先日ツイッターのトレンドワードに「開業医の不作為」が入りました。東洋経済オンラインに掲載された「新型コロナ医療崩壊の原因は開業医の不作為だ 国民に活動制限を強いるのはムダ弾で筋違い」という記事が話題になったためです。

 こうした「どういうこっちゃ?」と思わせる言葉は案外トレンド入りします。タイトルは各ネットニュースの編集者が付けますが、私が付けたタイトルで昨年話題になったのが「苛烈怒号」でした。

 この文字面だけを見ても一体何が何やら分からない。ただし何だかおどろおどろしい感じがするし、誰かが激怒している、ないしは「苛烈怒」号という船や宇宙船でも存在するのか、と思わせます。

 これは、NEWSポストセブンの「新型コロナ、自殺した職員らに帰国者から寄せられた苛烈怒号」という記事のものです。最初にコロナが発見された中国・武漢から帰国した人々を厚労省関連の寄宿舎に泊めた時の話です。記事内には「帰国者のメンタルも限界に。怒号が飛び交い、恐怖さえ感じる現場だった」とあり、内容を読むと「こりゃ苛烈だ……」と思ったため私は「苛烈怒号」と打ちました。

 するとこの言葉のインパクトにより、トレンド入りしたのです。今でも「苛烈怒号」をグーグル検索すると「読み方」とサジェストが出るほどです。

 他にも見出しとして優れているのは「痛烈批判」「奇々怪々」「号泣議員」「激烈爆発」「悶絶国会」などになりますでしょうか。

 また、別の記事で話題になったのが「よからぬあだ名」です。記事のタイトルは「悠仁さま、眞子さまを『よからぬあだ名』で呼ばれることも」で、文中の宮内庁関係者による「姉の眞子さまのことを“よからぬあだ名”で呼ばれることもあると聞きます」というコメントによるものです。

 編集者は、記事を一読し、「これが一番ネットでウケるはずだ」という単語がピンときます。私は「よからぬあだ名」は記事内の紀子さまと悠仁さまの「母子密着」よりも強いかな、と判断しました。

 皇室関連の記事って独特な言い回しがあるじゃないですか。本心はどうあれ、言葉を選んで「皆さん心配しています」風に着地させる、という……。回りくどい表現である「よからぬあだ名」はその典型例です。「ひどいあだ名」よりも圧倒的に強い。

 同サイトは最近でも「思春期の悠仁さま、荒々しい言動が目立つことも 眞子さま結婚問題も影響か」という記事のように、「荒々しい言動」という目立つ言葉を入れ、多数のアクセスを稼ぎました。

「強い言葉」について述べてきましたが、複数の編集者から聞いた最強の言葉は「小室圭さん」らしいです。内容が何であれ、小室さんの話題であれば何でも食いつきが良いとのこと。他に強いのは「ひろゆき」「ホリエモン」などに加え、インパクトある事件に関すること。最近では、東京メトロで男性に硫酸をかけた男についての記事に登場した「硫酸事件」「沖縄で確保」などです。

 日々悶絶苛烈な競争をするネットニュース編集の世界から降り、今は心穏やかに生きています。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年9月16日号 掲載