“登院拒否”でついに参院を除名されてしまったNHK党(現・政治家女子48党)のガーシー議員(51)。除名翌日には警視庁が逮捕状を請求し、国際指名手配までささやかれる事態に。選良から一転、国家権力をも敵に回したガーシー劇場は、ここから新たな展開に突入する。
男性芸能人に女性をあてがう“アテンダー”から登録者数100万人を超えるユーチューバーに。さらには昨年7月の参院議員選挙で約30万もの票を獲得して参議院議員となった、ガーシーこと東谷義和氏。昨年2月に突如、芸能界の裏話を暴露する動画をアップし始めて以降、たった数カ月のうちに特権階級にまで登り詰めたが、転がり落ちるのも早かった。
今月15日、当選から一度も国会に出席せず、「議場での陳謝」にも応じなかったことから参院を除名され、議員の資格とともに「不逮捕特権」も喪失。翌16日には警視庁がガーシー氏の逮捕状を請求し“追われる身”となったのだ。
全国紙記者によれば、
「逮捕状の容疑は、俳優の綾野剛氏ら著名人に対する脅迫や、ジュエリーショップを経営する男性に対する強要、名誉毀損、威力業務妨害など。すでに日本国内の関係先には家宅捜索も行われており、警視庁は再三、ガーシー氏本人にも任意聴取を打診してきた。ところがそれもほごにされ続けたのです」

「ことは簡単に運びそうもない」
すぐにでもガーシーの身柄を取りたい――。除名翌日の逮捕状請求には捜査当局のそんな思いもにじむが、彼のその時を待ちわびるのは捜査員ばかりではない。
“ガーシー砲”の一番の被害者と目される綾野剛もその一人。綾野の知人によると、
「剛は一貫してガーシーの“暴露”が事実無根だと話し、警察の事情聴取にも協力してきた。ガーシーが逮捕され、刑事裁判が始まった暁には“逃げも隠れもせず堂々と証言する”と覚悟を決めていますよ」
もっともガーシー氏に悪びれる様子は全くない。16日には、滞在するアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで新たな動画を配信。
〈俺が何した? 芸能人の暴露しただけ〉〈一生帰国しないことを覚悟できました〉
と、徹底抗戦の構えを見せたのだ。
「警察当局は外務省にガーシー氏への旅券返納命令も要請。命令が出され、ガーシー氏が帰国に応じなければ彼のパスポートは失効することになります。普通はこれにより不法滞在となり、滞在国が強制送還をする流れになるのですが、ことはそう簡単には運びそうもありません」(全国紙記者)
UAEのお国柄
“ガーシー逮捕”への壁の一つに挙げられるのが、UAEのお国柄だ。
日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究員で、自身も昨年10月まで6年間にわたってドバイで暮らしてきたという佐藤佳奈氏は、
「日本はUAEから大量の石油を輸入しており、これまで良好な関係を築いてきました。ただ、UAEは基本的に他国の内政には干渉しないというスタンスを取っており、犯罪人の引き渡し条約も結んでいない日本の捜査に積極的に協力してくれる保証はないのです」
この内政不干渉は、実はあるスジの人たちには有名。
「日本に限らず、世界中の政治犯などが亡命先としてドバイを選んでいる。さらに、マレーシアやシンガポールのビザ要件が厳しくなってきたため、お尋ね者になった日本人がUAEに流れてくるという現象も起こっています」(同)
UAEにとってみれば、数多(あまた)いる犯罪者の中からわざわざガーシー氏だけを選んで送還する理由もないというわけだ。

UAE女性と結婚すれば…
また、ガーシー氏は、UAEで「ゴールデンビザ」を取得したことを明かしているが、このビザも曲者(くせもの)。
「UAEには普通のビザの他にグリーンビザ、ゴールデンビザと3種類のビザが存在するのですが、ゴールデンビザだと10年間の滞在が認められる。UAE国内で生活する限りパスポートを確認されることはありませんから、理屈の上ではパスポートが失効しても10年間は生活できることになります」(同)
ガーシー氏が日本の司直の手を逃れる術は黄金のビザだけではない。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏いわく、
「例えば、昨年7月にドバイでガーシー氏と会談して話題になったタイのタクシン元首相は、2006年のクーデターで国を追われ、現在はタイのパスポートが失効している。ただ、彼は他に10カ国以上のパスポートを取得し、各国を転々としながら亡命生活を送っています。世界には一定の納税額や投資額を満たせば永住権を取得できる国があり、お金さえあれば新たなパスポートを手に入れることも事実上可能なのです」
新たなパスポートという点では、こんなウルトラCも。イスラム研究者の宮田律氏によれば、
「例えばUAEの女性と結婚すれば、ガーシー氏はUAEのパスポートを取得することができる。そうなれば、UAEから別の国に逃亡することも可能になってしまいます」
ガーシー氏の強気は単なる虚勢ではなかったのだ。
ロンブー淳は取材に…
先の記者も、
「ガーシー氏はかねて自身が逮捕される可能性に言及してきました。現地には強力なスポンサーの影もちらつきますから、『不逮捕特権』という鉄の鎧に守られていた7カ月あまりの間に、対策は相当練ったのでしょう。もはや日本とUAEの政府間交渉で強制送還を実現させるしか道はありません」
ガーシー氏に“逃げ得”を与えるだけに終わった、まさに衆愚の選択。彼と親交のある“関係者”たちは、この状況に何を思うのか。
まずは、出馬を迷うガーシー氏の背中を押したと公言してきたロンブーの田村淳氏。都内の放送局で生放送を終えた田村氏を直撃したところ、さっそうと愛車に乗り込み、
「マネージャーに任せますんで!」
一方、ガーシー氏からコロナ禍でのパーティー参加を暴露され、永田町で唯一の餌食となった木原誠二官房副長官も、
「(ガーシー氏の身柄拘束については)興味ないです。はい、どうも」
ガーシー劇場の終幕にはまだ時間がかかりそうだ。
「週刊新潮」2023年3月30日号 掲載