大成しない子役が陥るパターン

 宝島さん夫婦遺体遺棄事件で、警視庁などは死体損壊容疑で複数の容疑者を逮捕したが、そのうちの1人は2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などに出演していた元俳優の若山耀人(きらと)容疑者(20)だった。岐阜県出身の若山容疑者は、大手芸能事務所・ワタナベエンターテインメントに所属し、12年10月、ドラマ「悪夢ちゃん」(日本テレビ系)でデビューしている。

 同ドラマは予知夢を題材にしたSFファンタジー作品。若山容疑者は、北川景子(37)が演じた主人公の小学校教師が担任するクラスの生徒役で出演していた。その後、大河では岡田准一(43)が演じた主人公・黒田官兵衛の幼少期を演じ、18年には人気コミックを実写化した映画「曇天に笑う」にも出演している。

 だが、逮捕時の姿では首までタトゥーが入るなど、俳優として活躍していた頃からは想像もつかない姿となっていた。

「『悪夢ちゃん』は事務所の先輩・和田正人のバーターで出演していましたが、大河ドラマはオーディションで選ばれて役をゲットしています。大河への出演で知名度もあり、事務所も大手ですからね。そのまま所属していれば、今回のようなことにはならなかったはずです。上京して俳優業を頑張っていると聞いていましたが、高校1年時に帰省した際、金髪になった姿が目撃されています。事務所を辞めたのもそのころのようで、素行不良で契約を解除されたそうです」(スポーツ紙記者)

 上京してからの若山容疑者は、友人ができないことを悩んでいたという。

「俳優を辞めて渋谷のクラブに出入りするうちに、今回の事件の指示役の男と出会い、意気投合したようです。まさか死体損壊容疑で逮捕されることになるとは、子役時代を知る関係者は誰も思わなかったでしょう」(前出・記者)

 芸能界では数々の名子役が誕生し、人気を集めてきた。しかし、そのまま芸能界で活躍し続ける俳優は少ない。成長と共に芸能界を去り、一般の仕事に就くケースもあるが、その逆もある。

 子役を多く抱える芸能事務所の役員によると、大成しなかった子役には、失敗に陥る、いくつかの典型的なパターンがあるという。

「子役で活躍して売れると、相当な額のお金が入ってきます。さらにCMなどで顔が売れれば、飲食店への投資やら事業の話が本人や親族に持ち込まれたりします。金銭感覚がマヒしてしまうので、正常な判断ができなかったり、怪しい商売に手を突っ込んだりしてしまう。この『金で失敗』するケースが最も多い。さらに金に関連して身内が絡むことで『家族関係で失敗』もあります。また人気商売を生き抜くためのメンタルを維持することができない『自分自身が弱い』という例もあります。最後は、成長してから『異性で失敗』するというパターンですね。いずれにも共通しているのは、自分は他人とは違う、金がある、偉いんだといった“カン違い”があることです」

あの大五郎も

 名子役として活躍しながら、とんでもない事件を起こしてしまったと聞いて真っ先に思い出すのは、1973年から日本テレビ系で放送された、萬屋錦之介さん主演の時代劇「子連れ狼」で、主人公・拝一刀の息子・大五郎を演じた西川和孝受刑者(56)だろう。

 西川受刑者は高校卒業後に芸能界を引退。沖縄でマリンスポーツ関係の会社に勤めていた。結婚して3人の子どもが生まれると、新潟県へ転居しスイミングプールを経営していた。95年に新潟県白根市(現在の新潟市南区)市議会議員選挙に上位当選し、“大五郎議員”として一躍時の人となる。だが、女性問題や金銭トラブルから、99年の選挙には出馬しなかった。ラーメン店や雀荘の経営に乗り出すも、ことごとく失敗する。同年11月、店の資金をめぐるトラブルから知人男性を殺害し、香港からタイへ逃亡したが、国際手配で逮捕。2000年10月に新潟地裁で無期懲役の判決を言い渡され、確定した。

 ちなみに、映画版の「子連れ狼」で大五郎役を務めていた元俳優はミリタリーマニアで、タイで戦車に乗ったり、射撃を行ったりしていた。04年に拳銃密輸事件の共犯者として逮捕・起訴されている。

 明石家さんま(68)がMCを務めたフジ系のバラエティー番組「あっぱれさんま大先生」に生徒役で出演し、一躍人気者となったのがタレントの内山信二(42)だ。同番組には7年4カ月にわたってレギュラー出演したが、14歳の時に同番組が終了。後に、16歳の時には収入が無くなったことを明かしていたが、それは自身の言動が原因だったという。

「さんまさんにかわいがられていたことから、彼はすっかり天狗になっていました。周りの大人達を完全に見下しており、親に対しても『アンタより稼いでるんですけど!』と言い返したり、スタッフの靴に瞬間接着剤を塗るいたずらをしたり、マネージャーに英語の授業を代わりに受けさせるなど悪行三昧。仕事がなくなったのは自業自得でした」(同局関係者)

