春分を過ぎて、世間が暖かくなってきた。そうなると動き出すのが虫である。中でも、インバウンドの増加とともに広がっているのがトコジラミ(南京虫)だ。

「害虫駆除業者などで組織する団体によると、トコジラミは2000年代に入って東南アジアなどから持ち込まれ、増えるようになりました。それでも10年以上前は年間百数十件の相談件数だったものが、2022年度は683件にまで急増、今年度はさらに増える勢いです」(害虫駆除業者)

 本誌(「週刊新潮」)でも伝えてきたが、トコジラミは人の血を吸い、強烈な痒みを引き起こす。そして、普段はじゅうたんの端やベッドの裏、ソファーの縫い目などに隠れ、見つけるのは容易ではない。

ゴキブリに食べさせる?

 3月10日にはSNSの「X」(旧ツイッター)に〈今帰りの電車なんですがこれってトコジラミだったりします!?〉と写真付きの投稿があり、JR宇都宮線の車内にいたという申告を乗客から受けたことをJR東日本も認めている。トコジラミは“通勤電車に乗っている”のだ。

 だが、専門業者に頼むと、トコジラミの根絶は一軒家の場合、70万円ほどかかることも。そこで、というわけなのか、SNSではさまざまな自流の対処方法が披露されている。中でも“天敵”を利用する方法として、

〈あまりオススメできないけど 大量にゴキブリをトコジラミのいる部屋に放す ゴキブリは餌として食べてくれますよ。ゴキブリの多い安宿は不思議とトコジラミの被害がないんだよね。カザフ グルジア ブルガリア セルビアで経験済み〉

 と書かれた「X」の投稿は、90万回以上、表示された。他にも、イラスト入りで、

〈トコジラミはさまざまな生物に捕食される〉〈まさかのゴキブリ〉

 と書き込んだものも。

殺虫剤メーカーに聞くと…

 ここはゴキブリの生態に詳しい殺虫剤メーカーに聞くべきだろう。

 まず、アース製薬。ゴキブリはトコジラミを食べるのか。

「分かりかねます」(広報担当者)

 次にフマキラー。

「すぐに返答はできません」(同)

 残るはキンチョー(大日本除虫菊)である。

「食べません。トコジラミはカメムシの仲間。ゴキブリがカメムシ類を餌にすることはありませんから」(宣伝部の担当者)

 本気でゴキブリを家に放とうと考えた人は、思いとどまったほうがいい。

「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載