デイリー新潮は1月11日、「野村萬斎が演じるも開始45分で死亡! 今川義元がじつは『勇猛な武将』だった決定的証拠」との記事を配信した。新しい大河ドラマが始まり多くの視聴者が注目する中、主演の松本潤(39)を野村萬斎(56)が「食ってしまった」と話題になっている。

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 1月8日、NHKの大河ドラマ「どうする家康」の第1話が放送され、松本が主役の徳川家康(1543〜1616)を、萬斎が今川義元(1519〜1560)を演じた。担当記者が言う。

「SNSで『超高速大河』という言葉が拡散したほど、テンポの速い展開でした。中盤で桶狭間の戦いが描かれると、萬斎さんは出陣の舞を披露。Twitterでは『さすが狂言師』と絶賛されました。さらに、放送開始から45分で討ち死にという衝撃の展開に、多くのの視聴者が驚きました。結果、松本さんより萬斎さんのほうが強い印象を残したのです」

 Twitterには、《野村萬斎の無駄遣いにビックリした》、《野村萬斎の今川義元もっと見たかった》といった投稿が目立つ。

 視聴者の度肝を抜き、圧倒的な存在感を示した。萬斎には理想的な結果だったかもしれないが、これには事情もあったようだ。NHKの関係者が言う。

「3月6日から東京の世田谷パブリックシアターで『ハムレット』が上演されるのです。萬斎さんは演出を担当し、さらにハムレットの父の亡霊と、その父を暗殺した叔父のクローディアスの2役を演じます。これだけでも大変ですが、主演が息子の野村裕基さん(23)なのです」(同・関係者)

公文のCM

 1990年、萬斎は24歳の時、東京グローブ座で上演された「ハムレット」で主演を務めた。2003年には世田谷パブリックシアターとロンドンの劇場でも演じ、高い評価を受けた。

「萬斎さんが『ハムレット』に強い思い入れがあるのは言うまでもありません。しかも今回は、息子の裕基さんが主演です。いつも以上に全力投球で臨むのは当然でしょう。舞台の稽古に充分な時間を確保したいという意向はNHKにも伝えていたようで、それもあって第1話はああいう脚本と演出になったのです」(同・関係者)

 歌舞伎役者と同じように、能楽師も世襲が多い。萬斎の父は二世・野村万作(91)であり、祖父は六世・野村万蔵(1898〜1978)……という具合だ。

 裕基の場合、姉がTBSの野村彩也子アナウンサー(25)ということも知られている。3人で公文教育研究会(KUMON)のCMに出演していたのをご記憶の方もいるだろう。

 2003年9月、朝日新聞は「野村裕基君 能楽堂で初舞台、親子3代が共演」との記事を夕刊の「ぴーぷる」欄に掲載した。

《狂言師野村萬斎さんの長男、野村裕基君(3)が27日、国立能楽堂で初舞台を踏む。「靫(うつぼ)猿」の子猿役だ。萬斎さんや祖父の万作さんも3歳で同じ舞台を踏んだ。今回は大名役に万作さん、猿引き役に萬斎さんが出演、親子3代の共演となる》

親子二代のハムレット

 10歳だった2020年1月には福岡市の能楽堂で舞台に立ったが、朝日新聞の西部版に演技を絶賛する劇評が掲載されたこともある(註)。

《初舞台からわずか7年で、これほどに成長するのかと目を見張るものがある。まず口跡が佳い。少年の複雑な心情を伝えるには殊にせりふが重要だが、見事に演じきった。また、表情が佳い。眼力とでも言えようか、役者にとってかけがえのない資質を感じさせる》

 父の萬斎は小中高と筑波大学附属で学び、東京芸術大学に進学した。長男の裕基は高校時代、イギリスへの留学を経て、慶応大に進んでいる。

「もともと萬斎さんは、息子の裕基さんに厳しく接してきました。そして今回は主役のハムレットを演じるのですから、より厳しい稽古になるだろうと言われています。果たしてどれほどの演技を披露してくれるのか、まさに見物ですね」(同・NHK関係者)

 世田谷パブリックシアターの公式サイトに、父子はコメントを寄せている。

 父親のほうは、《師弟関係にもあり常に共演者(ライバル)である息子・野村裕基と組むことに、演出の大きなキモがある》と並々ならぬ意欲が伝わってくる。加えて――

家康vs.ハムレット

《この戯曲では血縁が複雑に絡み、しかし家庭劇には収まらぬ国家存亡の危機が横たわる。私達親子にとっては日本の伝統的文化存亡の危機が重なって見える》

 と、やや肩肘張った文面とも言えなくないが、一方の息子はシンプルだ。

《師匠でもある父の、ハムレット像を上手く自分に落とし込んで演じることを目標にしたいと思います。普段の古典芸能とは少し違う自分にも、是非ご期待頂きたいと思います》

 今回の「ハムレット」には、男闘呼組の岡本健一(53)の息子でHey! Say! JUMPの元メンバー・岡本圭人(29)や、日本舞踊家で女優だった藤間紫(1923〜2009)の孫で紫派藤間流の家元・藤間爽子(28)の出演も注目を集めている。

「親子共演にフレッシュな配役と話題になるネタには事欠きません。芸能ニュースでも取り上げられる可能性はあると思います。『どうする家康』の第1話で、萬斎さんは松本潤さんを食ってしまいました。同じように『ハムレット』が『家康』を食ってしまわないか、テレビ業界でもじわじわと関心が高まっています」(同・関係者)

註:(批評!舞台)ふくおか「万作の会」 口跡と眼力、光った子役(朝日新聞西部版夕刊:2010年1月15日=築城則子氏の署名原稿)

デイリー新潮編集部