菅総理のまさかの不出馬に始まった「次期総理」レース。河野太郎、高市早苗、岸田文雄、野田聖子……。ゲート開扉を前にして、乾坤一擲の勝負に挑む各馬のスペックを調査。新聞やテレビが報じない、自民党の“顔”の裏側は。

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 まずは現状、本命と目されているのが河野太郎・ワクチン担当相(58)である。

 総裁選を受けた各種世論調査で「次の総理」1位を快走。

「これが選挙基盤の弱い、党内の中堅・若手議員に響いています」

 と述べるのは、さる政治部デスク。

「今回の総裁選の特徴は、衆院議員の任期満了が迫り、秋には確実に総選挙が行われること。総裁に求められる資質のうち、“選挙の顔”という側面がいつにも増して優先されますからね」

「国民的人気」が彼の最大の切り札ということなのだ。

 もっとも、この河野大臣が永田町では「異端児」「一匹狼」といわれるのはつとに知られたところ。ツイッターのフォロワーは242万人もいるのに、

「党内での“盟友”や“側近”の存在を聞いたことがない。自分を犠牲にして河野さんを支える、という存在がいない」(同)

 というのは定説である。

 祖父の一郎氏は元副総理。父の洋平氏も副総理・党総裁を務めた名家の出。そんな御曹司であるにもかかわらず、なぜ彼には“同志”がいないのか。SNSというネット空間では人気が高いのに、現実世界ではなぜ“友”を集められないのか。

「やっぱり彼は変わっていますよね」

エゴサーチの鬼

 と言うのは、さる自民党代議士である。

「酒を飲めないので、まず議員同士の酒席に行くことも少ない。行ったとしても、政策論議が中心で、どうしても堅苦しい話になってしまうんですよね」

 そんな彼が、現実のコミュニケーションよりも耽溺しているのがツイッター。

「フォロワーは安倍前総理を超え、政界一となりました。気に入らない相手をすぐブロックするので、“ブロック太郎”とも呼ばれていますが」(ネットウォッチャー)

 外務、防衛、ワクチン担当など重要閣僚を歴任しているにもかかわらず、

「ツイッター上で四六時中、自分の名を検索している“エゴサーチの鬼”です。自分に関するどんなにささいなつぶやきでも見つけてはリツイートし、フォロワーを増やしてきました。ユーザーの間では一時期、本人にバレないように彼のことをツイートする“ステルス河野太郎チャレンジ”が流行ったくらいです」(同)

 ネット依存症ではないかと心配になるくらいだ。

「防衛大臣時代には“これからはツイッターの時代です。どんどん呟いてほしい”と政務官らにも勧めました。その命に応えようと、ある副大臣が出張先で“焼鳥屋さんへ。美味しいなぁ〜”と食事の様子をツイートした。でも、その出張が陸自ヘリ墜落についての地元説明のためのものだったので、不適切だ、と炎上してしまいました」(同)

ベッドに寝ころぶ写真で大炎上

 大臣本人も国内が豪雨災害に苦しむ中、外遊先でベッドに寝ころぶ写真を投稿し、大炎上を招いたことがある。

「SNSを駆使することも含め、河野さんの強みは“発信力”といわれることが多いのですが……」

 と述べるのは、前出・政治部デスク。

「ただ、それも正当な評価なのか。外務大臣時代、記者が日露関係について質問したのに対し、なぜか答えず、“次の質問どうぞ”と4回連呼したのは有名です。子どもじみた態度に、当時の安倍総理も“何であんなことをするんだ”と不快感を示していましたし、徴用工問題で駐日韓国大使を呼び出し、“無礼だ”と抗議したことも。わざわざカメラを入れるなどパフォーマンス以外の何物でもなく、当時の菅官房長官が“スタンドプレーが過ぎる”と怒っていましたよ」

 新型コロナワクチンについても、官房副長官や補佐官の発言をわざわざ公の場で否定し、政府内の足並みの乱れを露呈させたのは記憶に新しい。

 また、この「発信力」と並び、河野氏の持ち味といわれるのが、「突破力」。歯に衣着せぬ物言いで壁を突破する――との評だが、

「確かに官僚には厳しいですよね」

 と言うのは、さる自民党関係者。

「部会などで正面に陣取り、罵倒するのはしばしば。彼は留学経験があり、英語が堪能なので、外務大臣時代は“外務官僚の英語力が低過ぎる”と、内外でよくこき下ろしていました」

