1月期の連続ドラマもスタートから1カ月が過ぎたが、前評判を裏切り早くも総崩れの様相だ。北川景子が主演の月9「女神の教室〜リーガル青春白書〜」(フジテレビ・月曜21時)もしかり、広瀬すずが主演の“逃げ恥”枠「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS・火曜22時)もしかり……。果たして原因はどこに?

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 テレビの総視聴率が落ちる中、民放の連ドラは「世帯10%、個人5%」なら合格点だという。1月期の連ドラでそれをクリアしたのは「相棒season21」(テレビ朝日・水曜21時)のみ。2月1日の放送では、世帯12・7%、個人7・3%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。民放プロデューサーは言う。

「かつての20%超えこそなくなりましたが、相変わらず強い。もっとも『相棒』は固定視聴者がついている上に昨年10月からの放送です。1月期の連ドラで合格と言えるのは、日曜劇場『Get Ready!』(TBS・日曜21時)くらい。まさに総崩れ状態です」

 妻夫木聡が主演の医療ドラマ「Get Ready!」は、2月5日放送の第5話が世帯9・6%、個人6・0%。初回から第3話までの世帯視聴率は10%を超えている。

「それでも、日曜劇場で昨年放送された、阿部寛が主演の『DCU』(世帯平均14・4%)、二宮和也が主演の『マイファミリー』(同14・0%)と比べると、かなり落ちています」

 草なぎ剛がジャニーズ事務所を退所して以来初となる民放連ドラ主演作「罠の戦争」(フジ/カンテレ制作・月曜22時)は、世帯8〜9%とまずまずの数字だ。

カブった悪影響

「ジャニーズ時代に放送された『銭の戦争』(2015年)、『嘘の戦争』(2017年)に続く“戦争シリーズ”の第3弾です。前期に評判を呼んだ長澤まさみが主演の『エルピス―希望、あるいは災い―』よりも1〜2%数字を上げています。フジやカンテレとしては満足のいく結果を出していると思います」

「星降る夜に」(テレ朝・火曜21時)は、主演の吉高由里子が17年ぶりにテレ朝のドラマに出演することが話題となった。

「脚本は大石静で、同じく吉高が主演の来年の大河『光る君へ』(NHK)も彼女が書くので、その前哨戦といったところでしょうか。評判は悪くありませんが、吉高の相手役・北村匠海が聴覚障害者と、前クールで話題となった『silent』(フジ)とカブった感がアリアリ。また同枠は、前クールが『科捜研の女2022』でしたから、純愛ドラマを放送するには視聴者層が違いすぎます。他局ですが、TBSの金曜22時枠ならもっと数字が取れたかもしれません」

 TBSの金曜22時は、井上真央が主演の「100万回言えばよかった」だが、こちらもカブりが気になるとか。

「“幽霊もの”カブりです。井上の相手役・佐藤健は、幽霊となってこの世に戻ってきたという設定です。同様に、高橋一生が主演の『6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレ朝・土曜23時30分)も、橋爪功が演じる主人公の父親が幽霊。そしてKing & Princeの岸優太が主演の『すきすきワンワン!』(日テレ・火曜0時59分)では、主人公の前に現れる美少年の浮所飛貴が死んでしまった飼い犬の生まれ変わり(?)という設定です」

 さらに“仮面”カブりもあるという。

脚本家による私物化も影響

「『大病院占拠』(日テレ・土曜22時)は、鬼の面を被った謎の武装集団に占拠された大病院で、櫻井翔が演じる休職中の刑事が人質救出のため立ち向かうというストーリーです。一方、前出の日曜劇場『Get Ready!』では、妻夫木ら闇医師チームが患者の前では素顔を出さないよう仮面をつける……」

 こうしたカブりは、放送曜日が後のドラマに影響を与えることが多いという。

「『6秒間の軌跡』や『Get Ready!』が思ったほど数字が伸びていないのも、その影響かもしれません。同じようなタイプのドラマが同じクールに放送されると既視感が出てきてしまうため、後の曜日にも影響しがちです」

