時事通信は5月27日、「蓮舫氏、都知事選出馬を表明 小池氏と対決へ」との記事を配信した。7月7日に投開票が行われる東京都知事選は、現職の小池百合子都知事(71)と立憲民主党の蓮舫参院議員(56)の実質的な一騎打ち──時事通信に限らず、多くの新聞社、テレビ局が「小池v.s.蓮舫」の構図で報道するようになってきた。

 ***

 ところが選挙を熟知する永田町関係者は、「小池v.s.蓮舫」との構図を「東京都の有権者が考えていることとは異なる」と否定する。

「大前提として、都知事選は投票率が高くありません。大まかに言って半分の都民有権者が棄権します。そして投票に行く半分の有権者は、今回の都知事選を『次の4年間も小池さんに任せていいのか』との判断基準で投票先を決めるはずです。つまり今回の都知事選の本質は小池さんの信任選挙なのです。小池さんを信任する有権者は小池さんに投票し、小池さんは不信任だとする有権者は『じゃあ、誰に投票しようか』と考えるというわけです。最初から蓮舫さんに投票するという有権者は少ないでしょう」

 蓮舫氏にとっては、自分の支持者を増やそうとする選挙戦は失敗に終わる可能性があるという。まずは「小池知事は不信任」と判断する有権者を増やす必要があるのだ。

「実は各党がこっそり都知事選について世論調査を行っています。その結果は、かなり小池さんに有利、蓮舫さんには不利な数字になっています。仮に明日が投票日なら、小池さんが3選を果たすでしょう。もっとも投票日は7月7日ですから、まだ1カ月以上も先の話です。7月に有権者が誰に投票するかは、まだ全く見えていません。小池陣営にも死角がありますし、蓮舫陣営にもチャンスはあります」(同・関係者)

小池氏有利の理由

 小池3選の絶対条件は、「自民党を選挙活動から完全に排除すること」だという。それだけ自民党に吹く逆風は厳しいのだ。

「先に行われた衆院の3補欠選挙と静岡県知事選の結果を見れば、自民党が小池さんを応援した瞬間に落選が決まることは明らかです。自民党議員による応援演説、自民党と公明党の支持者に対する投票呼びかけなどもってのほか。それこそ小池さんのポスターを自民党の支持者が貼るところを見られただけでも、小池さんに投票する人が減ると覚悟するくらいでちょうどいいでしょう。自民党と公明党の支持層には表立った選挙応援は慎んでもらい、自主投票を徹底。選挙活動は小池さんが特別顧問を務める都民ファーストの会だけで完遂することが3選の大前提になります」(同・関係者)

 さらに東京の有権者が都知事に求める役割は独特なものがあり、他の道府県知事選とは異なる観点から投票先を決める。その特徴は今のところ、小池氏への追い風になるという。

「1947年に地方自治法が成立し、知事は選挙で選ばれるようになりました。現在に至るまで、知事はキャリア官僚のOBがかなりの数を占めます。これは国とのパイプ役が期待されているからです。一方、近年は橋下徹さんのように『国とケンカして予算を分捕ってくる』という戦闘的な知事も人気を集めています。ところが東京都の場合、税収が豊富なので、自分たちが必要とする施策は自分たちで予算の都合が付きます。国とのパイプ役も、国とケンカしてもらうことも必要ありません。都知事候補は都民が納得する都政ビジョンを語ることが求められ、これに失敗すると落選の可能性が高くなるのです」(同・関係者)

蓮舫氏の勝機

 小池氏は都知事を2期、務めている。彼女が都政について語ると、有権者は耳を傾けてくれる。ところが蓮舫氏は国政の経験しかない。知事としての能力は未知数だ。

「蓮舫さんが国政について発言すれば、耳を傾ける有権者は多いでしょう。しかし今回の都知事選で都政について熱く語ったとしても、それに説得力を感じる有権者がどれだけ生まれるかは分かりません。現時点では『小池さんより蓮舫さんのほうが知事に向いている』と考える有権者は少ないはずです。だからこそ、もし明日が投票日なら小池さんが勝利し、蓮舫さんは敗北する可能性が高いという結論になるのです」(同・関係者)

 逆に、蓮舫氏が都民を納得させるような公約や都政ビジョンを打ち出せたとしたら、選挙の行方は分からなくなってくる。

「実のところ、小池さんは都知事としてはそれほど成果をあげていません。意地悪な言い方をすれば、プロジェクションマッピングで都庁を照らしたことぐらいでしょう。初当選の時は都政改革に意欲を見せていましたが、今は言及することさえなくなりました。こうした小池さんの問題点を、蓮舫さんが一般の有権者にも分かりやすい表現で批判し、『自分が都知事になれば、都民に夢と希望をもたらす』と説得力ある主張を行えば、広範な有権者の支持を集めることも可能だと思います」(同・関係者)

投票日は無党派層だらけ!?

 先に小池氏は選挙戦で自民党の支援を“拒絶”する必要があることを紹介した。ところが蓮舫氏のほうも、政党色を薄めるという意味では同じ選挙戦術が求められるという。

「“立憲民主党の蓮舫”という立ち位置を強調しすぎると、共産党やれいわ新選組の支持層が投票してくれなくなります。票は1票でもいいから欲しいというのが蓮舫さんの本音でしょう。少なくとも選挙期間中は無所属のイメージを強くする必要があります。そうなると、小池さんは自民から、蓮舫さんは立民から距離を置くという珍しい選挙戦になる可能性が出てきます。もともと都民有権者の5割が無党派層ですが、ひょっとすると7月7日の投開票日は実質的な無党派層が6割とか7割に増えても不思議ではありません」(同・関係者)

 自民、公明、そして立民も自主投票という事態になると、自民の支持者でも蓮舫氏に投票したり、逆に立民の支持者が小池氏に投票したり、ということが増えるかもしれない。

「とにかく小池さんは自民党の応援を拒否し、今のリードを保ったまま逃げ切るしかないでしょう。一方の蓮舫さんは現時点では小池さんに負けていると見ていますが、これからの選挙戦を通じてマスコミを味方に付けることができれば当選の可能性が高くなります。『都政刷新を成し遂げられるのは小池さんではなく蓮舫さんだ』というムードを作ることに成功すれば、地滑り的な勝利もあり得るかもしれません」(同・関係者)

デイリー新潮編集部