スマートフォン所持の低年齢化が進むなか、子供が性犯罪に巻き込まれるだけでなく、中高生によるスマホを使った「盗撮」などのトラブル事例も増えている。実際、校内での盗撮行為によって処分を受けたり、警察に立件されたケースもあるという。問題は中高生の場合、“罪の意識もないまま”加害者となるケースが多いこととされ、今回、そんな当事者の親子に話を聞くことができた。【河合桃子/ライター】

 ***

 現在、中学3年生の吉田翔平君(仮名・14)は今夏、関東圏にある名門進学校を退学処分になったという。その経緯を母親の佳子さん(仮名・47)がこう話す。

「私は翔平が小学3年生の時に離婚しており、以来、ひとりで息子を育ててきました。ただ幸いにも経済的には恵まれていたので、“子供たちの幸せのために学校はある”との教育理念を掲げた私立のA中学校の校風に惹かれ、そこを中学受験させました。あそこなら大学受験にも有利で、翔平の将来も“安定するのでは”と考えたのが一つ。もう一点が、A校には寮があるので、私にもしものことがあっても息子の住まいは確保できるとの安心感がありました。無事、合格し、中学に入ってからは充実した学校生活を送っていると思っていたのですが……」

 一方の翔平君は当初、私立校に行くことに抵抗もあったが、学校にはすぐ馴染めたという。その翔平君が言う。

「正直、僕は小学校の友達らと同じ公立中に行きたかったけど、母が受験したら『新しいiPhoneを買ってあげる』と言ったので、その“ご褒美”目当てで受験しました。実際に入学すると、友達もすぐできて楽しい毎日だった。学校ではタブレットを使っていたんですが、みんなでエッチなサイトを見て楽しんだり、時には先生とも『どのセクシー女優が可愛いか?』などの話で盛り上がりました」

ノリで「してみる?」

 学校の先生と生徒の間で「セクシー女優」についての会話が交わされるのも驚きだが、「見ても(先生から)怒られないという“ユルさ”があって、だからってわけでもないけど、そういった動画を撮ることへの興味も少し湧いていました」と翔平君は話す。

 中学2年の時、同じクラスの男友達の家で同級生4人が集まり「お泊まり会」をする機会があったという。しかし、これが後の“事件”を起こすキッカケとなる。

「友達の部屋で4人でバカ話をしていると、『ジャンケンで負けた奴が女子にInstagramからメッセージを送ろうぜ』っていう罰ゲームをやる流れになったんです。で、僕が負けて、同じ学校の一学年下の女の子にメッセージを送ることになった。すると、その子の反応が良くって、つい『好きかも』『付き合おうよ』みたいなやり取りに発展してしまった」(翔平君)

 翔平君は、その女子生徒とは顔見知り程度で、まともに話したことすらなかったが、メッセージ上で盛り上がった勢いのまま「交際」することになったという。

「その時、具体的にどんな会話をしたかはもう忘れたけど、ちょっとエッチな話にもなった。だから“この子はイケるかもしれない”という感じがしたから『シテみよっか』『いいよ』みたいな流れになって……。そのやり取りを見ていた周囲の友達が『エッチしてるところの写真、撮ってこいよ』と囃し立て、その場はすごく盛り上がりました」(翔平君)

男子トイレの個室で……

 その翌日、翔平君は学校の休み時間にその女子生徒と対面。そして校内のひと気のない男子トイレの個室に2人で入り、そのまま“行為”に及んだという。

「僕が便器に座り、彼女を上に乗せて……シマした。彼女に『撮ってもいい?』って聞いたら、『マジで?』みたいに笑っていたけど、なんとなく『いいよ』みたいな流れになって。僕が右手でスマホを持って、彼女の上着をまくり上げたりして撮りました。動画といっても、たぶん2〜3分程度。その時は“みんなに見せたら盛り上がるだろうな”って思っていた」(翔平君)

 その動画を撮ることで、女の子を傷つけたり、2人の学校生活に悪影響を及ぼしたりする可能性は考えなかったという。

「その動画を、お泊まり会の時のメンバー4人でつくったグループLINEに送りました。“ちゃんとやったぞ”って感じで。みんなは“オー!”“スゲーな”みたいな反応でしたね。その後、その女の子とはメッセージで少しやり取りをしたけど、2人で会ったり話したりすることはありませんでした」(翔平君)

 グループLINE上の動画は、翔平君を除く3人のスマホに保存されたが、それ以上、拡散することはなかったという。しかしその半年後、3人のスマホの中身を担任が検査するというハプニングがあり、翔平君がかつて撮った問題の動画が発覚――。

「異論は受けつけない」

 その日の放課後、翔平君は担任に呼び出され、「下級生と校内であるまじき行為の動画を撮ったことがあるか?」と訊ねられたという。

「最初は何を言われてるかわからなかったけど、突然“あっ!”と思い出して……。『はい』と答えると、母親も学校に呼ばれ、即刻、退学処分になりました」

 母親の佳子さんが当時を振り返る。

「学校から『すぐに来てもらえませんか』との連絡を受けて、“何事か”と思いました。学校に着くと校長室に促され、校長と担任、翔平と私の4人で話をしたのですが、『息子さんが下級生と看過できない動画を校内で撮影し、それを同級生と共有していたようです。本校ではそのような生徒を受け入れ続けることはできません。退学処分とします。これについては異論も受けつけません』と一方的に告げられ……」

 学校からの宣告は問答無用だったため、佳子さんは言われるまま「自主退学届」の書類にサインをしたという。この時、翔平君は中学3年生の夏休み前という時期だった。

「私立とはいえ、義務教育期間であり、この処分は“厳しい”と感じました。私の本音としては、退学処分となるにしろ、高校受験への影響などを考慮してから判断してほしかった。もちろん女の子の同意があったとはいえ、撮影した動画を友達に見せたことへの“罪の意識”がない息子には教育が必要です。でも肝心の画像は学校側が親に見せることなく消去してしまったので、動画の内容は私にはわからないままです。そんな経緯もあった上での有無をいわせぬ処分方針だったため、あまりに悲しく、非情に映りました」(佳子さん)

転校後に「不登校」

 退学処分を機に、翔平君は公立中に転校するが、現在は不登校中という。その翔平君が“事件”をこう振り返った。

「今回のことで、ああいった行為を写真や動画で撮ることのリスクを学びました。たとえ合意があっても、撮らないほうがいいんだと……」

 子供がスマホの撮影機能を利用して、自覚もないまま「加害者」となるケースは各地で起きている。2020年2月、奈良県の市立中学の男子生徒がスマホで女子生徒の着替えの様子を盗撮し、SNSで共有していたことが発覚。同年6月、佐賀県でも男子中学生ら約30人が女子生徒の裸の画像を拡散したとして補導された。

 幼い頃からスマホに親しんできた世代は、スマホでの撮影や、それをSNSに 投稿することへの警戒心が薄い反面、軽はずみな行動が「犯罪」の烙印を押される危険性とも隣り合わせだ。親も学校もそのリスクをよく理解し、倫理観も含めた「スマホの正しい使い方」を改めて子供に教える必要があるのではないか。

河合桃子(かわい・ももこ)
ライター

デイリー新潮編集部