競売妨害

 川崎大資(だいし)被告は2019年7月、「企業主導型保育事業」で助成金詐欺事件を起こして東京地検特捜部に逮捕された。川崎被告の妻と、「登記の魔術師」なる異名を持つ不動産ブローカー小野塚清氏の妻が、法廷闘争を繰り広げている。いったい何があったのか。

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 かつて、川崎被告は塩田大介という名前で不動産会社「ABCホーム」の会長を務めていた。政治家や芸能人など派手な人脈を誇った男が手がけたのが、東京・西麻布の会員制サロン「迎賓館」。ところが彼が脱税に問われ、ABCホームの経営も傾いたことから、08年10月、競売に付されてしまう。

 そこで川崎被告は、小野塚氏の手を借りて競売妨害を企て、迎賓館内の一室を増築して別の部屋として登記。所有はペーパーカンパニーで、小野塚氏自身が買取予約の仮登記を付けた。新たな権利者を登場させて一棟丸ごとでの競売を不可能にしたのである。

 しかし、警視庁の捜査で登記の魔術は見破られた。結果として、小野塚氏は不起訴、川崎被告は競売入札妨害罪で1年4カ月の実刑。判決に至るまでに、小野塚氏が妻名義で迎賓館を2億7000万円で落札しているが、以前から館内の「202号室」で暮らす川崎被告の家族はそのまま生活し続けていた。

 この202号室をめぐり、二人の男の妻同士が法廷で火花を散らしているのだ。

「追い出し工作」と「不法占有」

 川崎被告の代理人弁護士によると、立ち退きで揉めたこともあったものの、数年間は川崎被告側が月15万円の家賃を払うことで収まっていた。だがこの1、2年で「追い出し工作」が激しくなったという。

「夫人が外出できないように車庫の前に車を放置されたり、202号室のドアノブの鍵穴に接着剤を詰め込まれたりといった嫌がらせが始まりました。遂には昨年8月、小野塚さんの妻が川崎さんの妻を相手取り、建物の明け渡しとこれまでの家賃相当額6200万円超の支払いなどを求めた訴訟を起こしてきたのです」

 対する小野塚夫人の代理人弁護士は、「向こうは15万円の家賃を支払ってきたと言い張っていますが、それは不法占有による“損害金”として受け取っていただけ」と主張。追い出し工作も完全否定する。

 助成金詐欺事件の「詐欺師」と、登記のマジックを駆使する「魔術師」。それぞれの妻たちの闘いの結末は、なお見えてこない。

「週刊新潮」2021年3月25日号「MONEY」欄の有料版では、訴訟までの経緯と双方の主張を詳報する。

「週刊新潮」2021年3月25日号 掲載