マッチングアプリで知り合った高齢男性に色恋を持ちかけ、カネをだまし取った容疑で逮捕されていた加藤ありさ被告(22)が起訴された。「りりちゃん」こと渡辺真衣被告と同じ名古屋で活動していた”元女子大生頂き女子”である。今回新たに紹介する被害男性(30代男性)がだまし取られた金額は15万円と少額だ。男性は「自分の経済状況を見て、ギリギリ払える額を要求したのだろう」と振り返る。(前後編の前編)

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彼女いない歴10年の男性が利用していた「マッチングアプリ」

 加藤被告は5月2日、マッチングアプリで知り合った男性(67)に「母がガンで入院してしまい、手術・入院費用が払えない」 などと嘘をついて200万円をだまし取った容疑で愛知県警に再逮捕された。

「容疑となったのは200万円ですが、被害者は計800万円を渡したと話しています。4月12日に最初に逮捕された三重県在住の男性への詐欺未遂容疑については処分保留のまま捜査を継続しています。県警はまだ余罪があるとみています」 (県警担当記者)

 だが、被害者は事件化された男性ばかりでない。

「デイリー新潮」は5月9日に配信した記事で、加藤被告から73万円をだまし取られたAさん(40代後半)の話を紹介した。Aさんは警察に相談したが、現金でカネを渡してしまい借用書も取らなかったため、証拠がないと取り合ってもらえなかった。〈【名古屋】「頂き女子」の門下生か? 67歳から“200万円色恋詐欺”で22歳女が逮捕 “余罪LINE”から浮かび上がる「りりちゃんメソッド」との共通点〉。

 今回登場するBさん(30代後半・東海地方在住)も加藤被告に貸した15万円を踏み倒されたが、警察から事件化は難しいと断られた被害者である。

 Bさんは彼女いない歴10年。5年くらい前から3つのマッチングアプリを使って数人と会ってきたが、交際に発展することはなかった。だが7月下旬、Pというアプリで加藤被告と出会い、「この娘となら真剣交際に発展するかも」と夢見ることになるのである。

「おはよう」のLINEから始まる幸せな日常

 2023年7月26日午後1時頃、Bさんは名古屋市栄の喫茶店で加藤被告に初めて会った。

「正直、最初会った時はプロフィール写真と全然違うので戸惑いました。とはいえ、若くて笑顔が可愛らしい子だった。Aさんには女子大生と身分を明かしていたようですが、僕には名古屋駅近くのアパレルショップで働いているとしか話しませんでした」(Bさん、以下「」内は同)

 甲高く透き通る声をしていて、喋りやすい子だったと振り返る。

「聞き上手でよく笑う子でした。初日は1時間くらい楽しく会話して別れました。ただ、あまり期待はしていなかった。なにしろ相手とは15歳くらい離れていましたので、どうせ相手にされないだろうと」

 だが、Bさんの予想に反して、加藤被告は別れた直後から好意的なLINEを送ってきた。Bさんが提供してくれたLINEのログには、2人が盛り上がってメッセージを交わす様子が数多く残されている。

加藤被告 Bくんとよんでもよかったですか?
Bさん 正解です!
加藤被告 嬉しいです!! 私のこともいい感じに呼んでください笑笑

 連日、LINEは朝から晩まで続いた。

加藤被告 おはよです!
Bさん おはようー
加藤被告 今日も頑張りましょー!
加藤被告 昨日の夜からお腹下してトイレとお友達してる笑

 朝はこんな感じで始まり、夕方には、

加藤被告 お仕事終わったー!
加藤被告 Bくんも終わった?
Bさん お疲れ様!
Bさん まだー
加藤被告 Bくんおつかれさま(T . T)
加藤被告 無事家に着いた?

 さらに次のデートの計画まで。

加藤被告 明日の休みが確実ではないのか
加藤被告 会えそうな日会いたいな
Bさん 会いたいね

別の被害者とトラブルの渦中も続いたラブラブLINE

 “脈あり”のようにしか見えないが、婚活に敗退続きだったBさんは慎重だった。

「彼女を疑うというより自分の男としての実力を疑っていた感じです。30代後半のおじさんが本当にこんな若い娘と付き合えるのかなって。ただ“おはよう”で始まり“おやすみ”で終わる日常に幸せを感じていました。10年以上も経験していないことでしたので」

 ちなみにこの頃、加藤被告はAさんとトラブルになっていた。加藤被告はBさんと出会う約1カ月前にAさんから2度にわたり計73万円をせしめることに成功。Bさんと距離を縮めている時期は、Aさんから”フェイドアウト作戦”を続行している最中だった。

 例えば8月7日。Bさんとは下記のように和気藹々とLINEを交わしている。

Bさん ただいま
加藤被告 いつももう少し早い!
加藤被告 今日の夜はハイチュウ食べる笑
Bさん どっか寄り道かな?
Bさん ハイチュウは何味?
加藤被告 今日はね単純に伸びた笑笑
加藤被告 ブルーハワイー!

