解散すると自公両党で過半数割れ

 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選前の衆院解散・総選挙の見送りを固めたことが報じられた。総裁選前に内閣改造、自民党役員人事に着手して少しでも総裁選を有利に進めたいとの思惑もあるとされるが、そもそも人事を行えない可能性も取り沙汰されている。閣内に人気者を取り込んだ「オールスター内閣」が実現する可能性はあるのだろうか。

「9月の自民党総裁選前の衆院解散・総選挙の可能性がゼロになったわけではありませんが、極めてゼロに近くなったことは間違いないでしょう。岸田首相としては今国会末あたりの解散を狙っていたようですが、内閣支持率がなかなか上がってこないままで、このまま解散すると自公両党で過半数割れしそうだということが情勢調査でわかり、見送りを余儀なくされたというところでしょう」

 と、政治部デスク。

上がっても10%程度

 岸田首相は総裁選での再選を大きな政権目標としてきたとされる。それまでに衆院解散・総選挙を行うのは総裁選を無風にする狙いがあったわけだが、ひとまずこれを諦めたとして、いかにして支持率をアップさせるかというと最も可能性が高いとされるのが人事ということになる。そのため「オールスター内閣改造」があるのでは、といった憶測記事も出るようになっているのだ。

「“首相にしたい人ランキング”上位に名前が出ている石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相らを要職に起用し、彼らの後見人的存在の菅義偉前首相を副総理として取り込むという話も出ていますね。それでオールスターと呼べるのかはわかりませんが(笑)、可能性がゼロというわけではないでしょう」(同)

 仮に実現した場合、どれくらい支持率を押し上げる効果があるのだろうか。

「上がってもせいぜいプラス10%程度ではないでしょうか。それでは20%後半から30%台です。40%くらいまで行けば解散しても自公で過半数割れはないとされており、総裁選も勝ち抜ける可能性が出てくるかもしれません」(同)

麻生氏の天敵

 とはいえ、オールスター内閣の実現のためには、超えるべきあまりに大きな壁があるのだという。

「麻生太郎自民党副総裁の存在です。麻生氏の天敵・菅氏が副総理にならないにしてもオールスター内閣イコール総主流派ですから麻生氏としては受け入れがたく、“オレとあっち、どっちを取るんだ?”などといった踏み絵を首相に迫ることもあり得るでしょう。首相にしたい人で常にトップにランクインする石破氏は登用されても断るとは言っておらず含みを持たせていますが、その他の候補とされる人たちは基本的には断るスタンスとされています。石破氏だけ入れてもオールスターとは言えないでしょうから、そう謳える内閣の実現率は低いのではないかと見ています」(同)

 各メディアは最新の世論調査結果を報じる際に、「今回の内閣支持率は、2012年に自民党が政権に復帰して以降、最も低かった」という文言を加えるケースが続いている。そんな泥船に乗ろうという奇特な人は永田町にもいないということであり、そもそも政策や実績を売りにできない時点で「詰んで」いるということか――。

デイリー新潮編集部