ルービックキューブといえば、立方体の6面の色を、両手を使ってくるくると回しながら揃えてゆくパズルゲームのこと。1980年に発売されるや、当時日本で一大ブームを巻き起こし、社会現象にまで発展したことをご記憶の向きも多かろう。そんなルービックキューブが、発売から40年以上の時を経た今、再びの大ブームが到来しているという。
子供達の間で人気
そもそもルービックキューブとは、ハンガリーの首都・ブダペストで建築学を教えていた、エルノー・ルービック氏が、1974年、学生達に3次元幾何学を教えるために作ったもの。これが評判を呼び、1977年にまずハンガリーでパズルとして発売されて人気を博し、日本には1980年に上陸。初年度で400万個という驚異的な出荷数を叩き出し、大ブームを巻き起こした。しかしそのブームも40年以上前のこと。それが今再びの人気? 家電量販店のおもちゃ売り場でルービックキューブを吟味していた30代の母親と小学生の親子に訊いてみた。
――今日はルービックキューブを買いに?
母親 はい、子供が欲しいと言うもので。学童クラブ(放課後、小学生を預かる施設のこと)で大流行中で、家で自分もやってみたいと言うので……。
小学生 学童でみんなやってるよ。全部揃えられるとかっこいいってなるんだ。だから自分も家で練習したいと思って。
大変ありがたいことに
都内の玩具店の広報担当者が言う。
「もう、本当に飛ぶように売れています。買っていかれる方は、若い方から、お年寄りまで本当に全世代の方ですね。うちの年間売り上げランキングで、必ずトップテン入りするほど、人気商品の一つです。確かに、ブームが来ていることを感じます。子供から大人まで楽しめますし、値段もそんなに高額ではありませんからね」
果たしてルービックキューブ、本当にブームが来ているのか――。発売元であるおもちゃメーカー「メガハウス」を訪ね、真相を伺った。
――実際に「ルービックキューブ」は売れている?
トイ事業部 板垣さん(以下、板垣) はい、大変ありがたいことに、今まさに、絶好調です。ルービックキューブは、発売初年度に400万個という販売数を記録したのですが、その後ブームはすぐに落ち着き、年間の累計出荷数は、数万〜多くても10数万といったものでした。ところが、ある年に、急激に出荷数が増えたことがありました。
歴代3位の出荷数
――それはいつのこと?
板垣 2007年になります。この年のシリーズ累計出荷数は90万個で、初年度に続く第2位の記録になります。この時のヒットの要因は、脳トレーニング、いわゆる脳トレブームが到来し、脳に良いとされるクイズ本やグッズ、ゲームがヒットしたんですね。そんな中で、ルービックキューブも脳に良いのではないか、と、見直されるようになったのです。また、その前に、ルービックキューブを揃えるだけでなく、その速さを競う競技団体が誕生し、日本を含む世界中で大会が行われるようになったのも、要因の一つだと考えられています。
――そして今回、また再び。
板垣 その後また落ち着いたのですが、2020年度に60万個、2021年度には62万個、そして、まだ確定していませんが、今年度は70万個を超える見込みとなっております。確定すれば、歴代3位の出荷数となります。
攻略動画を制作
――ブーム到来の要因として何が考えられるのか。
板垣 さまざまな要因が重なってのことではないかと思いますが、まず、2020年がターニングポイントだったかと。この年、発売から40周年のアニバーサリーイヤーということで、さまざまなイベントや企画を考えていました。ただ、コロナ禍と重なり、なかなかリアルなイベントができなかった。それでも、盛り上げなければということで、公式サイトに、ルービックキューブの攻略動画を公開しました。これを見れば、誰でも全面揃えられるように、かなり丁寧に作ってみたんです。お陰様でかなりご好評いただきました。
――他には。
また、コロナ禍で、家に籠もる時間が増える中で、ルービックキューブに取り組んでみよう、という方も多かったようです。また、この年は、ルービックキューブの生みの親であるエルノー・ルービックさんの母国であるハンガリーの日本大使館ともコラボレーションさせていただき、ハンガリー大使館制作のルービックキューブを取り上げた動画も話題になりました。
商品の魅力が強い
――厳重な外出制限などがなくなった後も、好調が続いている。
板垣 2020年以降、スタンダードなルービックキューブだけでなく、パネルの色が変化する難易度が高いものやゲームシリーズなど、さまざまな種類の商品を発売し始めました。その結果、店頭でも大きく展開していただけるようになったのも、人気を後押ししてくれています。それ以外にももちろん、色々な要因が考えられます。YouTubeなどで、6面をものすごい速さで揃える動画が多数投稿されていて、そのどれもが数百万といった再生数を記録しています。変わった揃え方を丁寧に解説する動画や、ブロックで作られた、自動で全面を揃える機械を紹介する動画も人気のようです。そうした動画が人気に火をつけている要因の一つにもなっているかもしれません。
――そもそも、ルービックキューブがなぜここまで長い間、愛されているのか。
板垣 月並みですが、商品の魅力が強いのではないかと。ルービックキューブは、ルールがわかりやすく、デザインも古びないし、揃えた時の達成感も味わえる。世代を超えて遊べるので、コミュニケーションのきっかけにもなります。揃えると、周りから「すごい!」と言ってもらえますしね。これからも、多くの人にルービックキューブの魅力を伝えていきたいですね。
デイリー新潮編集部