「官邸ポリス」の一員も

 警察組織内で「4課」といえば、対抗する組織同士の抗争や市民への恐喝など、暴力団が関わるあらゆる事件の捜査を担当する部門だ。ここに所属する刑事は「マル暴」などと呼ばれ、殺人や強盗などの強行犯を扱う刑事部・捜査1課、詐欺などの知能犯を扱う捜査2課、窃盗を扱う捜査3課と並んで、かつては刑事警察の柱を担ってきた。ところが、首都の治安を守る警視庁は2022年春にも、組織改編に伴いこの4課を「改名」する予定なのだという。改編後の組織の新名称を巡っては、とある“珍騒動”が発生。しかも、騒動の背景には、菅義偉首相ら官邸中枢への「忖度」が噂され、時の権力べったりの「官邸ポリス」のあの人物の名前も取り沙汰されているらしい。

 日本最大の警察組織内部で何が起こっているのか。

「警視庁の4課は組織犯罪対策第4課が正式名称で、組織犯罪を取り締まる組織犯罪対策部(組対部)に属します。もともとは捜査1課〜捜査3課と同じく刑事部に所属する捜査4課だったのですが、2003年の組織改編で組対部が誕生し、捜査4課だけ組対部に組み込まれることになりました」

 と、全国紙社会部記者。

 その際も長年、呼称として使用してきた「4課」にこだわり、1課〜5課まである組対部の「4課」にスライドする形をとった。その他の課についての担務は後述するが、

「それくらい4課という表記には思い入れがあったわけですね。ところが、警視庁はオリンピック・パラリンピック後に、この組対部の組織改編を検討。組対1課〜5課を統合・再編し、それぞれに新たな名称を付けることになったのです」

既定路線だった名称が

 度重なる暴力団対策法の改正や暴力団排除条例の施行で、暴力団組織の弱体化が指摘される一方、近年は暴走族グループOBらからなる反グレ集団や、外国人による組織的犯罪が顕在化。

 犯罪の種類も、これまでの飲食店などに用心棒代を要求するみかじめ料や覚醒剤の売買に加え、高齢者らから多額の現金をだまし取る特殊詐欺や、消費税分の利ざやを稼ぐ金塊の密輸、金融機関へのサイバー攻撃による現金の一斉引き出しなど、時には暴力団と反グレが手を組みながら多様化している。

 警視庁組対部の組織改編は、こういった社会情勢に合わせるもので、理にかなったものだろう。

 具体的には、薬物や銃器犯罪の捜査を担当し、元プロ野球選手の清原和博や元女優の沢尻エリカを逮捕して名をあげた組対5課は「薬物銃器対策課」に。

 外国人による不法滞在などを扱ってきた組対1課と、外国人による殺人事件などを捜査してきた組対2課は合併し「国際犯罪対策課」に。そして、思い入れのあった「4課」も、暴力団の“指定や情報収集”がメインの組対3課と統合され「反社会的勢力対策課」に変更する案が既定路線だった。

 ところが、目下、警視庁内では、「反社会的勢力対策課」の名称を巡り、ある“問題”が浮上しているのだという。

 捜査関係者が打ち明ける。

「暴力団だけでなく、より広く不当な経済的利益を得ている集団を取り締まるという組織改編の意図がよく伝わり、まさに名は体を表すぴったりなネーミングだと思ったんですが。どうやら親玉の警察庁からストップがかかったようなんです」

 全国の警察行政を取り仕切る警察庁であれば、警視庁の組織改編に口を出すこともあろうが、「反社会的勢力対策課」のいったいどこが問題なのだろうか。

いったいどこが問題なのか

「例の『桜を見る会』の騒動が関係しているんですよ。あの時、官房長官だった菅首相の『発言』を警察官僚たちが忖度したともっぱら噂になっている」(先の捜査関係者)

 桜を見る会の問題を巡っては、全国の高齢者らから2000億円超を違法に集め、詐欺罪で立件されたジャパンライフの元会長が招待状を宣伝に使っていた他、前夜祭の収支が政治資金収支報告書に記載されていなかったとして、安倍晋三前首相の元公設第一秘書が略式起訴され、第2次安倍政権末期の火種となった。

 実は、この騒動の渦中で、「反社会的勢力」の定義が問題となったことがあった。

 2019年11月、桜を見る会に反社会的勢力に関係する人物が出席していた疑惑が報道された。

 これを受け、当時官房長官だった菅首相が記者会見で、「反社会的勢力の定義は一義的に定まっていない」と苦し紛れの釈明を行ったのだ。その後、政府はこの発言を追認するように、反社会的勢力を「あらかじめ限定的、統一的に定義するのは困難だ」との見解を閣議決定した。

「警察官僚たちの間で、政府が『定義できない』とした文言を警視庁の組織改編で用いるのはよろしくないという忖度が働いたというわけです。全くバカバカしい話ですが、確かに“定義できない勢力”を取り締まる部署では仕事になりませんよね。暴力団事務所に踏み込んだ際に、ヤクザから“俺たちは反社会的勢力なのか?”と聞かれても答えられないわけですから」(同)

菅首相と警察ナンバー2のライン

 この件について、警視庁内部では官邸に近いある警察官僚がキーパーソンにあがっている。

 菅首相の官房長官時代に秘書官を務め、その後、警視庁の刑事部長、警察庁の組織犯罪対策部長を歴任し、現在は警察庁のナンバー2となった中村格次長だ。

 中村次長といえば、警視庁刑事部長だった2015年6月、安倍前首相と懇意だった元TBSワシントン支局長による伊藤詩織さんへの準強姦事件で、逮捕直前に事件を握りつぶした疑惑を週刊新潮にすっぱ抜かれた人物である。

 この件では、「(逮捕は必要ない)と決済した」と中村次長本人が週刊新潮の取材に認めている。

 ある警視庁幹部OBは、「中村さんが生き馬の目を抜くような警察官僚の世界で、順当に出世できたのは、まさに菅さんをはじめ官邸の後ろ盾があったから」と語り、今回の件についても苦笑いしながらこう感想を述べた。

「警察署がやっている強姦事件に、(警視庁)本部の刑事部長があそこまで露骨に乗り込んでくることは普通ではあり得ない。うまく官邸に恩を売ったなというのが正直な感想ですよ。今回の改名騒動で中村さんが暗躍していたとしても誰も驚きません」

 来春に迫った組織改編と改名。その頃には中村氏は警察庁長官となっているはずだ。

 マル暴刑事の総本山ともいえる警視庁4課の運命やいかに。

デイリー新潮取材班

2021年4月23日 掲載