各社調査で内閣支持率が軒並み2割台に下落する中、東京地検が自民党5派閥のパーティー券収入不記載問題で捜査を開始していたことが新たに明るみに。展開次第では政権にとどめを刺しかねない政局の火種は、「増税メガネ」の解散戦略にも確実に影響を及ぼすという。

 ***

 庶民が円安・物価高にあえぐ一方、「防衛増税」や「少子化対策増税」も待ったなしで、「増税メガネ」なる実に不名誉な異名を授かった岸田文雄総理(66)。内閣支持率は下落の一途をたどり、毎日新聞が11月18日・19日の両日実施した世論調査では前回より4ポイント低い21%と、内閣発足以来最低を記録したのである。

「岸田総理は増税メガネと呼ばれるのをかなり気にしているといわれています」

 とは政治部デスク。

「10月末、1人4万円の所得税・住民税の減税を来年実施すると発表。イメージ回復に躍起ですが、減税期間が1年間と限定的で、再び増税路線に回帰するに違いないと国民に見透かされている。結果、政権浮揚につながっていません」(同)

不記載額は安倍派が突出

 そんな総理をさらに窮地に追いやるといわれているのが、昨年11月の「しんぶん赤旗」の報道に端を発する自民党5派閥の「政治資金パーティー券収入過少記載問題」である。

 政治資金規正法は20万円を超えるパーティー券(以下、パー券)購入者の氏名や購入額等を政治資金収支報告書に記載しなければならないと定めているのだが、

「神戸学院大学の上脇博之教授が『赤旗』の報道を受けて独自調査を実施。すると、自民党5派閥の政治団体の収支報告書にパー券収入の不記載が多数見つかり、その額は総額で約4千万円に達していた。上脇教授は政治資金規正法違反容疑で、各団体の会計責任者らを東京地検に刑事告発しています」(社会部記者)

 その上脇教授の告発状によると、不記載額は清和政策研究会(安倍派)が突出しており約1900万円。以下志帥会(二階派)約900万円、平成研究会(茂木派)約600万円、志公会(麻生派)約400万円、宏池会(岸田派)約200万円と続く。加えて、

「11月24日公表の2022年分の政治資金収支報告書でも上記の5派閥のうち岸田派を除く4派閥と森山派、谷垣グループに、計200万円を超える不記載が新たに見つかっています」(同)

国民は生活苦でも

 国民の生活苦をよそに、自民党の政治家たちは高級ホテルなどでパーティーを催し、企業・団体や支援者個人にパー券の購入を強いる一方、その収入については法律に則って正しく処理してこなかったわけだ。しかし、なぜこれほど「不記載」が発生するのか。自民党関係者が以下のように解説する。

「企業・団体や個人がパー券の代金を支払う方法は大きく分けて二つあります。一つは購入者が直接、派閥のパーティー専用口座に代金を振り込む方法。もう一つが議員事務所が代金受領後、改めて派閥口座に振り込む方法です」

 まず前者のケースだが、事務処理の煩雑さから「不記載」が頻繁に起こってしまうのだという。

「同一の購入者が議員Aから10万円、議員Bから10万円、さらに議員Cからも10万円のパー券を購入したとしましょう。この場合、10万円がバラバラに派閥口座に入金される。そのため、実際の入金額は合計30万円でも、派閥の会計責任者らは同一の購入者が20万円を超えて入金しているとは気付かず、不記載で済ませてしまうのです」(同)

“裏金”として処理する方法が横行

 しかし、より問題なのは後者のパターンで、

「各派閥は議員にパー券のノルマを課している。議員がパー券を販売した売り上げの全額を派閥に納めた上で、派閥が寄付の形でノルマ超過分の売り上げを議員に戻し、そのことを収支報告書に記載すれば問題にはなりません。ですが実際は、超過分については派閥に入金せず“裏金”として処理する方法が横行していた」

 前出・社会部記者が言う。

「東京地検特捜部は水面下で、派閥のパー券を利用した“裏金作り”の仕組み解明に乗り出しています。すでに特捜部は各団体の会計責任者らに複数回、任意で事情聴取を実施。任意とはいえその聴取は苛烈なようで、担当者たちは一様に疲弊しているといいます」

弁護士の出入りが頻繁に目撃され…

 中でも特捜部が注目しているであろう事柄がある。不記載額が大きい清和会で、多額のパー券の売り上げを担う“ノルマ番付”議員と評されるほど集金力の高い政治家の存在、そしてノルマ超過分のカネの処理方法だ。

 清和会関係者が声を潜めて言う。

「清和会の場合、1回生のノルマは60万円。閣僚経験者になると400万円で最高額は750万円です。現在、最高額を納めているのは当選10回で清和会座長の立場にある塩谷立元文科相(73)と当選9回の下村博文元文科相(69)の二人です」

