先月放送の「プロフェッショナル仕事の流儀」(NHK)にお笑いトリオ・東京03が出演した。「いま最もチケットが取れないコント師」と言われる彼らが、初めてコント制作や公演の舞台裏を明かしていた。

 番組の中では彼らが「普通の中年男性」であることが強調されていた。見た目に華があるわけでもないし、人目を引くような特別な趣味や特技を持っているわけでもない。平均的な外見の3人が、ただ誠実にコントに向き合い、高い評価を得ている。

 東京03のコントは、一見すると地味な感じがする。登場人物はそこら辺にいそうな普通のサラリーマンやOLばかり。設定も会社や居酒屋などの日常的なものが多い。

 彼らのコントでは「現実で起こりそうなことしか起こらない」という特徴がある。はじめに小さな事件があり、それを発端としてすれ違いが起こったり、いさかいが生まれたりする。ありふれたシチュエーションで人間心理の機微を素材にして笑いを生み出していく。

トリオそれぞれの役割

 トリオの笑いの起点となっているのが角田晃広である。彼は芸人の中でも屈指の味わい深いキャラクターを持っていて、ギャグでも何でもない普通のことを大声で叫ぶだけでも、なぜか面白くなってしまうという特異体質の持ち主だ。

 細かい人間心理を捉えた彼らのコントがこの上なく面白いものになっているのは、角田が大立ち回りをしてそこに潜む小さな笑いを増幅させてくれるからだ。

 豊本明長は何を考えているかわからない不思議な存在感を持っていて、角田とは違う切り口で笑いを生むことができる。

 また、飯塚悟志は角田と共にネタ作りを担当していて、トリオの司令塔的な存在だ。演技力があるのはもちろん、シンプルな言葉で力強く放つツッコミの技術は超一流だ。10月には飯塚がMCを務める「熱狂!1/365のマニアさん」(TBS)という新番組も始まった。

 飯塚と豊本はもともとアルファルファというコンビを組んでいたが、活動が上手くいかずに苦戦していた。そこに角田が加わったことで爆発力のある笑いを起こせるようになり、一気に頭角を現した。角田という人間が漂わせる何とも言えない「哀愁」のようなものが、人間の情けない部分や格好悪い部分を効果的に見せていた。

若手芸人たちの夢を背負った存在

 彼らのコントの面白さには定評があり、2009年には「キングオブコント」で優勝を果たした。お笑いコンテストをテレビで売れっ子になるための登竜門のように考えている若手芸人も多いが、東京03は優勝後もライブに軸足を置いて着実に活動を続けてきた。その結果、単独ライブの規模は年々大きくなっていき、現在では全国を回る大規模なホールツアーを毎年開催している。

 最近では、ネタ番組でコントを演じるのに加えて、CMに出演したり、役者としてドラマに呼ばれたりする機会も増えてきている。コントの職人というイメージが定着したことで、ほかの芸人とは違う形で仕事の幅を広げている。

 コントを専門にしている若手芸人にとって、東京03は絶対的な憧れの存在である。毎年、単独ライブツアーで全国を回っていて「コントで食っていく」という夢を実現している数少ない芸人だからだ。芸人が稼ぐにはテレビにたくさん出てタレント活動をするしかないと思われていた中で、彼らは新しい道を示した。東京03は、若手芸人たちの夢を背負った当代随一のコント芸人なのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部