6月20日告示の東京都知事選に、広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が立候補の意向を表明し、ネットが沸いている。過激な言動とソレを支持する“信者”たちの存在で話題を集める石丸氏だが、地元の近しい関係者らは意外な「人物評」を口にした。

 ***

 石丸氏といえば、安芸高田市長に就任した直後の2020年9月、本会議で居眠りしていた議員をTwitter(現X)で晒し、市議会との対立が先鋭化。また地元紙・中国新聞記者を「失礼が過ぎる」「偏向報道」などと批判し、そのバトルの模様をYouTubeで公開するなど、SNSを駆使した“ケンカ上等”の姿勢が「痛快だ」として一部から喝采を浴びている。

「なかでも『完全論破で公開説教』や『ポンコツ進行 議会崩壊』などとタイトルの付けられた切り抜き動画がバズり、石丸氏は全国的な知名度を得ることになりました。ひろゆき氏や堀江貴文氏もエールを送るなど、“既存政治に風穴をあけるニューカマー”として若者を中心に支持を集めています」(全国紙政治部記者)

 都知事選を見据え、すでに任期満了にともなう7月の市長選に出馬しない意向を表明している石丸氏だが、地元の反応はいまも複雑だ。

「就任直後は経済停滞や過疎化に悩む“安芸高田に新風を吹き込んでくれる”存在として期待する市民は多かった。ところが“晒し”行為や議会との対立が繰り返し報じられるようになると、『政策が間違ってるとは思わないけど(市長は)人間性に欠ける』といった声をよく聞くようになった。それでも『まだ残ってやってもらいたい』と話す市民もいる一方で、多くは“なぜ、都知事選に?”と釈然としない思いを抱いている」(地元の市政関係者)

「非効率」のひと言で…

 あまり報じられていないが、議会関係者のなかには石丸氏の政治家としての「実績」を評価する向きもあるという。

「石丸氏は『財政再建』を公約の一つに掲げ、就任後、結婚サポート事業への補助金カットや第三セクターへの支出を減らすなどして、市の財政を4年間で好転させたのは紛れもない事実。ただし公費削減は地元住民の雇用喪失につながりかねず、それを『(削減対象事業は)非効率だ』のひと言で根回しもなく断行したため、反発は小さくなかった」(同)

 他にも給食費の無料化実現なども「成果」に挙げられるというが、反対にブチ上げたものの頓挫した政策も少なくないという。

「就任直後に副市長の一人を“全国から公募で選ぶ”と大胆な人事策を提案しましたが、議会の否決にあって挫折。また道の駅への『無印良品』出店などの誘致策も議会で否決され、日の目を見ませんでした。その最大の理由として指摘されているのが市長の説明不足。議会や市民の間にあった『本当に必要なことなのか?』との疑問を氷解させることができず、最後まで周囲の理解を得られなかった」(同)

 議会との「コミュニケーション不全」について、市議のなかには市長を諫めた人物もいたが、返ってきたのは意外な答えだったという。

市長の口から「鬼滅の刃」のセリフが

 安芸高田市の金行哲昭市議(6期)がこう話す。

「一度、市長に議会ともう少し密なコミュニケーションを取るなど『(政策発表の前に)ワンクッションを置いたほうがいい』と進言したことがあった。しかし市長は『それをしたら河井事件になるんですよ』と答えた。議会や市議との距離を縮めすぎると、妥協や腐敗を生むと考えたのでしょう。実は市長は漫画『鬼滅の刃』が好きで、登場人物のセリフの一つとされる“それでも今、自分にできることを精一杯やる”といった言葉を口にしたこともあった。たしかに強引なところはあるけれど、私がこれまで見てきたなかで“一番、信念のある政治家”だというのは否定できない」

 石丸氏が例に挙げた“河井事件”とは、河井克行・元法務大臣と妻の案里氏による19年の参議院選挙をめぐって起きた大規模買収事件を指す。前市長が河井氏から現金を受け取ったことを認め、引責辞任したことで行われた選挙で石丸氏は当選した経緯がある。

 ただし議会関係者の多くが金行氏と同じ考えではないという。

「名前が売れたところで、“改革の道なかば”のはずなのに市長職を1期で放っぽりだして都知事選に出るなんて、“安芸高田を踏み台として利用しただけじゃないか?”と批判的な目で見ている関係者は多い」(前出・市政関係者)

 仮に“本命”と目される小池百合子知事(71)が出馬表明すれば、「現状では対抗馬として力不足」(前出・記者)と見られている石丸氏だが、果たして“一波乱”を起こせるか。

デイリー新潮編集部