ドラマもやっぱり見た目が9割、と言っては元も子もないが、北川景子さん・永山瑛太さんの「リコカツ」が好調だ。もちろんテーマも面白いが、絵に描いたような美男美女が画面に出てきた時の魅力は大きい。自身と両親の離婚劇を描きながらも、シリアスではなくテイストはラブコメディ。北川景子のコメディエンヌぶりは、「家売るオンナ」などで実証済みだが、なんといっても瑛太さんの奮闘が光る。「最高の離婚」でもラブコメ巧者であったのは知っていたものの、今回はカタブツの自衛隊員役。髪型やしゃべり方のちょっとした違和感の計算が上手で、笑いを誘う。決める時は決める男っぷりとのギャップも、視聴者を惹きつける要素のひとつに違いない。

 一方、同じラブコメでも手厳しい評価を受けているのが「恋ぷに」こと「恋はDeepに」だ。こちらも美男美女にもかかわらず、「リコカツ」と評価は正反対である。身分違いどころか“人間じゃない”相手とのファンタジーラブという設定が浮世離れしすぎたか、石原さとみさんと綾野剛さんのムダ使いとまで言われて散々だ。

 といってもコメディにも積極的な姿勢を示していたのは綾野さん自身。親交のある菅田将暉さんのラジオ番組でも口にしていた。クールな容貌を活かしたイケメン役、悪役・クズ役に怪物役までひと通り演じてきたが、ユーモラスな役の印象は乏しい。かといって「恋ぷに」での役もお調子者というわけではない。不思議ちゃんヒロインが起こす騒動の受け手として、あれこれ振り回される役どころである。

 しかし昨年の「MIU404」での好演が話題だっただけに、少しガッカリしてしまったドラマファンも少なくないようだ。実は「リコカツ」の瑛太さんとは1歳違いで、「最高の離婚」でも共演していた。近しいキャリアの同じアラフォー俳優というくくりで見れば、明暗が分かれてしまったといえるだろう。

ただのイケメンはNG…アラフォー俳優に求められるキャラは「ひとりゴレンジャー」?

 男女ともに若い俳優が主演を占める日本のドラマ・映画界では、顔だけで食べていける期間は相当短い。特に男性は顕著である。歳をとってもイケメン役を平気でできるのは、木村拓哉さんや竹野内豊さん、西島秀俊さん、福山雅治さんくらいだろうか。といっても彼らも単なる二枚目というわけではなく、一風変わった性格や女癖の悪さなど、ちょっとした残念なニュアンスを加えた役が増えているように感じる。

 一方で他のイケメン役出身の俳優は、コメディで当たり役を持つ人ほど、息の長い活躍を続けているのではないだろうか。江口洋介さんや岸谷五朗さん、堤真一さん、阿部寛さん。沢村一樹さんはNHKのコント番組の「セクスィー部長」でブレイクし、及川光博さんはミュージシャン出身ながらケレン味あるキャラで注目を集めて役者でも活躍。渡部篤郎さんや井浦新さんも、最近ではコミカルな役も多い。みな、アラフォー前後で「ただのイケメン」俳優から脱皮するのに成功している。

 綾野さんの「コメディとかやってみたい」発言は、そうした状況も見すえてのことだったのではないか。若いイケメンは毎月のごとく現れる。餅は餅屋と言わんばかりに、コメディリリーフとしてお笑い芸人を起用する例も増えている。「ただのイケメンはNG」とばかりに、どんどん居場所を失っていくアラフォー俳優たち。それは焦ることだろう。

 イケメン俳優の寿命を決めるのは、ゴレンジャーのようなキャラだなと思う。まっすぐで男気のあるレッドのような主役。クールで理知的なブルーのようなキレ者役。ここにはサイコパスや頭脳派の悪役キャラも含まれるだろう。そしてグリーンのように、陰で支えるサポーター役。ヒロインに振られる優しい幼ななじみといった当て馬ポジションや、物わかりの良い上司役とか。それからお調子者だが人はいいイエロー、すなわちラブコメ、三枚目役。最後に、紅一点のピンク。弱い立場にある人や人外など、イケメンヒーローとは対極にある役。

 一番難しいのはイエロー役なのだと思う。前のめりすぎてもしらけるし、淡々としていても「棒演技」と酷評される。チヤホヤされることに慣れていると、三枚目になる感覚は身につきづらいこともあるだろう。個人的にはこの「ひとりゴレンジャー」を成立させたアラフォー俳優は、鈴木亮平さんや高橋一生さんが思い浮かぶ。主役でも脇役でも敵役でも、すんなりハマる。もちろんコメディも強いし、名前があるだけで安心感がある。

 今回のドラマではほろ苦い思いをしそうな綾野さん。でも彼も、演技や役作りのストイックさには定評がある。三枚目に全振りした姿だって、近いうちに見ることは間違いないだろう。一人ゴレンジャーとしてのゴールは、きっともうすぐそこだ。

冨士海ネコ

2021年5月13日 掲載