「大和売薬」でも知られているように、奈良県中部にある高取町は、昔から薬の製造・販売で栄えてきた町である。そんな土地柄もあってか、すでに町民の約83%がコロナワクチンを接種済みである。ところが、「薬の里」らしからぬトラブルが持ち上がっている。

 高取町役場の関係者が言う。

「コロナワクチンの接種は高取町保健センターで行われていたのですが、7月11日に接種を終えて調べてみたところ、注射器が1本余っているのが分かったのです。つまり誰か1人接種できてないということ。接種していないのに接種を終えたと勘違いしている人がいるかもしれません。しかし、接種済みシールは接種に来た人数と合っている。ということは、使い終わった注射器を、誤って次の人に使った可能性もある。注射針の再利用は、次の人に感染症をうつしてしまうリスクがあります」

 ワクチン接種では全国でさまざまなトラブルが起きている。大事なことは住民にそれが知らされたのかどうかだ。

「残念ながら高取町は、このトラブルをまだ公表していません」(同)

 確かに高取町のホームページを見ても、触れられていない。そこで中川裕介町長に聞くと、

「実際に、接種の現場には私も立ち会ったのですが、注射器が余ってしまった件については、接種を受けた方に問い合わせするなど対応に手を尽くしています。結局接種に来た高齢者の方が副反応が怖くなって帰られたのだろうという結論になった。わざと隠していたということではありません」

 だが、ワクチンを巡ってはもう一つの問題も起きている。

「7月16日のことですが、配布されたワクチン44本を接種会場に移す際、用意してあったフリーザーが家庭用だったため充分な冷凍保管ができないと分かった。接種回数にして264人分にあたりますが、そのまま打つと抗体ができない恐れがあったのに、再冷凍したものを接種してしまった。これも町は明らかにしていません」(別の関係者)

 町の新型コロナウイルス感染症対策本部に尋ねてみると、

「ファイザーに問い合わせたところ、運搬の時点でマイナス50度以下なら大丈夫との回答でした。接種会場にあったワクチンは充分に冷えており、問題はないと考えています」(担当者)

 との返事。高取町だけで起きている話なのか、それとも、あちこちの自治体で同じようなことが黙過されているのだろうか。

「週刊新潮」2021年9月23日号 掲載