除名処分となったガーシー(本名・東谷義和)前参議院議員に対する“包囲網”が急ピッチで狭められている。ここに来てガーシー容疑者も初めて“弱気”の発言を見せるなど、警察当局との攻防は大きな山場を迎えようとしている。

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 3月24日、警視庁捜査2課は兵庫県伊丹市にあるガーシー容疑者の実家を家宅捜索。YouTubeなどの動画投稿サイトを通じて俳優の綾野剛氏らを脅迫した暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)や名誉棄損容疑によるものだった。

「東谷容疑者は動画配信で得た収益の大半を日本のネット銀行を介して妹名義の口座に入れていたとされ、かつて妹が住んでいた実家の捜索が捜査に不可欠と警視庁は判断。妹はすでに出国していて、現在は東谷容疑者と同じUAE(アラブ首長国連邦)に滞在しているといいますが、2021年12月まで東谷容疑者もこの実家に住民票を置いていました」(全国紙警視庁詰め記者)

 この“急襲”を受け、すぐに自身のSNSを通じて「頼むから、オカンは勘弁してください、ホンマに。僕がYouTube始めたのはドバイ行ってからです。実家に何かあるわけない。私物は全部ドバイに持ってきた」と涙ながらに訴えたガーシー容疑者。

「当局の狙いは動画で得たお金の流れを解明することです。“犯罪収益”と認定できれば、関連口座の凍結や有料サロン『GASYLE(ガシる)』の収益にもメスを入れることが可能になる。東谷容疑者は除名処分後、“一生帰国しない”と宣言しているため、海外での逃亡生活を物理的に困難にする“兵糧攻め”に向けた準備と囁かれています」(同)

強制送還に立ちはだかる壁

 すでに警視庁は3月16日に逮捕状を取得し、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配する意向だ。また外務省も23日、旅券返納命令を出し、4月13日の期限までに応じなければガーシー容疑者の旅券は失効することになる。

 神奈川県警国際捜査課に籍を置いた経験を持つジャーナリストの小川泰平氏が話す。

「今後の展開としては、パスポートの失効とともに外務省はビザ無効の要望書をUAEに出し、UAEが応じれば東谷容疑者の滞在は“不法”となります。ただし強制送還には現地警察がガーシーを逮捕する必要があるため、UAEの協力なくして帰国させることは不可能。UAEの出方は現時点で不透明なため、東谷容疑者が宣言通りに逃亡を続ける可能性は大いに残されています」

 さらにこう続ける。

「私が得ている情報では、外務省はドバイの東谷容疑者の住所を特定済みでした。それもあって東谷容疑者は今月16日に“引っ越しします”とSNSで配信したと見られます。東谷容疑者の周囲には逃亡をサポートする支援者の存在も指摘されていますが、基本的に犯人隠避罪は国内における行為を問うもので、今回は適用するのは難しい。警視庁は外堀を徐々に埋め始めていますが、東谷容疑者を追い詰めるのはそれほどたやすくはありません」(同)

過去には「自殺」に「射殺」の事例も

 一方で、ある捜査関係者は「仮に国外逃亡を続けたとして、その最期は悲惨なものも少なくない」と話す。

 03年に東京都奥多摩町で男性(当時26歳)の切断遺体が見つかった事件で、警視庁は直後に国外逃亡した主犯格の男と紙谷惣被告(48)を殺人容疑などで国際手配。紙谷被告は20年、逃亡先の南アフリカの日本大使館にみずから出頭して「カネがなく、生活が苦しいから帰国したい」と訴えた。主犯格の男は17年に同国の海岸で遺体となって発見され、「迷惑をかけた」といった趣旨の遺書が残されていたことから自殺と見られている。

「他にも、全国で5000人以上から約63億円を不正に集め、出資法違反に問われた競馬ファンド『東山倶楽部』元役員で主犯格の男は07年の家宅捜索直後に海外逃亡。当時、“唸るほどのカネを持って逃げた”と言われたが、16年に逃亡先の香港で死亡していたことが後に判明した。他にも1970年代に愛知県で起きた殺人事件では、容疑者がブラジルに逃亡したものの、協力者の裏切りに遭ってアマゾンの奥地で現地警察に射殺されたケースもある。お金を持っていても、孤立すれば居場所はなくなり、困窮したり逃亡が頓挫するケースは多い」(捜査関係者)

 しかし、前出の小川氏は「ガーシー容疑者のように有名人で周囲に仲間もいるケースは例外だ」として、長期間の逃亡も可能との見方を示した。とはいえ、逃亡生活がいま以上に「快適」なものになるとは思えず、包囲網をかいくぐるのはそう簡単でないようだ。

デイリー新潮編集部