「根拠の不明確なランキングで魅力がないという誤った認識が広がることは県民の誇りを低下させ、経済的損失につながる。内容を精査し、法的措置も検討する」──山本一太・群馬県知事(63)の発言が波紋を呼んでいる。

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 毎日新聞(電子版)は10月12日、「魅力度ランキングを群馬・山本知事が批判『法的措置も検討する』」の記事を配信した。

 冒頭に引用した山本知事の発言は、同日の記者会見で飛びだしたものだ。毎日に限らず、全国紙やテレビ局などが一斉に報じ、ご覧になった方も多いだろう。担当記者が言う。

「実は山本知事がランキングに噛みついたのは、今に始まった話ではありません。そもそも19年7月に知事選に立候補した際から言及していました。さすがに公約には掲げませんでしたが、マスコミの取材に『ランキングの低迷』を指摘。対策として『ブランド力の向上』を選挙戦で打ち出しました」

 知事に当選すると、さっそく20年9月の県議会で「ランキングには非常に不満がある」と発言。それが影響したのかは分からないが、翌月に「ブランド総合研究所」が発表したランキングで群馬県は40位となり、調査の始まった2009年以来、最高位となった。

 ところが、山本知事は全く喜ばなかった。むしろ批判を強めた。同月の定例会見では「調査に偏りがあるのではないか」と問題視し、「ランキングの名前を変えてもらいたい」と不快感さえ示した。

「信頼性がない」と批判

 会見の後、県庁内に検証チームを発足させたと発表。「対応策を講じるほど、ランキングに注目が集まる。相手を炎上商法的に利してしまうのでは」と再考を求める県内世論もあったが、「こういうランキングに都道府県が振り回されるのは好ましくないと以前から思っていた」と反論した。

 今年7月、調査チームは「魅力度を適切に示すランキングとは言えない」とする結論をまとめた。これを受けて山本知事は「社会的影響力の大きなランキングでありながら、手法が正確ではない。配点は不自然で信頼性がない」とこき下ろした。

 ブランド総合研究所は、調査に問題はないと反論。そして10月9日に2021年版が発表された。

「1位・北海道、2位・京都府、3位・沖縄県、4位・東京都と、ベスト4は常連の自治体が名を連ねました。変動したのは5位の大阪府で、前年より10ポイント上昇して調査開始以来最高位を記録しました。ワースト5は、42位が山口県と徳島県、44位・群馬県、45位・埼玉県、46位・佐賀県、47位・茨城県という結果になりました」(同・記者)

茨城と佐賀は大人の対応

 ワースト5のうち、2020年版も40位台だったのは42位の徳島県(前年46位)、44位の群馬県(同40位)、46位の佐賀県(同45位)、47位の茨城県(同42位)だった。

「過去5年間における群馬県だけの順位をピックアップしてみると、17年の41位から始まり、42位、45位、40位と推移して、今年が44位でした。意地悪な見方をすれば、山本知事は選挙でランキングを上昇させると発言したにもかかわらず、それが実現できていないわけです。そのためかどうかは分かりませんが、堪忍袋の緒が切れたのかもしれません。法的措置という過激な発言が飛びだしました」(同・記者)

 とはいえ、同じようにランキングで評価が低い自治体のうち、茨城県の大井川和彦知事(57)と佐賀県の山口祥義知事(56)は、いわゆる“大人の対応”だった。

「茨城県の大井川知事は『ランキング自体、賞味期限が切れてきた感じは若干ある』と皮肉を言った上で、県民1人あたりの所得が全国6位となった実績などを紹介し、『あまり痛くもかゆくもないというのが県民の本音』と余裕のコメントでした。佐賀県の山口知事も『気にしないでしっかり魅力を伝えていきたい』と前向きの発言でした」(同・記者)

