その店は看板に「餃子」と書いていなければ、コインランドリーと間違えそうである。店員はいないし、レジもない。店内で立ち尽くしていたら、カップルが入って来て冷凍庫から餃子のパックを取ると料金箱に千円札を突っ込んだのである。今流行りの餃子の無人販売だ。

 読売新聞に一風変わった全面広告が掲載されたのは11月17日のこと。

〈「日本は、いい場所だね。」〉

〈児童養護施設に無料で餃子をお届けします。〉

 大きな日の丸の左下には「餃子 雪松」とある。

 フードジャーナリストによると、

「雪松は冷凍餃子の無人販売の大手です。売っているのは36個入りの冷凍餃子のみで、値段は1袋千円。支払いはお金を料金箱に入れるもので田舎の野菜の無人販売と同じ。コロナ禍のテイクアウト需要に乗って、大きく売り上げを伸ばしています」

 そこで「餃子の雪松」を運営する(株)YESの高野内謙伍氏(マーケティング担当)に聞いてみた。

「当社は群馬県みなかみ町にある中華の名店『雪松』が発祥です。3代目の店主が高齢になり、2016年に後を継ぐことになったのが店主の甥にあたる現代表(長谷川保氏)でした」

 経営者が代わったことで雪松は新ビジネスに乗り出す。3年前から支店を出して餃子の販売を始めたのだ。

「当初は店内飲食もあったのですが、行列ができてしまい近所迷惑になる。そこで12店目から無人販売に切り替えたのです。セルフレジも検討しましたが、お金もかかる。社内からは盗難を心配する声もありましたが、結局、田舎にあるような無人販売でいこうと決めました」(同)

料金箱で起きた“事件”

 それが当たって今や全国約280店舗である。で、なぜ読売に大きな広告を?

「実は、料金箱からお金を盗まれたことが殆どないのです。たまに残った品数とお金が合わないこともありますが、お客さんが餃子の数を間違えてしまったと解釈しています。広告を出すきっかけは料金箱で起きた“事件”でした。お客さんがお金を箱に入れた際に詰まってしまい、後から来たお客さんの代金がどんどん積みあがってしまった。でも、誰も盗らない。監視カメラで発見して慌てて回収に行きましたが、長谷川が“こんな商売ができるのは日本ぐらいだ!”と感動し、大喜び。恩返しに児童養護施設への餃子の無料提供を始めました。そのことを皆さんに知ってもらいたいと大々的に新聞広告を出すことにしたわけです」(同)

 広告料は1千万円以上かかったそうで、もちろん餃子のPRも兼ねている。日本は自動販売機の普及率でも世界一。無人でモノを売るのは得意技なのだ。

「週刊新潮」2021年12月2日号 掲載