24時間営業を自主的にやめ、一躍脚光を浴びたセブン-イレブン東大阪南上小阪店の元オーナー、松本実敏さん(60)。その後、セブン本部に契約を解除されたのは不当として、取引再開を求めた訴訟を起こしていた。

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 松本氏は元々工務店を経営していた。2008年9月のリーマンショックの影響で工務店を辞め、2012年、セブン-イレブンの店主となった。ところが、人手不足が慢性化し、自身の過重労働が続いたため、2019年2月から時短営業に踏み切った。するとセブン側は同年12月、7年7カ月の間にお客からのクレームが336件もあったことを理由に、契約を解除したのだった。

 松本氏は店舗の明け渡しを拒否し、2020年2月、店主としての地位確認や契約解除の無効などを求めて大阪地裁に提訴していたが、今年6月23日、その請求が棄却されたのである。

「私の弁護士は、無茶苦茶な判決と言っていますよ」

 と語るのは、松本氏。

100人の支援者

「セブン側の言い分だけが通って、こちらの主張は何ひとつ通らなかった。セブン側は336件のクレームのうち、60件ほどに絞って提示しました。それに一つひとつ反論していったのです。するとセブン側は、それ以外のクレームも取り上げて、こんなのもあったでしょうと。卑怯なやり方ですよ」

 クレームが出たのは、お客の方にも問題があったからだと主張する。

「レジ待ちで順番通りに並ばない客に注意したら逆ギレされて、それで『出ていけ!』と言ったこともありました。ちょっと注意しただけで胸ぐらをつかまれたり、ツバを吐きかけられたり……。ケンカになったことも何度かありました」

 買い物をしないのにコンビニの駐車場に無断駐車する者も沢山いたという。その度に注意すると、クレームとして本部に通報された。箸を使うものを買っていないお客に、箸を4膳要求されたので2膳だけ渡すと、本部にクレームが行ったことも。

「判決では、お客も悪いところがあるが、セブン-イレブンのブランドイメージを悪くしてはいけないと言われました。裁判長はセブン側に立っているとしか思えません」

 それでも24時間営業というコンビニのあり方に一石を投じたとして、松本氏のもとには多くの支援者が集まった。

「判決のあった日の夜に支援者たちと打ち上げを行いました。100人ほど集まりました。多くは労働組合の人で、弁護士、学者、ジャーナリストもいます」

人間らしい生活

 セブンの運営本部は2021年5月、東大阪南上小阪店の敷地内に直営の「セブン-イレブン東大阪店(仮店舗)」の営業を開始した。プレハブ造りで、松本氏の店舗より小ぶり。なぜか警備員が常駐している。

「私にとっては嫌がらせとしか思えません。知り合いのセブン本部の社員によると、あまり客は入っていないようで、日販(1日の売り上げ)は30万円くらいだそうです。私が店主だった頃は60万円でした」

 コンビニの仕事を離れて、松本氏は今、なにをしているのか。

「以前はウーバーイーツや工務店でリフォームの手伝いをしていました。現在は障害者施設で、送迎の仕事をしています。住まいも、店の近くに借りていたマンションを引き払って、東大阪市内にある実家で暮らしています」」

 休日には、登山をするという。

「近くに生駒山があるので、よく登っています。あとは趣味のウオーキングをしています。旅行もするようになりました。九州に親戚がいるので、昨年6月、息子と二人で車で2週間かけて旅行。車中泊もしました。コンビニで働いていた頃は365日24時間営業ですから、旅行なんかできなかったのですが、いまは規則正しい、人間らしい生活を楽しんでいます」

 松本氏は今後も、法廷闘争を続けるつもりだ。

「弁護士も呆れるような判決が出たので、これまで以上に力を入れて戦うつもりです。最高裁まで、とことんやりますよ。時短営業をしたことで、24時間営業を見直すコンビニがでてきました。全国には人手不足で24時間営業ができない店が沢山あります。ここで裁判をやめてしまうと、また24時間営業に戻ってしまう可能性があるからです」

デイリー新潮編集部