強盗の方へスライドした

 全国で相次ぐ一連の広域強盗殺人・致傷事件。指示役を担ったと見られる容疑者らはフィリピンで収容所の中の自由を謳歌していたが、今後日本の司法で裁かれるのは必至の状況となった。ルフィなどを名乗る彼らが強盗殺人の教唆をしたと日本の裁判所が判断すれば、死刑か無期懲役のいずれかが下されることになる。ルフィらのさらに上部組織に手を伸ばしたい捜査当局は、指示役らの暴露に期待しているという。

「日本の警察当局は2019年の特殊詐欺事件(60億円規模)などに関わったとして、渡邉優樹、小島智信、藤田聖也、今村磨人の4容疑者の逮捕状を取っており、身柄を引き渡すようフィリピン側に求めていました。遅かれ早かれ全員が日本に強制送還され、逮捕されることになるでしょう」

 と、社会部デスク。

「ルフィこと渡邉容疑者らは特殊詐欺で荒稼ぎをしてきたところ、ここ最近は思ったほどお金が集まらず、手っ取り早い強盗の方へスライドしたと見られています」(同)

特殊詐欺対策を進めた結果が

 強盗の方が手っ取り早いとはどういうことか。

「2度、3度とダマされる人もいますが、そういった人は本当に限られているし、既にダマされていてお金をそれほど持っていない場合が多い。ダマされそうな人や富裕層の名簿なり個人情報なりが出回っていると言っても、電話をかけ続けてターゲットを引き当て、それなりのお金を得るまでに時間も労力もかかって効率が悪い。ならば暴力で奪ってしまおうという発想ですね」(同)

 ルフィらが強盗への転向を余儀なくされたのは、警察が特殊詐欺対策を地道に進めてきた成果が出ていると言えるのかもしれない。

「ただ、一連の強盗事件では殺害されたり殴られて意識が戻らなかったりというケースが出ています。警察の最高幹部としては、”特殊詐欺対策は間違っていなかったとはいえ、詐欺グループの一部が強盗団として暗躍していることになぜもっと早く気付くことができなかったのか”と忸怩たる思いを抱えているようでした」(同)

 そういった思いを抱える捜査当局が、全容解明にしゃかりきになるのも当然だろう。

強盗殺人か強盗致死罪

「東京・狛江市で起きた強盗殺人事件では、90歳の住人女性が両手を結束バンドで縛られ、殺害されていました。その前に、指示役と実行役との間で、“老人とか気にせず殴れるか?”“タタキ(強盗)経験は?”などと、リアルなやり取りが交わされていたようです」(同)

 同じ指示役のものとされる昨年12月の広島市での事件では、経営者の男性が頭を殴られて意識不明のままだ。

「これらを前提にすると、この事件に関与した実行役はもちろん強盗殺人か強盗致死罪で、そして指示役も教唆をしたとして同等の罪で起訴される可能性があります」(同)

 強盗殺人と強盗致死の違いは殺意の有無だが、法定刑は「死刑または無期懲役」しかない。

「一方で殺人罪は、”死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役”と定められています。有期刑があるということで、殺人罪と強盗殺人・強盗致死罪では刑罰の重さが相当に違うわけです。他人の所有物を無理やり奪おうとする行為は極めて野蛮だと捉えられ、抑止力に期待しているということでしょう」(同)

ルフィの良心に訴えかける

 指示役と実行犯、どちらの罪が重くなるのか。

「今回の強盗事件に関して言うと主従関係は明らかですから、実行役への刑は指示役よりも軽減される可能性はあると思います。ただ、経済的に困窮していて金品を奪うことを最初から目的にしている点、被害者宅や店舗に高額の財産があることをあらかじめ察知して押し入っている点もまた明らかなので、強盗殺人が成立する可能性もまた高いでしょうね。指示された方が無期懲役なら、現時点で1人の生命を奪い、もう1人が意識不明の重体となると実行役には死刑の求刑、そして死刑判決もあり得ます」(同)

 捜査当局はそれを上部組織の実態把握、そして摘発の起点にしたいと考えているフシがある。

「無期懲役は事実上、終身刑化していますから、“一生出られない”という点を突いて、“いっそのこと洗いざらい話してみないか”とアプローチすることはあるでしょう。渡邉容疑者らが上部組織に指示を受けて上納していた可能性もかなりあり、犯罪組織を一網打尽にするためには彼らの自供が喉から手が出るほど欲しい。司法取引的に罪状を大幅に軽くすることはできませんが、“自分たちだけが罪をかぶってたまるか”とか“死なばもろとも”という気持ちに訴えかけるということですね」(同)

 警察の威信をかけた捜査が始まる──。

デイリー新潮編集部