政策活動費の使い道について

 目下、国会の焦点となっているテーマの一つが、政策活動費に関する扱いだ。使い道を明らかにする義務がなく、特に自民党の議員にとって使い勝手のすこぶるよい財布になってきたところは否めない。裏金問題を受けても自民党は使い道を公開することは想定していなかったが、ゴールデンウイークの外遊から帰国した岸田文雄首相は一転、公開を指示した。少し前の唐突な「派閥解消」宣言が想起されるような“サプライズ演出”に自民党内からはボヤきや嘆きの声が聞こえてくるのだという。

「政策活動費をめぐる議論や問題提起は特に真新しいものではなく、以前からありました。今年頭にも“2022年の1年間だけで、自民党では党幹部15人に対し、14億円が支払われている”“二階俊博元幹事長にはなんと(5年間で)50億円を超える政策活動費が渡されていた”などと、野党議員が衆院予算委員会で取り上げるなどしましたね。世の中からも、詳細を明らかにしなくてよいなんてあり得ないよという批判の声が強く、なかなかそれが収まらないような印象があります」

 と、政治部デスク。

首相自身のサバイブ戦略

「岸田首相はゴールデンウイークの外遊から帰国直後、政策活動費の不透明なカネの流れについて、公開することを前提に進めるよう関連議員に指示をしました」(同)

 自民党内ではこの動きがサプライズと受け止められ、混乱を招いているとされる。

「岸田首相は9月に予定される自民党総裁選で再選を目指し、それ以前の衆院解散のタイミングをうかがっています。現時点でほとんど可能性が低くなってしまいましたが、6月の通常国会会期末など、“自身がサバイブできるならいつなのか?”を真剣に検討してきたわけです」(同)

 当然そのためには、国民からの信頼回復と低迷を続ける内閣支持率を上昇させる起爆剤が必須だろう。

「起爆剤についてはサプライズ人事などが想定されていますが、裏金問題に象徴される不透明なカネの流れについて国民からの信頼回復がなかなか進んでいないと首相は判断しているようです。政策活動費に関して“公開”を口にしたのは、それを丁寧に説明し、具体的な行動で示せなければ世論がもたないと見たのでしょう」(同)

首相のもとで選挙を

 ブラックボックスだったものがクリアになること自体、世論が歓迎しないということはなさそうではある。

「確かにそれはそうなのですが、首相の指示自体、各方面への根回しがほぼなく、サプライズでした。派閥解消をいきなり打ち出した時と全く同じで、その進め方について自民党内からはボヤきや嘆きの声ばかりがあがっているようです」(同)

 結果的に政策活動費の使途を公開する方向で話をまとめるにしても、しかるべきポジションの人間には事前に意向を伝えておくべきだったのではないかとの指摘があるようだ。

「岸田首相のもとで選挙を戦いたいと思っている人はあまりおらず、早く辞めて欲しいというのが本音で、そういうイライラが募っての“指摘”なのでしょう。首相の方も世論しか見えておらずサプライズ効果に期待しすぎたきらいはありますね」(同)

 そういった声が「岸田おろし」につながっていくことはないのだろうか。

「岸田おろし」はいつ?

「現時点でそうなっていないですね。岸田首相の次を狙う面々が乱立しているのも一因でしょう。ある程度それが絞られてくれば党内から公然と『岸田おろし』が起こる可能性もあるでしょう」(同)

 岸田首相の“サプライズ指示”のあと、政治資金規正法の改正案について与党側で大筋合意したかに見えたが、結局、自民単独で提出する方向だ。政策活動費については金額次第で使途の概略を公開する案を盛り込んでいるとされているが、果たして国民はどう捉えるだろうか。

「ここ最近の世論を見ていると、不透明なカネの流れをクリアにすることを国民は望んでいるものの、それを岸田首相に率先してやってほしいとまでは思っていないようですね。首相には荷が重いだろうとの分析なのか、あるいは首相がアレコレやろうとしているのは自分自身の保身のためではないかと見ている部分もあって、なかなか苦しい状況です」(同)

デイリー新潮編集部