 19年11月に一般人女性と結婚し、2人の子供に恵まれたが、子供たちも芸能界入りするのかが注目される。ちなみに、内山と同じく初期から同番組のレギュラーだった山崎裕太(43)は、大手事務所・ホリプロに所属し俳優としてコンスタントに活動をこなす、元子役の成功例だ。

「『さんま大先生』のような番組では、とにかく子役はチヤホヤされます。スタッフたちはやたらと持ち上げてしまうので、親がちゃんとしつけたり叱ったりできない子は、どんどん天狗になってしまいます。とはいえ、現場での最優先は子供たちの機嫌をとって、とにかく番組を作る(放送する)こと。山崎さんは大手の所属ということもあって、きちんと教育されたので長く俳優を続けられたのです」(同前)

成功している子役もいる

 04年に公開された是枝裕和監督(61)の「誰も知らない」のオーディションで主役に抜てきされたのが柳楽優弥(34)である。同作は「第57回カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門に出品され、柳楽は当時14歳で史上最年少かつ日本人で初めて俳優賞を受賞。一躍、時の人となった。

 そのまま順調に成長するかと思いきや、08年に入ってからは体調を崩して仕事量を減らし同年8月末、自宅にて安定剤を大量に服用し病院に運ばれる騒動を起こすことになった。後日、《家族との口論が原因で自殺未遂ではない》と自身のホームページで発表したが、

「当時、仕事のプレッシャーから心身共にバランスを崩してしまったと言われていました。本人を責めるわけにはいきませんが、有能なマネージャーやスタッフが周りにいれば一緒に乗り越えられたはずです。柳楽さんは20歳の頃、俳優の仕事から離れ、社会勉強のために約1年間、自動車販売店で洗車と、飲食店でのホールスタッフのアルバイトをしています。この経験から色々と学ぶものがあったようで、すっかり復調しています。数々の映像作品に出演し、今や名優の雰囲気があります」(放送担当記者)

 94年にTBS系で放送された学園ドラマ「人間・失格〜たとえばぼくが死んだら〜」でいじめの主犯格の生徒役を演じて一躍脚光を浴びたのが黒田勇樹(42)。かつては“美少年”としてもてはやされた黒田だが今月8日、自身のインスタグラムを更新。金髪&あごヒゲ姿から坊主頭にイメチェンした写真を公開した。ブレイク当時の頃とはまるで別人のビジュアルでネット上で大きな反響を呼んだ。

 黒田は98年公開の映画「学校III」の好演で「キネマ旬報賞新人俳優賞」、「日本映画批評家大賞新人賞」などを受賞したが、徐々に仕事が減り、10年に俳優業を引退している。その後、「ハイパーメディアフリーター」としてメールマガジン配信やネット配信番組などネットビジネスを展開。12年8月に結婚した歌手の元妻が、DV被害を訴えるなどの騒動もあったが、やがて俳優業に復帰した。21年11月1日放送のABEMA「ABEMA Prime」に出演した際には、自戒の念もあってか、子役が転落する理由を語っている。子役が売れやすい理由については、

「20歳までは学園ものがあるんですよ。子役として注目されていれば、特に訓練をしていなくても学園ものの仕事がどんどんくるんです」

 たとえ「天才子役」ともてはやされても、いずれ注目度が下がることになるだけでなく、ライバルが現れることにもなる。

「(役者を)しっかり勉強した新人たちが入ってくる。目新しいライダー俳優、特撮俳優たちが次々と出てきて、一気にふるいにかけられる。そこまでにいかに訓練できていたか、その後も訓練は必要なんだって思うかどうかと思う」

「子役と大人の役者では、求められる演技の質や技術がまったく違うので、子役で名を成していても、それに対応できない役者は残れません。内山さんのように周囲の関係者への言動も、その後も芸能界で生き残れるかに直結します。犯罪者になってしまった若山容疑者は言語道断ですが、現役の子役たちは、長く芸能界で活動したいのであれば、先輩たちの“しくじり”を反面教師にすべきでしょう」(映画業界関係者)

 最後に、今も第一線で活躍している成功例を挙げてもらった。

「どちらもまだ19歳ですが、2011年放送のドラマ『マルモのおきて』(フジ)で一躍スターになった芦田愛菜と鈴木福はこのまま活躍するでしょう。そして、CMで『子供店長』としてブレイクした加藤清史郎は現在、22歳になりました。2010年の大河ドラマ『龍馬伝』で、福山雅治が演じた坂本龍馬の子供時代を演じた濱田龍臣(23)も順調に成長しています。今春の木村拓哉主演のドラマ『Believe-君にかける橋-』で、木村演じる主人公と同じ刑務所の受刑者役を好演しています。加藤も濱田も、主役にこだわらず、地道に仕事をこなしているので、息の長い俳優になりそうですね」(前出・記者)

デイリー新潮編集部