孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、60〜70代男性の孤独死が多い原因について聞いた。

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 孤独死する人といえば、一般的に年金暮らしの80歳以上の高齢者というイメージがあるかもしれない。しかし実際は、60〜70代の男性が最も多いという。

 東京都監察医務院の統計資料によると、2019年に東京23区で孤独死した人は5554人。このうち男性は3868人と70%を占めた。その中で、60〜70代は2238人。男性全体の半数以上がこの年代になる。

「人生100年と言われる今の時代は、60代、70代はまだまだ働ける年代です。それなのに孤独死が多いのは、不摂生をした生活をしている場合が多いからです」

 と語るのは、高江洲氏。

死後2週間経って発見された60代男性

「実際、特殊清掃の現場では、60代の孤独死が目立ちます。部屋の中はゴミだらけで、ビールや焼酎の空き缶、空き瓶が散乱しているものです。食事も自分で作らず、コンビニ弁当ですませていたようで、ゴミ袋に詰め込まれた弁当の容器がたまっています。栄養が隔り病気になるケースが多いです」

 こういう人は、体調が悪くなっても滅多に病院に行ったりしないという。

「体調が悪い時には市販の薬を飲んでその場しのぎをするため、根本的に病気は治りません。結局、アルコールによる肝硬変を起こしたり、不規則な食生活で糖尿病を悪化させ合併症を引き起こしたりして、命を縮めてしまうのです」

 定職があり、毎日規則正しい生活を送っていれば、それほど健康を損なうことはないという。

「毎日職場に行っていれば、体調が悪ければ仕事仲間が心配します。通勤する姿を見かけないと隣近所や大家さんが気にかけてくれます。けれども、部屋にこもって周囲との関りを持たず、酒浸りの不摂生な生活をしていたのでは誰も気づいてくれません。体調を崩して倒れても、助けを呼ぶことさえできずに亡くなってしまうというわけです」

 高江洲氏はつい先日、60代男性が孤独死した部屋を清掃したという。

「都内の6畳1間のアパートでした。男性は、死後2週間経って発見されたそうです」

 元々この部屋は、亡くなった男性の父親が借り主だった。

「父親は埼玉に住んでいたのですが、自分の会社の法人登録するために、倉庫も兼ねてこの部屋を借りていたのです。亡くなった男性は成人になった時、ここに住むようになったといいます。つまり40年以上、このアパートで一人暮らしていたことになります」

タバコのヤニ

 部屋には、警備会社の制服があった。

「警備員は、仕事を休んで連絡が取れなくなっても、会社の人が心配して自宅を訪ねたりすることはあまりありません。それで、発見が遅れたようです。男性は、家賃は月末に、近くに住む大家さんに直接手渡していたそうで、これまで支払いが滞ったことは1度もなかったといいます。ところが、月末になっても家賃を持ってこなかったので、不審に思った大家さんが部屋を訪ねたところ、亡くなっているのを発見したのです」

 部屋の真ん中には万年床があり、その上で男性は亡くなっていたという。

「部屋は、ゴミが足の踏み場がないほど散らかり、埃がたまっていました。蒲団のまわりには箪笥や卓袱台、テレビが置いてありました。ビールや焼酎の空き缶などが無かったので、お酒は飲んでなかったようです。しかし、かなりのヘビースモーカーだったようで、壁や窓、天井に至るまで、タバコのヤニでべっとりと茶色に染まっていました」

 キッチンを見ると、料理をした形跡はなかった。

「ガスコンロも、ほとんど使われた形跡がありませんでした。コンビニ弁当を買ったり、外食をしていたのでしょう。不摂生な生活を送っていたことがうかがえます」

 80歳以上の老人が孤独死するケースが60〜70代に比べて少ないのは、具合が悪くなると病院に入院するケースが多いからだという。

「お年寄りの場合は、普段から周囲が気にかけていることが多く、姿を見かけなくなると『どうしたんだろう』と心配されます。しかし60代くらいだと、しばらく姿が見えなくても『きっとどこかへ出掛けたんだろう』くらいにしか思ってもらえないのです」

デイリー新潮取材班

2021年9月21日 掲載