甘利氏を激怒させ謝罪

 が、その一方で、

「東日本大震災の後、“脱原発”が持論であった河野さんは発言を先鋭化。あの山本太郎と対談したほどでした。ある時、朝日新聞のインタビューで、推進派として知られる甘利明議員を名指しし、“次の選挙で落とすしかない”とまで述べた。これに甘利さんは激怒。総務会で問題にする、と言い出した。それにビビった河野さんは、慌ててお詫びに行ったそうです」

 甘利氏は大臣を歴任した党の重鎮。強い者への態度は随分と違うらしい。もっとも、

「それでも甘利さんの怒りは収まらなかった。質問の予定があったのに、予算委員会のメンバーから外されてしまったそうです」

 ちなみに今回の総裁選でも、同じ麻生派所属にもかかわらず、甘利氏は「河野不支持」を示唆している。

「河野さんといえば、“無駄排除”が旗印の、徹底的な合理主義者といわれますよね」

 と言葉を継ぐのは、別の自民党関係者。

「しかし、それもパフォーマンスが多分に入っていると思います。外務大臣時代、無駄を排するとの名目で、外遊時に連れていくスタッフの人数を半減させた。それはいいのですが、彼は『スタンプラリー外交』と揶揄(やゆ)されるほど世界の国と地域を回り、その数は120を超えました。結局、費用が嵩(かさ)んでしまい、外務省は大弱り。同行した幹部がエコノミー席に座り、経費削減に努めていました」

 防衛大臣時代にも、

「無駄削減のため、自衛隊の装備品をオークションに出したのですが、結局600万円ほどしか儲からなかった。自衛隊員が経費削減のため、トイレットペーパーを自腹で購入した例があるとの話を聞き、数十年分といわれるほど大量に差し入れしました。が、その一方で、戦闘機・F15の改修計画の見直しを検討させた。国防上の大問題ですし、寝耳に水でもあったため、現場からは“トイレットペーパーより戦闘機を買ってくれ”との怨嗟の声が上がっていました」

 何ともちぐはぐな話なのである。

父の轍

「富士山のような人」という譬(たと)えがある。遠くで見ると美しいが、実際に近寄ると……という意味だが、なるほど河野大臣の「発信力」「突破力」「合理性」も、具(つぶさ)に見れば、確固たる信念に基づく、というより、条件反射的に他者を攻撃しているだけ、とも見える。

「やっぱり変な男ですよ」

 と繰り返すのは、前出の自民党関係者。

「ウオーキングが趣味なんですが、大臣になってSPが付くようになるとそれを引き連れて歩くのが面倒くさい。で、議員宿舎の廊下を歩くようになりました。ジャージを着た河野さんがイヤホンを付けて同じところをグルグル回っている。それが不気味だと、話題になっていました」

 河野氏は2009年に総裁選に初出馬している。その際、全面支援した一人が世耕弘成・参院幹事長だが、

「その後、世耕さんが民主党の女性議員と再婚した後のこと。与野党議員の結婚で、周囲は腫物に触るような雰囲気の中、河野さんが平場の会議で“奥様は自民党に入党しないんですか”と尋ね、場が凍り付いたことがあります」

 なるほど、友達はできそうにない……。

 河野事務所にこれらの点について尋ねたが、回答はいただけなかった。

 9月10日、河野氏は出馬会見を行った。その席では「脱原発」「女系天皇の検討」など、従来の持論を封じ込め、「変節した」と批判を浴びたのは周知の通り。

「議員票を獲得するため、安倍前総理や、麻生元総理など“右寄り”な大派閥のボスたちに配慮をしたわけです」(前出・デスク)

 しかし、河野氏とは初当選同期の仲である、渡辺喜美・みんなの党代表は言う。

「彼は決断力、行動力に優れた政治家だと思っていますが、会見は歯切れが悪かったですよね。大胆な発言が魅力ですが、意外と現実的。ついに総理になれなかった父の轍(てつ)は踏みたくないと思っているのでしょう。ただ、その現実路線が、思い切った政策という彼の魅力を減じているような気がして残念です」

 乾坤一擲の作戦が、吉と出るか凶と出るか。

 トップを走る河野大臣だが、選挙戦はまだまだ長い。

「週刊新潮」2021年9月23日号 掲載