「機能性表示食品」制度がスタートしたのは2015年のこと。機能性表示食品は「国のお墨付き」、すなわち審査が不要で、届け出さえすれば企業の責任で機能を製品に謳うことができる。一定程度のエビデンスがあれば国の審査なしで機能性の表示ができるため、市場は急拡大。しかし、その陰で届け出制度の甘さにより、質の悪い製品が交じるようになった。(以下は「週刊新潮」2024年5月2日・9日号掲載の内容です)

 人体への影響も指摘される中、死者が出るという悪夢が現実のものとなったのが、機能性表示食品として売られていた小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」だ。消費者庁は制度そのものの見直しも進めるも、健康被害報告があった製品の実名は明かしていない。

 6795製品のうち、その根拠に疑義が呈されている、あるいは摂取する際に注意が必要なものはどれなのか。以下、具体的な商品について検証する。

66回以上の検定

 まず、サントリーウエルネスの「ロコモア」を例に挙げよう。トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品に詳しいジャーナリストの植田武智氏はこう話す。

「『膝関節機能』と『歩く速さ』に効果がある、とする商品です。しかし、サントリーが効果の主要な根拠として届け出ている論文を読むと、どうも適切な研究がなされているかどうか疑問なのです」

 その論文では、膝関節に痛みを感じる100人の被験者のうち、50人に有効成分の入ったサプリ、残り50人にプラセボ(偽薬)のサプリを16週間飲ませて効果を比較。「膝関節機能」については、日本版変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)というスコアで評価している。

「最初の100人のグループでは摂取群とプラセボ群で有意な差が出なかったため、膝の痛みが強い48人(摂取群23人、プラセボ群25人)に絞って比較したがそれでも差が出ない。そこで、評価項目を変えて試験前の値との変化率を比べたところ、ようやく膝関節機能では8週目だけに、歩く速さでは16週目に差が出ています」(同)

 被験者群を絞ったり評価項目を変えたりしてどうにか差を見付けた、というより“作り出した”ように見えるのだ。

「さらに言えば、この研究では66回以上の検定がされているのです。例えば、摂取群とプラセボ群の有意差の基準を5%未満とすると、20回に1回は本当は差がないのに偶然差が出てしまう可能性が出てくる。つまり、一つの臨床試験で、検定を20回以上繰り返してたまたま差を見付けても、それは偶然の差と区別がつかない、ということになるのです」(同)

 有料版ではほかにも具体的な商品名とともに、効果の根拠や健康被害の可能性について徹底検証している。

デイリー新潮編集部