すぐに動けるように準備してほしい――。

 そんな電話が和歌山県の自民党関係者たちにかかってきたのは、今月上旬のことだった。

 声の主は世耕弘成・自民党参院幹事長(58)。経産相などを歴任した和歌山県選出のベテラン議員である。

 地元関係者いわく、

「菅義偉総理が退任を表明し、次期総裁をめぐって政局が活発化しだした頃、世耕氏本人から、地元の太い支援者たちに電話がかかってきた。内容は、組織を引き締め、選挙に備えてほしいというものだったそう」

 世耕氏といえば、2019年の参院選挙で5選目を決めたばかり。次回改選の25年まで身分は安泰のハズである。ところが、

「世耕氏の要望は“次の衆院選”、つまりは今秋に行われる総選挙に向けて、地元の後援会の態勢を整えてもらいたいというものだった。そして、この要望は、すぐさま衆院和歌山3区の支援者の間で共有されることになりました」(同)

 和歌山3区といえば、二階俊博幹事長(82)のお膝元。かねて世耕氏が出馬を画策していると囁かれてきた選挙区ではあるが、

「世耕氏の衆院鞍替えは、これまで“噂”に過ぎず、二階氏の三男が選挙区を継ぐというのが既定路線だった。そこへきて世耕氏が和歌山3区での選挙の準備を明言したものだから、地元は大騒ぎです」(同)

二階さんが息子に選挙区を譲るなら話は別

 もっとも、自民党には“公認は現職優先”の原則がある。いくら二階氏の幹事長退任が濃厚とはいえ、二階氏が現役を続ける限り、世耕氏の衆院鞍替え計画は“反党行為”となる。

 この点、別の関係者は、

「世耕氏もそのことは重々承知。それゆえ周囲には“義理もあるから二階さんに挑むつもりはない”とはっきり言ってきた。ただ、近頃は“二階さんが息子に選挙区を譲るというなら話は別。たとえ無所属になっても衆院選に出馬する”と。一足先に参院議員を辞職し、衆院鞍替え出馬を決めた林芳正氏にライバル心もあり、遅れをとるまいと腹を括ったのでしょう」

 あくまで二階家の出方を待つ構えという世耕氏。だが、

「すでに3区内に新たな選挙事務所が開設されたともいわれ、東京の秘書が地元入りするのも度々目撃されている。二階氏が衆院選直前に引退を表明し、三男を後継者に据えるという力業に出るのを警戒しているんです」(同)

 二階家世襲は風前の灯か。

「週刊新潮」2021年9月23日号 掲載