 既視感はないものの数字が取れないのがTBSの「夕暮れに、手をつなぐ」だ。デイリー新潮は「火10『夕暮れに、手をつなぐ』 神様・北川悦吏子×演技派・広瀬すずで苦戦のなぜ」(1月31日配信)で、低視聴率(第2話が世帯6・6%)の原因の一つとして、広瀬が演じるヒロイン・浅葱空豆(あさぎ・そらまめ)の不自然な九州弁のちゃんぽんを指摘している。

「第3話では5・9%とさらに下げました。やはり、空豆の言葉がわからないという声は根強いようです。また、脚本の北川悦吏子の娘がカメラマンとして活動していた当時の名前が“あさぎ空豆”であることが判明。ドラマの私物化を批判され、さらに評判を落としています」

 まだある。「夕暮れに、手をつなぐ」にとって頭の痛い存在がNHKだという。

「ワタサバ」は迷惑

「火曜22時からは、豪華絢爛の男女逆転時代劇『大奥』が放送され、大きな話題となっています。それが終わると、22時45分から『ワタシってサバサバしてるから』が始まります」

「ワタサバ」は月曜から木曜に放送される15分ドラマだ。

「同名の漫画が原作で、お笑いタレントの丸山礼が主演。同枠で最高の視聴率だった『正直不動産』を初回から抜き好調です。『夕暮れに、手をつなぐ』にとっては、『大奥』と『ワタサバ』に連続で立ち塞がれた状態です。もちろん他の局にとっても、たった15分とはいえ金曜を除いた平日に放送しているので、10時台のドラマの終わり間際に割り込まれてくる。ブンブン飛び交う蠅のようで、正直言って迷惑しています」

 もうひとつ、前評判が高かったわりにサッパリなのが、北川景子が主演の月9「女神の教室」だ。1月30日の第4話は世帯6・5%だった。

「月9枠としては史上最低に迫る低迷ぶりで、中村梅雀が主演のテレビ東京の連ドラ『機捜235×強行犯係 樋口顕』(金曜20時)よりも数字が取れていないこともある。法律家を目指す法科大学院(ロー・スクール)を舞台にしたドラマですが、会話の内容や授業のレベルが低くすぎてリアリティに欠けます。あれでは司法試験など受かりっこないという声が聞こえてくるほどです。脚本は『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(フジ)の大北はるかですが、医療ものは得意でも法律ものは研究不足かもしれません。この2大看板ドラマのガッカリ感が、「silent」ロス族を中心に、今季ドラマへの“観たい力”を失わせているのではないでしょうか」

 北川はNHK大河「どうする家康」で織田信長の妹・お市の方を演じて好評だが……。

1月期ドラマのベスト3

「民放で主演しながら、それもどうかと思いますよ。『女神の教室』には山田裕貴も出演していますが、彼も『どうする家康』で徳川四天王の一人、本多忠勝を熱演しています。同じく家康の側近・本多正信を演じている松山ケンイチは、『100万回言えばよかった』に出演中です。NHKは若者層をターゲットにした民放ドラマのお株を奪うブッキングをしています。主演が松本潤で、その妻役が有村架純ということもあり、大河には珍しくOL層に選ばれ、民放トップの『相棒』をも上回る数字を記録しています。正直言って、民業圧迫ですよ」

 一方、NHKに負けず劣らずのキャスティングをしているのが、安藤サクラが主演の「ブラッシュアップライフ」(日テレ・日曜22時30分)だ。脚本はバカリズム、夏帆や染谷将太、松坂桃李、志田未来、黒木華、仲村トオルなども出演している。

「『今日から俺は!!』や『3年A組―今から皆さんは、人質です―』、『あなたの番です』などの日曜ドラマ枠で、脚本の面白さも評判となって今期にはめずらしくジワジワと数字を上げています。年度予算の残りを迷わずツッコんだかのようなキャスティングの豪華さも話題になっています」

 まだ放送途中だが、1月期ドラマのベスト3を上げてもらうと?

「1位『どうする家康』、2位『大奥』、3位『ワタサバ』ですね」

 全部NHKではないか。

「民放の中から選ぶとすれば、1位『ブラッシュアップ』、2位『罠の戦争』、3位『星降る夜に』といったところでしょうか。どれも高視聴率を狙う王道枠ではないのが特徴です。他はNHKに喰われてしまいましたからね」

デイリー新潮編集部