同期の中ではとにかく切れる男

 国家安全保障局(NSS)の北村滋局長(64)の退任が噂されているという。首相秘書官や補佐官を務めた今井尚哉氏と共に安倍内閣を史上最長の政権に導いた立役者でもある北村氏。今後は独立し、コンサルティング会社設立に向けて動いているという。ここ10年、インテリジェンスの世界の最先端で切った張ったを演じた彼の胸中に去来するものとは?

 北村氏は1980(昭和55)年に警察庁入庁。警備局外事課長、同外事情報部長などを歴任した外事警察のエースだ。民主党・野田政権時代の2011年に内閣情報調査室のトップ・内閣情報官に就任し、自民党が政権を奪還して以降もそのポストにとどまり、2018年からはNSS局長に就き、北朝鮮の拉致問題などを担当してきた。

「同期の中ではとにかく切れる男という評価があり、早くから長官候補だと目されてきましたが、仕事ぶりが鋭すぎて警戒されたのか、警察庁では総括審議官までで局長は経験せずでしたね。長官になったのは同期の坂口正芳。北村の肩を持つなら、能力が正当に評価されなかったと言えるかもしれません」

 と、入庁同期のひとり。しかし、置かれた場所で咲くタイプなのか、三つ子の魂なんとやらなのか、内閣情報官というインテリジェンスの世界で能力を遺憾なく発揮することになる。

 社会部デスクによると、

「安倍政権から菅政権にかけて官房副長官を務める杉田和博さんも警察庁出身で、それこそ外事警察のシンボル的存在。警備局長は務めたものの長官になれず、内閣情報官をやったという意味では北村さんの経歴と重なり、実際に二人は師弟のような関係で安倍・菅政権を支えてきました」

モチベーションは下がっていた

 杉田氏もまた、7年8ヶ月にわたった安倍・超長期政権を支えたひとりだ。特に危機管理を担い、例えば、現職ながら安倍政権批判の急先鋒となっていた前川喜平元文科次官のいかがわしげな出会い系バー通いを指摘し、その後にメディアに暴露したこともあった。

 そんな杉田氏と共に、二人三脚で官邸を支えてきた北村氏に退任観測が出ているのはどういうことなのか。

「ここ最近、北村さんは新型コロナウイルス感染対策にも深く関係していました。安倍政権時代に首相動静欄に登場回数が多すぎることが話題になりましたが、現在も毎日のように登場しています。とにかくワーカホリックですし、北村さんのいる情報の世界は24時間365日めまぐるしく情勢が変化しますから、長くポストにいればそれだけ神経をすり減らす。タフな北村さんも達成感はあったかと思います。周囲にそういうことは決して漏らしませんが、安倍時代とは違ってモチベーションは下がっていたようです。辞める前提で将来設計をしているのは間違いありません」

 別の記者にも聞いてみると、

「第1次安倍政権では首相秘書官を務めたほどですから、安倍さんと菅さんとで献身ぶりに濃淡が出てしまうのは仕方ないと思います。安倍・菅両政権との差異からモチベーションの問題が取りざたされているのはよくわかります。ポジションもNSSになって、情報官時代ほどは忙しくはないということもあるようです」

 忠臣は二君に仕えず、という言葉もある。とはいえ、

「辞められると菅さんとしてはかなりの痛手になります。菅さんには警察庁ナンバー2の中村格・警察庁次長という懐刀がいますが、他方、北村さんの情報をかなり頼りにしてきました。国会が閉じて省庁の人事が一気に動き出す中、菅さんが北村さんを手放すのか否かが、まずは注目されるところです」

コンサルティング会社の立ち上げを予定

 その一方で、「北村退任」を期待する声もある。外務省だ。政治部デスクによると、

「そもそもNSSは外務省の領域という意識が強く、前任は元外務次官の谷内正太郎さんが務めていました。北村さんが内閣情報官を長くやりすぎたため、人事がいびつになってしまい、それでも安倍さんは北村さんをそばに置きたい、ポストで報いたいと考え、NSSの局長を用意しました。外務省としては大政奉還ではないですが、ポストの奪還に並々ならぬ決意があるとか。今後、北村さんが辞めることになれば、現・外務次官の秋葉剛男さんがその後継の最右翼です」

 今後は東京都議選、東京オリパラ、解散総選挙、自民党総裁選など、政治日程が目白押しゆえに、北村氏の経験と手腕を頼みとする場面も少なくないだろう。外務省が巻き返しを図ることができるのか、その本気度も問われている。

 さて、北村氏の退任がいつになるかは別にして、その暁にはコンサルティング会社の立ち上げを予定しているようで、

「警察庁を長く離れていることからも、再就職先をアレンジしてもらうことはないでしょうから、自身で職を開拓することになるわけですが、様々な方面に顔が利く北村さんは有用で実践的なアドバイスができるので、引く手あまたでしょう。しっかりと染み付いた安倍カラーは毒にも薬にもなるでしょうが、霞ヶ関の肌感覚は十分で実績は他を圧倒するだけに、企業が抱える顧問弁護士などとは違うアプローチの助言ができるので、顧問契約を結ぶ会社はかなりの数に上るはずです。また、仮に安倍さんの3回目の登板があったら、北村さんも政権幹部の一員として再び名を連ねることになるのではないでしょうか」(同)

デイリー新潮取材班

2021年6月17日 掲載