「すぐに検索」やめてみる、「ナビ」になるべく頼らない…スマホ認知症を防ぐ10の心得

「すぐに検索」やめてみる、「ナビ」になるべく頼らない…スマホ認知症を防ぐ10の心得

「スマホ」が危ない! 高齢者と子どもを蝕む「脳の病」(2/2)

 スマートフォンの使用がもたらす脳過労によって、記憶力の低下をはじめ脳に異変を訴える人が続出している。その影響は深刻で、理性を失い日常生活に支障を来たす者までいるのだ。

 ***

 日本精神神経学会認定専門医で成城墨岡クリニック院長の墨岡孝氏によれば、

「5年ほど前から、当院に『スマホ依存』で来られる患者さんが増えています。それまで初診なら月数人くらいだったのが、今では月15人ほどの患者さんが来院します。中高生だと1日8時間以上オンライン上で仲間とチャットをしながらゲームをしてしまい、進級や進学が危うくなって両親が相談に来る方が目立ちますが、最近は中高年も同様のケースでやって来るんです」

 スマホによってSNSやゲームをいつでもどこでも出来るようになり、依存症になる患者が増えたという。

 その実態を墨岡氏が語る。

「スマホゲームにハマったサラリーマンが、銀行のカードローンなどで300万円も課金をして家計が破綻したり、既婚者の男性が、刺激を求めて異性と出会えるマッチングアプリにのめり込んでしまい来院したこともあります。決して皆さんズボラでだらしないというわけでなく、むしろ几帳面で真面目な方なんですが、リアルな世界では友人が少なく自己表現が苦手な人が多い。ストレスの溜まる現実より、バーチャルな世界での繋がりに魅力を感じてしまったのでしょう」

「スマホ亡国論」

 そこで「スマホ依存」の患者には、まず1日のスケジュールを書いて貰い、普段スマホをどれくらい触っているかを自覚させている。

「急に依存から脱することはできませんから、スマホへの接触を減らして貰うところから始め、だいたい治療には4、5カ月かかります。予防にはベッドやトイレなど決まった場所には持ち込まないというルールを作るといい。スマホを見る時間を制限するアプリを使うのもお勧めです」(同)

 確かに、iPhoneなどには設定時間を超えて利用すると、SNSやネットが自動的に使用不能になる機能がある。とはいえ、適切な1日の利用時間の限度、目安というものはあるのだろうか。

 東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長に訊くと、

「子どもたちの調査結果と照らし合わせると、学力という観点からは1日1時間の使用がボーダーラインだと思います。我々大人も不必要な時は電源を切っておく。道具として割り切って使える精神力を持てる人が、今後の社会を動かす人材になっていくと思います。他方、スマホに使われるだけの大人は、労働の質が下がる一方で厳しい将来が待っている。スマホの使い過ぎで労働者全体の質が下がれば、スマホ亡国論ではないですが、我が国は崩壊の道をひた走ることになってしまいます」

『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎・近日刊)の著者で、おくむらメモリークリニック院長を務める脳神経外科医の奥村歩氏はこんな意見だ。

「いわゆる『スマホ認知症』が悪化してしまった患者さんに、スマホの使用が1日1時間を超えないことを目標に、低用量の抗うつ剤を3カ月服用して貰ったところ、脳の機能が回復しました。そもそもスマホには、お酒やギャンブルと同じく強い依存性があることを認識することが大切です。手っ取り早く薄っぺらい快楽が得られることが問題で、必要以上に使えば中毒になってしまいますから」

スマホ漬けの脳

「依存」や「中毒」とまでいかなくても、片時もスマホを放せないなら要注意。情報を過剰に摂取する現代人は、脳がカロリーオーバーを起こして、「情報生活習慣病」を発症するリスクがあると奥村氏は指摘する。

「いつ症状が出てもおかしくないと不安を抱える方には、『10の心得』をお伝えしています。これらはすべて、私が『スマホ認知症』の患者さんを治療して実際に効果を上げたものばかり。実践すれば、だんだん脳の働き具合がよくなってくるでしょう。そのファーストステップは、とにかく脳を休ませることです。脳細胞は睡眠によって修復されますからきちんと眠る。そのためには就寝1時間前にはスマホを断つ。寝ながらスマホなどは以ての外ですよ」

 昼間でもスマホやタブレット、パソコンなどのIT機器を使うのは極力控え、浮いた時間はひなたぼっこや散歩など、ゆったりとした時間を過ごすとよい。猛暑で外出が難しい状況であればスマホを見ない環境に身を置き、1日5分でいいからボーッとする時間を作る。いつもとは違う時間の流れを感じられるようにするのが重要なんだとか。

「スマホやパソコンがなくても大して支障はないと分かることで、心身共に少し余裕が出てきます。その余裕こそ脳の疲れがとれてきた証拠です。“スマホをチェックしなきゃ”という気持ちから解放され、脳に疲れを溜めない習慣をつけましょう。サラリーマンなら、仕事などでいくつものタスク(事案)をこなすのがカッコイイと思われがちですが、マルチタスクは脳を疲れさせる要因でしかない。そんなことでは人間の脳のキャパシティーはすぐにいっぱいになって、もの忘れやうっかりミスを重ねるだけ。ひとつの物事に集中するモノタスクに切り替えることが大事です」(同)

 旅に出掛け、スマホに頼る人も多いだろう。旅先で美味しい店を探したり、ナビを使ったり……という作業もこの際、やめることを奥村氏は勧める。

「確かにスマホの検索機能や道案内は便利ですから、知らない街でネットに頼らなければ、道に迷うなど想定外の出来事が増えるでしょう。絶対に使うなとは言いませんが、苦労した分、自分の頭でハプニングに対処する能力が鍛えられます。脳は骨や筋肉と一緒で、使わないと劣化します。分からないことがあるとすぐスマホに飛びつく癖がついてはいませんか。例えば漢字も普段から手で書く習慣がないと、どんどん忘れていく。簡単な字なのに思い出せず、スマホ検索のお世話になれば脳の記憶する力は衰える一方なのです」

 先を急ぐ旅でなければ、自分の嗅覚を頼りに店を探すことで、スマホ漬けの脳が活性化されるというのだ。

「そもそもスマホは、ディスプレイ上で情報のやり取りをするので、視覚だけが刺激され脳のバランスが偏り、結果的に疲労が溜まります。人間は嗅覚、聴覚、触覚など五感が刺激される体験を積むことで、心身の機能が向上してきました。ですからスマホを介さず人と直接会って話せば、表情や声からその人の息遣いを感じられますし、物にしても書店で本を手に取れば、紙の手触りやインクの匂いなどを実感できる。日頃からなるべくリアルな世界に身を置き、五感を活性化させれば脳に疲れが溜まらない。そんな暮らしを心掛けることが大切です」

 たまの休みはスマホの電源をOFFにして、本を片手に途中下車。検索機能に頼らずぶらりと街を歩いてみては如何だろう。

「週刊新潮」2019年8月15・22日号 掲載


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