東大卒で日経記者歴31年という肩書を武器に、大学教授の座を手にした男には“前科”があった。世を騒がせた帝京大学のセクハラ騒動。教え子たちが明かす問題教授の素顔とは。
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「先生をおとしめるために告発したのではありません。僕のような被害者が出ないよう注意喚起のつもりでしたが、反響に戸惑っています」
そう話すのは、帝京大2年の男子学生・聖奈(せな)さん(19)。既報の通り、同大経済学部の江本伸哉教授(64)は、来年春から開講する3年次の演習科目(ゼミ)を志望した聖奈さんに、セクハラ発言を連発。面接前からメールで〈女子学生さんですよね? たまに女子みたいな男子もいますので、念のため。歓迎いたします。男子には内緒ですが、女子は基本的に応募=採用です〉と発言し、聖奈さんが男だと分かった途端、面接で、
「女だと誤認したのは僕のミスだけどさ。でも、そりゃしょうがないわな、あんな名前なんだからさ」
などと開き直ったのだ。
「そういう奴は好きじゃない! なめんなよ!」
一連のやり取りが11月21日、SNS上で暴露されると帝京大は当該ゼミの募集を停止。調査委員会で事実関係を明らかにするとした。
だが、江本教授の威圧的な面接はこれにとどまらなかった。公開されたのはごく一部で、実は約30分にもわたって暴言は続いていたというのである。
聖奈さんが明かすには、
「募集条件に“スポーツが好きな学生”と大文字で強調されていたので、志望動機を聞かれた際に話題にしたら、『いきなりスポーツか。そういう奴は好きじゃないんだよ。なめんなよ! 今までみんな落としてきた』って、机を叩きながら激昂されました。要は女子ではなく男子だから、露骨に嫌われていると感じましたね」
キャンパスに目を転じれば、更なる悪評が方々から聞こえてくるのだ。
突然の体罰
さる帝京大生に聞くと、
「江本教授は自分が決めたルールに反すると怒るタイプ。授業中のスマホは禁止と常々言っていて、それでもいじる学生を見つけると“お前、なにしてるんだ”って頭をパーンッと平手打ちしたことがありました。突然の体罰に、教室中の学生がビックリしていました」
別の学生はこうも言う。
「江本先生の連絡用メールアドレスは『ノブエモン』ですが、学生の誰からもそう呼ばれていなかった。人の情を感じないというか、どこか話しかけづらいオーラがありましたね……」
授業では日経新聞出版の『池上彰のやさしい経済学1・2』をテキストとして指定し、古巣への愛着を示していたという。
江本教授は東京大学経済学部を卒業後、日経新聞に入社し北九州支局長などを経て50代半ばで早期退職。九州国際大などで教員を務めた後、3年前帝京大教授に就任した。取材現場を離れて“先生”ともてはやされ、天狗になってしまったのかもしれない。
当の江本教授の携帯にかけると、「ご取材は大学広報にお願いいたします」とメッセージが返ってくるのみ。
帝京大本部広報課は、
「現在、事実確認を行っていますので、回答は、控えさせていただきます」
新聞記者の転身先として「大学教授」は人気だそうだが、大学側も肩書ではなく“人物本位”で採用か否かを見極めるべきでは。
「週刊新潮」2022年12月8日号 掲載