「“特別待遇”を受けている人物が」

 円安の影響により庶民の足が海外からすっかり遠のいている一方で、岸田文雄総理(66)を含む14閣僚が今年の大型連休期間中に外遊に飛び立った。それらの外交的成果に疑問符が付される中、総理の外遊にはかねてより、“さる人物”の扱いも問題になっている。【前後編の後編】

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 外交的成果に疑念の目が向けられる岸田内閣の外遊。その外遊に際して、かねて問題視されている人物がいる。小泉純一郎元総理(82)の秘書官を務めたことで知られる、飯島勲内閣官房参与(78)である。

 政治部デスクが言う。

「飯島氏は、第2次安倍政権で参与に任命されて以来、安倍・菅・岸田と3代の総理に仕えてきました。安倍元総理時代は独自のチャンネルを使い、北朝鮮の拉致問題に取り組んでいたようですが、近年は官邸の中でも浮いている。慣例で、今も必ず総理の外遊先に同行するのですが、何のために同行しているのかと政権内部からも訝(いぶか)る声が上がっています」

「官邸の主」と化した氏の扱いは実に厄介なようで、

「総理の外遊でも、飯島氏は総理秘書官など他の随行員とは異なり、“特別待遇”を受けています。例えば現地大使館のリエゾン(連絡役)とは別に東京から飯島氏のためだけに、外務省の職員が同行します」

 そう声を潜めて明かすのはさる官邸関係者だ。

「外務省には外遊先の飯島氏の扱いに関して、いくつか申し送り事項があります。いわば、飯島氏の“トリセツ”です」(同)

「朝食のオムレツは固め」「アメリカンコーヒーはミルク入りを好む」

 それは、おおむね以下のようなものである。

〈・飯島氏が公式の食事会に参加する予定がない場合は、大使館が推薦するレストランの予約を行うこと。またその場合は、大使館員が食事に同席するのが望ましい。なお、経費は飯島氏が負担する。

・公式日程がない時間帯に、飯島氏が市街地の視察を希望する場合、車両及び現地の事情に通暁した職員を手配すること。

・事前に喫煙場所を把握しておくこと。

・飯島氏は朝4時には起床する。早朝から喫煙場所へ案内しなければならない場合もあるので注意が必要。

・朝食のオムレツは固め、具材なし、味付けは塩のみ。アメリカンコーヒーはミルク入りを好む。〉

 と、こんな具合で至れり尽くせりなのだ。

 前出の官邸関係者が言う。

「総理は2日(現地時間)、マクロン大統領との公式昼食会に参加していますが、飯島氏は“トリセツ”通りに大使館が用意したパリ市内のレストランで昼食を取っています。またその際に、公用車も使用しています」

外務省は飯島氏とは相異なる説明

 しかし、飯島氏当人に話を聞くと、

「(参与の中でも、飯島氏だけ外遊に同行するのは)私は特命担当。参与で官邸に部屋を持っているのは私だけですから。朝は4時前に起きることもありますが、(ホテルの喫煙所を外務省の職員に案内させることは)それはないです。(ホテルの部屋には)ベランダやテラスがついているから、外に出る必要がないじゃない。(2日の公式昼食会の時間は)宿舎で資料を点検していました。どこの国でも100%、個別に食事をすることはありません」

“トリセツ”の内容を否定した上で、

「官邸の中で、フランスのレジオン・ドヌール勲章オフィシエ(最高勲章)と農事功労章を持っているのは私だけ。ブラジルだって、2003年から(ルーラ)大統領をよく知っているし」

 自身の存在価値を力説するのだが、外務省に確認したところ、

〈飯島内閣官房参与は、2日のOECD閣僚理事会における行事に出席した後、同日午後の日仏観光イベントまでの間にパリ市内で昼食を取ったと承知しています。その際、公務から公務への移動であったため、公用車を使用したと承知しています。昼食代は、同参与が私費で支払いを行ったと承知しています〉

 れっきとした公式回答で、飯島氏とは相異なる説明を行うのである。

“トランプと向き合えるのは自分しかいない”と豪語

 政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。

「岸田総理は外務大臣を4年8カ月務めた経験から、外交にはもともと自信があります。先月、訪米時に行った上下両院での演説が好評だったことで、さらに自信を深めているようです。先の補選で全敗したにもかかわらず、周囲には“アメリカの大統領がもしもトランプになっても、彼と向き合えるのは自分しかいない”と語っています」

 だがしかし、あまりの支持率の低さに「もはや、6月の国会会期末の解散も不可能」(前出・デスク)な状態である。総理本人の思いとは裏腹に、相手にしてくれる国も今後は、ますます減っていきそうなのだ。

 前編では、税金の無駄遣いとしてか思えない国会議員らの外遊の内容や、成果のない岸田総理の外交に前駐豪大使が呈した苦言について報じている。

「週刊新潮」2024年5月23日号 掲載