孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。2002年からこの仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、風俗嬢たちの部屋の清掃について聞いた。

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 高江洲氏が経営する会社には、時として予想外の依頼があるという。

「『うちの従業員たちの寮を掃除してもらえませんか』と言われました」

 と語るのは、高江洲氏。

「詳しく話を聞いていくうちに、これは変わった仕事になるぞと思いました。電話をかけてきた男性は、関東でチェーン展開している風俗店のマネージャーです。従業員の寮というのは、風俗嬢たちの住まいです。寮といっても、お店が借りているごく普通のマンションやアパートだそうです」

 高江洲氏は当初、一般的なハウスクリーニングと変わらないと思ったそうだが、

「マネージャーによれば、彼女たちはとにかく自分で掃除ができないというんです。そして、汚し方もハンパではないと言われました」

唖然とする光景

 部屋はゴミ屋敷と化し、隣人から苦情が出ている状態だったという。

「ゴミ屋敷であれば特殊清掃に近いと思い、それなりの準備をしました。清掃を依頼された部屋は10数カ所で、彼女たちのシフトを聞いて、留守の間に清掃を行うことになりました」

 お店に飾ってあった、女性たちの写真を見ると、ほとんどが20代前半だったという。

「汚れていると言われても、若い女性が散らかし放題にしている程度、大したことはないだろう。ひと部屋に1時間もあれば十分と思っていましたが、マネージャーが言う通り想像を絶するものでした」

 ある風俗嬢の部屋は、ドアを開けると、そこには啞然とする光景が広がっていた。

「床一面に洋服や下着が脱ぎ捨てられ、それらが何層にも積み重なって数十センチもの山になっていました。1メートルほどの山も3つ。この部屋の女性は、洗濯を一度もしたことがないようでした」

 もっとも浴室の横には、洋服に埋もれた10万円以上もする立派な洗濯機が放置してあったという。

「洋服には髪の毛がからまり、とっくに賞味期限の切れた菓子パンと一緒に踏みつぶされて紙粘土のようになっているパンティがありました。ポテトチップスの袋の中には、なぜか生クリームが入っていました」

おびただしい血液

 風俗嬢は高収入なので浪費癖があり、洗濯などせずに次から次へと衣類を買い足していく人が多いという。

「どの女性の部屋に行っても、程度の差こそあれ、衣類が無造作に放置されていました」

 別の風俗嬢の部屋では、汚れた洋服の上を子犬が走り回っていたという。

「仕事で疑似恋愛をすることの多い彼女たちは、自宅に帰ってひとりになるとたまらなく寂しくなるのかもしれません。しかし、彼女たちは子犬に餌を与えても散歩に行かず、フンもそのままです。子犬は不思議そうな顔をして、掃除をしている私を見つめていました。おそらくこの子犬は生まれて初めて、掃除をする人間を見たのだと思います」

 風俗嬢の中には飼い犬を放ったらかしにして、通い詰めたホストクラブのホストと行方をくらます者もいるという。

「かわいそうなのは、汚い部屋に残された犬です」

 さらに、別の風俗嬢の部屋には、身の毛がよだつものが……。

「リストカットをする女性もいるようで、血だらけのタオルやカミソリが転がっているのを発見しました。床や風呂場にも血痕がありました。人が死んでもおかしくない程の、おびただしい血液が残されている部屋もありました」

 高江洲氏は、部屋を見ると彼女たちの精神状態を想像し、切なくなったという。

「美しく着飾っている女性たちの本当の姿を見るようで、私にとってこのような部屋はある意味、いつもの事件現場より衝撃的でした」

デイリー新潮取材班

2021年4月20日 掲載