

 視聴者なら「いつも通りの激しいつばぜり合いだな」と思うはずだが、プロには全く違って見えるという。民放キー局で番組制作に携わるスタッフが解説する。

「2トップである『一軒家』と『イッテQ!』の勢いが失われています。例えば9月13日の視聴率を見ると、『一軒家』は17・8%、『イッテQ!』は15・1%でした。数パーセント、数字を減らしているのが分かります」

 その原因は、意外な伏兵が現れたためだ。2番組の視聴率を食っている可能性があるという。

「日曜の午後8時からTBS系列で放送されている『バナナマンのせっかくグルメ!!』が好調で、コンスタントに2桁視聴率を記録しているのです。

 10月25日の視聴率は11・2%で、番組史上2位でした。ちなみに1位は9月27日の放送分で12・0%でした」(同)。

苦労を重ねた番組

 視聴率は好調だとはいえ、まだまだ「見たことがない」という向きも少なくないだろう。ところが「せっかくグルメ」の放送開始は何と2014年に遡る。意外に“老舗”番組なのだ。

「とはいえ、人間で言うなら苦労人です。14年に特番としてスタートし、15年には火曜午前0時41分の深夜番組としてレギュラー化されました。

 その後、何度も特番が放送され、また16年から19年までは日曜午後6時半という夕方の時間帯に放送されていました」(同)

 流浪に流浪を重ね、晴れて日曜ゴールデンの座を獲得したわけだが、ここでも不運に襲われる。

 今年4月から「坂上&指原のつぶれない店」と共に隔週で放送されることが決まったが、世間の関心は当時、コロナ一色だった。番宣で視聴者に認知してもらうことが極めて厳しい状況だったのだ。

 それでは、どんな番組なのか、具体的に内容をご紹介しよう。10月25日に放送されたのは2時間半のスペシャル版だった。

日村は車も運転

 バナナマンの2人はスタジオでVTRを見るが、設楽統(47)はMCの役割が強く、ロケは担当しない。

 体を張ってロケを敢行するのは、相方の日村勇紀(48)だ。この日は「新米の季節」をテーマに掲げ、新潟県に向かった。

 深夜や夕方に放送されていた頃は、地元民との触れあいが見どころの1つだった。しかし現在は新型コロナの感染防止を最優先とし、直接のやり取りは自粛している。

 その代わり、人通りの多いバスセンターなどに“日村ロボ”を設置。スピーカーを使って通行人に声を掛け、「せっかく新潟に来たのだから、××を食べていきなさい」というお勧めの一品を教えてもらう。

 新潟県内では、日村は自らハンドルを握って運転し、通行人に教えられた店へ向かう。この日、番組で平らげたのは、若鳥の半身揚げ、へぎそばとタレかつ丼、回転寿司、激辛まぜそば、焼きそばにミートソースを載せた新潟のご当地グルメ「イタリアン」──という品々だった。

「何の変哲もない」

 更に「この恋あたためますか」(TBS系列・火・22:00)の番宣で、主役の森七菜(19)と中村倫也(33)が高崎市で行ったロケも並行して放送された。

 こちらもロボットを使って通行人に取材。店を推薦されると、森も中村も携帯を使って取材を申し込む。共に美男美女だが、カメラの前で肉汁ハンバーガーにかぶりついたり、ブランド豚を使った豚丼を平らげたりと、なかなかの食いっぷりを披露した。

「失礼ながら、何か特徴のある番組ではありません(笑)。『ぴったんこカン・カン』(TBS系列・金・20:00)と『火曜サプライズ』(日本テレビ系列・火・19:00)を足して2で割ったような旅グルメ番組です」(同)

 だが視聴者は支持している。その理由の1つに、ゲストのキャスティングがあるという。前週の10月17日もTBSの日曜劇場「危険なビーナス」(21:00)の番宣で、妻夫木聡(39)と吉高由里子(32)という豪華な顔ぶれだった。

「ただスペシャル版ではない週も好調で、ここに番組の底力が出ていると思います。最高平均視聴率を記録した9月27日の放送は番宣がなく、ギャル曽根さん(34)、磯山さやかさん(37)、野呂佳代さん(36)という食いっぷりの良い、視聴者の好感度が高い女性3人をキャスティングしました。これが成功の要因でしょう」(同)

広告効果にも期待

 また、世帯の視聴率ではなく、「コア視聴率」が好調なのも、TBSにとっては嬉しいニュースだという。

 コア視聴率とは主に高齢者を除いて集計した視聴率だ。要するにCMの訴求効果が期待できる。

 例えば日本テレビは《男女13〜49歳》を《コアターゲット》とし、TBSも《13〜59歳男女》を《ファミリーコア》と呼んでいる。

「高齢者が好む『一軒家』と『麒麟』は、コア視聴率を調査すると、それぞれ2・2%、2・9%という数字になってしまいます。

 一方、『イッテQ!』は11・1%とさすがの貫禄ですが、『せっかくグルメ』も5・8%と大善戦しているのです」(同)

 結果、最近は「バナナマンのせっかくグルメ!!」ばかりが放送されて、「坂上&指原のつぶれない店」の出番がない状況となっている。

正攻法で成功

 その勝因はこれまで見てきた通りだが、やはり視聴者が支持する最大の理由は、番組に流れる「落ち着いた雰囲気」だという。

「日曜の夜は、正攻法の番組作りが有効だということを、改めて教えてくれました。家族がそろってテレビを見る時間ですから、奇をてらう必要はありません。

 バナナマンの2人を筆頭に、ゲストも含めて好感度が高い面々が顔を並べます。番宣の回は特に豪華な印象も与えることができます。

『せっかくグルメ』はお茶の間の安心感を武器に、3番組に肉薄しています。今後は4番組の視聴率戦争となって、大混戦に拍車がかかるでしょう」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年11月1日 掲載