 一方、ぼぼ同時刻に「なぜ会おうとしないのか」と追及を続けるAさんに対しては、

加藤被告 昨日正直色々あってそれどころじゃなかった
Aさん トラブル? 
Aさん 何があったの?
加藤被告 妹が自殺未遂みたいなことしてしまって
Aさん え!?

 適当なことを言って逃げ続けていたのである。

「餃子の王将行きたい」と”庶民派”ぶっていた加藤被告

 Bさんはそんな被害が起きているとはつゆとも知らず、徐々に加藤被告を信用していく。毎日のようにLINEを交わしながら週に1回くらいのペースで1時間くらいお茶や食事。たまに電話もした。

「今日何を食べたかとか、次どこに食べに行こうとか、たわいのない話ばかりでした」

 Aさんに対しては会った初日から、

〈私はシングルマザーの母親に育てられたけど母親は他界してるのは伝えたよね。それで私は今、親から引き継いだ200万くらい借金があります…〉といきなり仕掛けてきたのと大違いだ。Bさんはこう振り返る。

「むしろ、僕に対してはプライベートな話は明かそうとしませんでした。僕の方から積極的に口説こうとしなかったことが理由なのかもしれません」

 加藤被告は相手を見ながら攻略方法を変えていたのである。やがて恋に落ちてしまったBさん。加藤被告の「要求度の低さ」にやられたと振り返る。

「僕は年収が500万程度。おしゃれに興味がなくいつも小汚い格好をしていたけれど、彼女は気にしている様子が全くなかった。デートも普段行く庶民的なお店ばかりでしたが『おいしい』といつも喜んでくれました」

〈王将行ったことない〜〉
〈金曜日王将行く?〉

 LINEには、Bさんが好きな「餃子の王将」に行きたいとはしゃぐ加藤被告のメッセージが数多く残されていた。

「お茶した後、駅まで向かう時、2メートルくらい離れて歩いていたら『ちょっと距離遠くない?』『もっと近寄ろう』と間を詰めてきたこともありましたね。ピッタリ肩を並べてきたのでドキドキしました」

1カ月の「仕込み」を終え、最後の「仕上げ」に…

 こうして1カ月かけてBさんを籠絡した加藤被告は、”最後の仕上げ”に取り掛かった。

 8月24日夜。Bさんが仕事帰りにいつものように〈お疲れ様―〉とLINEすると、〈Bくーんお疲れ様T . T〉。

 涙の絵文字を見た Bさんは焦った。〈今日どした?〉〈なんか元気ないかな?〉と返事。その後、17分51秒通話している記録が残っている。

「電話するとすごく落ち込んでいて、ため息ばかりついてなかなか切り出そうとしない。やがて『お母さんが入院しちゃって…』と打ち明け、『家賃2カ月分が払えなくて貸してくれるとありがたいんだけど…』と申し訳なさそうに頼んできました。『いくらなの?』と聞くと『15万円くらい…』。『わかった、貸すよ』と言っちゃいました」

 翌日、急遽食事をすることに。本当は以前から楽しみにしていた「餃子の王将」に行く予定だったが混んでいたため「磯丸水産」に変更した。そして食事後、BさんはコンビニのATMに立ち寄り15万円を加藤被告に手渡した。

 加藤被告はBさんの手を握り、目を潤ませながら「ありがとう」と言って去っていったという。ただ後で振り返るとおかしな点があった。

「カネがないという割にはネイルが変わっていたし、購入してきたばかりの犬の餌が入ったペットショップの紙袋を持っていた。ただ、あの時は“僕が彼女を守ってやるしかないんだ”という気持ちで盲目になっていたのです。15万円は僕の経済状況からギリギリ引っ張り出せると踏んだ額だったのでしょう」

警察に相談したが「被害届は受理できない」

 その後はお決まりのパターンだ。「アフターケア」のLINEは続いたが、1週間、2週間と経過するうちに徐々に返事が遅く、雑になっていき、最後の方はメッセージではなくスタンプで返してくることが多くなった。

 9月26日にはとうとう既読がつかなくなった。

「いつしかブロックされていて、だまされたと気づいた。音信不通になった後は、1週間くらいは引きずりましたね。完全に惚れ込んでしまっていたので…」

 11月下旬、愛知県警中警察署に被害相談に行ったが、

「借用書もなく現金での手渡しだったと聞いた警察官は『証拠がないので民事で争うしかありません』。泣き寝入りするしかなかった。それから半年が経過した連休明けにデイリー新潮の記事を見て、逮捕されていたと知ったのです」

 後編ではAさんとBさんの特別対談を実施。なぜおじさん2人は22歳の女からやすやすと手玉に取られてしまったのかーー。【名古屋「22歳頂き女子」にだまされた被害男性2人が特別対談「僕らがバカだった。若い女子がおじさんとの“餃子の王将デート”を喜ぶはずがない」】に続く

デイリー新潮編集部