近隣住民に警察から電話
事件発生から2ヵ月――。有名大学教授をターゲットとする凶行に及び、行方をくらませていた“犯人”は、あまりにも意外な形で“発見”された。その男の自宅周辺には規制線が張り巡らされ、閑静な住宅街は物々しい雰囲気に包まれている。近隣住民はこう語る。
「今日(2月1日)になって初めて警察の人がやって来て、いきなり規制線を張り始めたんです。さすがに驚きましたよ……。何軒かのご近所さんには昨日、警察から電話があったみたい。“事件”のことには触れず、あのご家庭について訊ねられたそう。ただ、ニュースで報じられた“息子さん”は、とりわけご近所との付き合いがなくて、存在自体を知らない人も多いと聞いています」
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昨年11月29日の午後4時過ぎ、東京都立大学の南大沢キャンパス内で、同大学の教授である社会学者・宮台真司さん(63)が何者かに襲われる事件が発生した。宮台さんは背後から首や顔などを刃物で切りつけられて全治1ヵ月の重傷を負ったが、一命を取り留めている。残された問題は、まだ日が暮れる前のキャンパス内で、流血沙汰の大事件が発生したにもかかわらず、一向に“犯人”が逮捕されないことだった。
社会部記者によれば、
「著名な人物を狙った襲撃ということでは、安倍晋三元総理の銃撃事件が記憶に新しい。これ以上、同種の事件で模倣犯を出さないためにも、警視庁には宮台さんを襲った犯人の早期逮捕が求められた。今回の事件は捜査1課が殺人未遂容疑で捜査を進めていたが、思想犯の可能性を考慮して公安部が動いていたとも囁かれました。ただ、懸命な捜査が続いたものの、現場を後にした犯人が住宅街を抜けて逃走してからの足取りは掴めていなかった」
事実、警察の威信をかけた捜査は難航を極めた。
「警視庁は昨年12月12日に公開捜査へと踏み切り、現場から立ち去る男の防犯カメラ映像を公開しました。男は身長180〜190cmで、オレンジ色のニット帽をかぶり、着衣は上下とも黒。同日中に数十件の情報提供が寄せられましたが、犯人の特定には至らず。その後、警視庁はこの男が事件前に捨てたペットボトルを回収し、DNA型を採取していますが、データベースに登録はなかった。そして、今年1月27日には自転車に乗って川沿いを走る男の映像を新たに公開したのです。事態が動いたのは、その直後でした」(同)
犯人の乗っていた“自転車”がカギに
警視庁は男が乗っていた自転車に注目し、車種を特定した上で購入者を洗い出したという。その結果、
「1月30日にひとりの購入者に辿り着き、警視庁が確認したところ、昨年12月16日に自殺した無職の男の存在が浮上しました。その男が今回の犯人の可能性が高いと判断されたのです。死亡時に41歳だった男は、事件現場から約9キロ離れた神奈川県相模原市内の自宅で両親と3人暮らし。付近にある別宅で首を吊っているところを母親が発見しています。自宅からは全長約30cmのオノが見つかり、これが宮台さんを切りつけた凶器だったと考えられます。警視庁は容疑が固まり次第、容疑者死亡のまま書類送検する方針です」
男の遺書には宮台さんに関する記述はなかったが、事件当日以降、様子がおかしかったという。
「警視庁が映像を公開した4日後に自殺しているため、捜査の手が自らに及ぶと考えて死を選んだ可能性もある」
別宅に住み、食事だけは実家で
宮台さんはこの男と面識がなかったとされる。では、これほどの事件を起こした男とは、一体何者なのか。別の近隣住民はこう明かす。
「あのご家族が引っ越してきたのは30年ほど前かな。お父さんは下水道関連の仕事、お母さんは事務員をしていると聞いたことがあります。お子さんは3人いて、お姉ちゃん2人に、末っ子の長男。その長男が今回の事件の“犯人”だと報じられている。お姉ちゃんたちは実家を出ていて、たまに孫を連れて帰省していた。ただ、長男だけがね……。学校を出た後も、病気があるとかで定職には就いていなかったと思います。親子3人暮らしと言っても、ここ最近は、実家近くにある別宅に息子さんは住んでいて、ご飯のときだけ実家に戻っていたみたいです」
犯人と目される男は、いつものように食事で自宅に顔を出さないことを不審に思った母親が別宅を訪れ、発見されている。
「息子さんはほとんど“ひきこもり”に近い生活で、普段からほとんど見かけないので、防犯カメラの映像を見ても、正直、全く気付きませんでした。とにかく無口で大柄な人という印象で、たまに自転車に乗っているのを目にするくらい。最後にすれ違ったのは去年の11月頃ですが、そのときも自転車に乗っていました。大それた事件を起こすとは思いませんでしたけど……」
そんな男が、なぜ宮台氏を襲ったのか。本人の口から動機が語られる機会は永遠に失われてしまった。
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「週刊新潮」および「デイリー新潮」では、この事件についての情報を募集しています。下記の「情報提供フォーム」まで情報をお寄せください。
情報提供フォーム: https://www.dailyshincho.jp/confidential/
デイリー新潮編集部