6000万円する腕時計などを多数購入

 6月26日、勤務していた会社から約5億5000万円を着服したとして、警視庁は中澤祥基(よしもと)容疑者(49)を業務上横領の疑いで逮捕した。2018年に逃亡先の台湾で逮捕されるまで、中澤容疑者とその妻が送っていた豪遊生活の中身とは――。

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 逮捕容疑では、自動車部品会社「三協」の経理担当課長だった中澤容疑者が、会社から約5億5000万円を着服したとされる。警視庁詰め記者によれば、

「中澤は14年1月下旬、額面計約5億5000万円の三協名義の小切手4枚を神奈川県内の銀行で換金して自身の口座に入金。社長の印鑑を勝手に使って小切手の振り出し申込書を作成していました。09年6月から14年1月までの4年半で、総額25億円ほどを着服したとみられます」

 自分の給料を水増しするなどして着服を繰り返していた中澤容疑者は、

「オーデマ ピゲなどの超高級腕時計を多数購入。1本6000万円もする腕時計もありました。ほかにも、9歳年上の台湾人妻に高級ブランドのバッグやジュエリーを買っていた。14年1月、三協への税務調査がきっかけで着服が発覚して懲戒解雇となった中澤は、5億5000万円を一気に引き出しました。直後、妻を連れ、彼女の故郷である台湾の高雄へと高飛びした。その過程で、資産隠しをもくろみ偽装離婚もしています」

妻の故郷で高級マンションなど3軒を購入

 ほどなくして、警視庁は、海外逃亡した中澤容疑者を指名手配。国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、台湾の警察にも捜査協力を要請したのだった。

 台湾は中国の反対でICPOに加盟できていないが、現場レベルでの日台捜査協力は行われている。

「18年4月、台湾の警察が中澤と元妻、その妹の三人を逮捕しました。マネーロンダリングを行った疑いです」

 と、社会部デスク。

「この逮捕で分かったのは、高飛び以降の4年間、中澤は元妻とぜいたく三昧の逃亡生活を送っていたこと。ふくよかで美人の元妻のため、高雄に戸建てや高級マンションなど3軒、総額約2億円分を所有し、1億円相当の土地も購入していました。またあるときは連日、高級ホテルを泊まり歩き、デパートで高級ブランドものを買いあさっていた」

 加えて、マカオのカジノにも通い詰めていたとも。

「それらの元手はもちろん、着服金です。違法な手段で懐に入れた資金で購入した腕時計やバッグを台湾で売りさばいていたので、元妻とともにマネロンの容疑で捕まった。のちに中澤は懲役3年8月の実刑判決を受け、今年6月22日まで服役していました」

“もう疲れた”と泣き崩れ…

 そして26日、台湾から強制送還され、成田空港で警視庁が逮捕したのだ。

「中澤はもともと、元妻が東京都内で経営するカラオケクラブの客でした。彼女にほれ込んでプレゼント攻勢をかけた末、結婚している。自分の金だけでは足りなくなり、会社の金に手をつけるようになったのでしょう。台湾での逮捕時に地元メディアが報じたところでは、中澤は警察による取り調べの際、日本の両親に電話をかけ、“悪いことをしてしまった。もう疲れた”と泣き崩れたそうです」

 犯罪に手を染めてまで台湾人妻に入れ揚げた元課長はいま、警視庁の調べに黙秘を続けているという。

(事件の深層に迫る「週刊新潮」の連載「INCIDENT」より)

「週刊新潮」2024年7月11日号 掲載