 無論、松野博一官房長官(61)を筆頭に高木毅国会対策委員長(67)、西村康稔経済産業相(61)、萩生田光一政調会長(60)、世耕弘成参院幹事長(61)ら「5人衆」のノルマ額も400万円を超えているとみられるが、

「5人衆の中には、ノルマ超過分を派閥に納めてこなかった人物がいるようです。対策を講じるためでしょうか、最近、自民党の顧問弁護士がその人物の事務所に出入りする光景が頻繁に目撃されています」(同)

 この点、清和会のさる幹部も次のように証言する。

「以前は、ノルマを超える派閥のパー券の売り上げ分については自分の事務所に入れるのが一般的でした。私自身はやっていませんでしたが、法令に則ってきちんと処理できていなかった議員もいたと聞きます。しかし、彼らもそれが違法だとの感覚はなかった」

裏金処理の告白

 また、清和会のベテラン議員も、

「ノルマ分はきちんと清和会に入れていましたが、ノルマを超えた分のパー券の売り上げについては、自前の政治団体や政党支部に入れるのが普通でした。というのもノルマを達成できない時だってあるわけです。そうした時は、逆に政治団体や政党支部からお金を回して穴埋めをしなくてはならない。そのためには、超過分を蓄える必要があった。それが不正な行いだとは思ってもみませんでした」

 ノルマ超過分を政党支部などにプールし、ノルマを達成できない場合にそこから補填していたとの言い分だが、そうしたカネは収支報告書には記載しない。つまり“裏金”として処理していたとの“告白”だ。

 ある清和会所属議員のスタッフも以下のように語る。

「事務所によってはノルマ分だけ清和会に振り込んで、超過分はそのまま自分たちで処理するというケースもあったようです。ただし今は、パー券の購入代金は購入者から派閥の口座に直接振り込むようにと指導されています。刑事告発があったからでしょう。“ノルマ超過分のキックバックも行わないので、パー券はノルマ分のみさばくように”とのお達しです」

1千万円のノルマを課されている議員も

 では、他派閥についてはどうか。宏池会所属のさる議員はこう打ち明ける。

「以前、派閥の事務局にノルマ超過分の売り上げはどうなるのかと聞いたら、その分はバックすると説明を受けました。ですが実際、私がノルマを超えて販売した際には、年末の餅代と一緒に上乗せがあったものの、返金額は二束三文。ノルマ超過分にはかなり足りなかったと記憶しています」

 前出の政治部デスクが言う。

「宏池会の場合、若手のノルマは100万円。中堅は200万円で、閣僚経験者になると400万円に跳ね上がります。また、抜群の集金力を誇る二階派の武田良太元総務相(55)は1千万円のノルマを課せられていると耳にしたことがあります」

 政治資金問題に詳しい岩井奉信・日本大学名誉教授は、

「今回明るみに出た不記載は氷山の一角です。なぜなら企業や個人の場合、そもそもパー券の支出を報告する義務がない。派閥サイドが収入として記載しなければ、第三者には知りようがないのです。支出の報告義務がある政治団体に限ってもこれだけの額の不記載があったわけですから、報告義務のない企業や個人によるパー券収入の不記載額が巨額に上るであろうことは、容易に想像がつきます」

 問題の根深さをそう指摘するのである。

 先の社会部記者が言う。

「特捜も年内は、江東区長選で柿沢未途前法務副大臣(52)が地元区議らを買収したとされる、公職選挙法違反事件で手一杯でしょう。パー券収入過少記載問題への本格着手は、年明け以降とみられています」

ポスト岸田を見据えた動きが

 そんな東京地検の動きに呼応するかのように、ポスト岸田を見据えた動きも起きている。11月15日、高市早苗経済安全保障相(62)が外交や安全保障などをテーマにする勉強会を発足。また22日には小泉進次郎元環境相(42)が、一般のドライバーが自家用車を使って有料で客を送迎するライドシェアに関する勉強会を立ち上げたのである。

「高市大臣の勉強会が来年秋に行われる総裁選の足掛かりの場であるのは明白ですが、進次郎の勉強会の背後にもライドシェア導入が持論の菅義偉前総理(75)の影がちらつく。その菅前総理は周囲に“岸田総理は解散なんかできっこない”と語っており、ポスト岸田に向けた動きを水面下で加速させています」(前出・政治部デスク)

 政治ジャーナリストの青山和弘氏は、

「内閣支持率が著しく低く、解散を打てるような状況にはないというのが一般的な見方です」

 こう述べながら、一方で、

「パー券収入の問題がハジけると、それこそリクルート事件のような党を揺るがす大問題に発展する可能性もある。捜査が本格化する前に解散を打った方がマシではないかという声が、自民党の一部から上がっています」

“岸田おろし”の暴風が吹き荒れそうな気配もあり、追い込まれた岸田総理が、伝家の宝刀を抜かないとも限らないというのだ。

「週刊新潮」2023年12月7日号 掲載