俳優に学歴は全く関係ない。実力がモノを言う世界である。書くまでもない。だが最近は「国立大出身の俳優」といったように学歴で分類が行われる。さて、いかに俳優に学歴が関係ないか――。

山田孝之は中卒の名優

 2010年から2016年までの「闇金ウシジマくんシリーズ(TBS系) や2011年から2016年まで「勇者ヨシヒコシリーズ」(テレビ東京)などに主演した山田孝之(38)は中卒。中学在学の時点で芸能界入りが決まっていたため、進学しなかった。

 それでも教師が受験を勧めたことから、試しに1つの高校だけ受けた。だが、山田の進学意欲が低かったため、試験中にウトウトしてしまう。これにより、不合格となった。

 山田が20歳だった2004年に2月にインタビューしたが、その頭の良さに舌を巻いた。こちらが何を聞くのか先読みした。

 当たり前のことだが、学歴と頭の良さは比例しない。その点でも役者を出身校で区分することは全く無意味なのだ。

 このインタビューの時、山田と会うのは3回目だった。浮わついたところを感じたことが1度もなかった。だが本人はこう言った。

「いや、僕だって、普段より陽気な時だってありますし、元気がある時も気分が沈んでいる時もありますよ。人間ですから」(山田)

 若い時分から言葉に重みのある男だった。

真木よう子は中卒で「無名塾」入り

 2013年の主演映画「さよなら渓谷」がモスクワ国際映画祭審査員特別賞など国内外の賞に輝いた真木よう子(39)は中卒。

 中学在学中の時点で仲代達矢(89)が主宰する俳優養成所「無名塾」を目指し、卒業後に入塾したからだ。

 仲代からレベルの高いレッスンが受けられる「無名塾」は俳優になるための登竜門。費用は全額、仲代が負担する。これまで役所広司(66)、若村麻由美(55)、滝藤賢一(45)らの名優が巣立った。ちなみに3人とも高卒だ。

 4月上旬に終了したNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でトミー北沢役を好演した早乙女太一(30)は中卒。両親が劇団員で自分も4歳の時から舞台に立ち始めたからである。

 人にはそれぞれ事情がある。俳優だってそう。誰もが大学に行きたいと思っているわけではないし、行ける環境にあるわけではない。

「恋なんて、本気でやってどうするの?」(フジテレビ系)に出演している岡山天音(28)は中卒。

 岡山は14歳だった2009年、NHK「中学生日記」(1972年〜2012年)のオーディションに合格し、出演したからである。

 多様性の時代。大学へ行こうが、義務教育以降は芸能活動に専念しようが、すべて本人の自由なのである。

濱田岳、唐沢寿明、小栗旬、藤原竜也は高校中退

「マイファミリー」(TBS)で熱演を見せた濱田岳(33)は高校中退。濱田は9歳だった1998年に子役デビューすると、たちまち人気者になった。

 高校に進学しラグビー部に入ったが、2004年の「3年B組金八先生第7シリーズ」では生徒側の中心人物を演じ、人気沸騰。俳優業と学校の両立は難しく、本人の意志で中退した。

 唐沢寿明(59)は高校中退。自分の夢を叶えるためだった。故ブルース・リーに憧れていたため、アクション俳優を志し、16歳で東映アクションクラブに入所。両親は猛反対したが、唐沢の希望で高校は辞めた。その後の唐沢の成功を考えると、この判断は間違っていなかったのではないか。

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に主演中の小栗旬(39)は高校中退。やはり仕事が忙しかったためだ。

 小栗は所属する芸能プロダクションの次期社長候補でもある。エンタメビジネスの経営にも学歴は関係ないのである。

 故・蜷川幸雄氏の秘蔵っ子の1人だった藤原竜也(40)は高校中退。やはり仕事が多忙だったためだ。その後の2007年、約4カ月間に渡って英国ロンドンに留学しているが、学歴にはならない。だが、そんなことを本人は気にも留めていないだろう。

篠原涼子、上戸彩は高校中退、江口のりこは中卒

 篠原涼子(48)は高校中退。1990年、アイドルグループ「東京パフォーマンスドール(TPD)」の一員としてデビューしたから。

 上戸彩(36)も高校中退。やはり仕事が忙しかったため。売れっ子すぎた。

 江口のりこ(42)が中卒なのは知られている通り。本人によると、経済的問題からだという。だが、いまや押しも押されもせぬ名優だ。学歴と演技がまるで関係ないのが分かる。

 ベテランの名優。石倉三郎(75)も中卒。やはり家の経済的事情が進学を許さなかった。

 前出・仲代は定時制高卒。やはり家の経済的事情である。昼間は働き、夜は高校に通った。今や日本を代表する俳優。後進の育成でも俳優界に大きく貢献している。

生前の成田三樹夫さんは東大中退を黙っていた

 1990年に55歳の若さで他界した成田三樹夫さんが東大に在籍していたことがたびたび報じられる。確かに成田さんは東京大学教養学部理科1類に入学し、1年間籍を置いていた。

 その後中退し、郷里の山形大に入り直し、再び中退した。以来、成田さんは東大に籍を置いていたことを亡くなるまでずっと伏せていた。成田さんと東大の関わりが分かったのは本人の没後である。

 短期間での中退だったし、俳優と学歴は全く関係ないと思っていたからに違いない。

 成田さんと同年代でたびたび共演していた故・菅原文太さんのインタビューを何度かさせてもらったが、やはり母校・早大の話なんて一度も口にしたことがない。

 一方、文太さんは8つ年下の故・川谷拓三さんを公私ともに可愛がっていた。川谷さんは中卒。俳優同士の付き合いにも学歴は全く関係がない。

 総合コンサルティング会社・アクセンチュアは採用において学歴不問。無論、中卒者の採用もある。毎日新聞社もまた学歴不問。大卒ではない記者もいる。

 そんな時代でありながら、俳優の出身校が問われるのだから不思議な話である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部