Twitterでは批判が多数

 こうなると、どうしても山本知事の“強硬路線”だけが目立ってしまう。Twitterを検索してみると、「法的措置」発言には批判の声が大きい。

 特に山本知事の「器の小ささ」に対する指摘が相次いでいる。知事の姿勢に反対する意見をご紹介したいが、公平性を担保するため賛成意見も併記する。まずは反対意見からだ。

《山本知事さん、大人気ないですよ カリカリし過ぎちゃ、また魅力度下がります》

《山本一太だから群馬に魅力が無いって感じてるのでは? ランキングに対する言い掛かりが醜い。。。こんな知事だから仕方ないのでは?》

《態々そんな話題取り上げる方が如何なものか? 取り急ぎ取り上げるべき問題は無いのか?》

 次は賛成意見だ。

《あのランキング嫌いだから山本知事の言ってることに理解を示します》

《群馬県山本知事の気持ちも良く分かる。“魅力”の基準が曖昧。どちらかというと地名度ランキング要素が強いのでは?》

《山本知事のお気持ちも良く分かる。そもそも粗悪な調査設計に問題がある》

草津温泉は群馬県

「山本知事に批判的なツイートでも、県の結論と同じく『調査には問題がある』との指摘は少なくありません。実際、群馬県は観光地が充実していて、温泉大国として知られています。全国的な知名度を誇る草津温泉、伊香保温泉、万座温泉などが人気です。世界遺産に指定された富岡製糸場、県境に目を向ければ尾瀬国立公園に百名山のひとつ谷川岳と、全国有数の観光地だらけです」(同・記者)

 草津温泉は知っているけれど、群馬県内にあるとは知らなかった──こんな回答者が少なくないことは想像に難くない。ランキングに影響を与えている可能性もある。

 デイリー新潮は20年10月、「『魅力度ランキング』に栃木県知事が激怒 調査した『ブランド総合研究所』の正体とは?」との記事を配信した。放送コラムニスト・ジャーナリストの高堀冬彦氏の署名原稿だ。

言論弾圧の可能性

 記事の骨子をご紹介しよう。

▼20年のランキングで栃木県は最下位だった。福田富一知事(68)によると、調査の母集団3万2000人に対し、栃木県について回答したのは僅か600人に過ぎなかった。

▼知事はブランド総合研究所を訪問した際、「これでは精度が上がらない。もっと(調査する)人数を増やすべき」と指摘した。同社も人数を増やすことには前向きだったという。

▼「魅力度」の調査はブランド総合研究所しか行っていないが、「都道府県幸福度ランキング」は同社だけでなく日本総研(日本総合研究所)も実施している。しかし、結果には相当な違いがある。

▼20年の場合、ブランド総合研究所の「幸福度ランキング」で沖縄県は2位だが、日本総研では45位。宮崎県も前者では1位だったが、後者は40位だった。

「どの都道府県に魅力を感じるのかという問題は主観であって、客観性が求められる世論調査とは食い違って当然です。実施する組織で結果が違うのは当然でしょう。新聞社やテレビ局は『魅力度ランキング』を大きく報道しすぎだとは言えます。山本知事の『法的措置』発言も騒ぎすぎでしょう。下手をすると言論弾圧と言われかねません」(同・記者)

県庁の電話はパンク寸前

 群馬県庁に県民の反応について取材を依頼すると、「一時期は電話がパンク寸前でした」と言う。

「ひっきりなしに鳴り続け、とても件数を数えるどころではありませんでした。内容も多岐にわたっており、知事の法的措置という発言に賛成する内容もございましたし、反対するご意見もございました。職員も対応に忙殺されましたが、県民の皆さまがどれだけ群馬県のことを愛し、ランキングの問題を真剣に考えているかは充分に伝わってきたと受け止めております」

 実際に法的措置を講じるかどうかは、「あくまで検討すべき選択肢の1つだということです」と説明した。

「法的措置という言葉が独り歩きしている印象もあり、それには注意していきたいと思っております。その上で、まずは弁護士にどんな対応が可能か、相談をすることから始めることになると考えています」(同・県庁)

2021年10月17日 掲載