盗人猛々しいとはまさにこのことだ。11月22日、東京都庁で突然の辞任会見を開いた木下富美子元都議(55)の口から飛び出したのは、辞職を迫った都議会など周囲への恨み節だった。ここまで彼女を勘違いさせるに至った責任も、問われて然るべきではないか。

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 会見の中で木下氏は、辞任を決断する経緯として、「理不尽な現実があった」「議員の仕事をしたいのに、させてもらえなかった」と不満を述べた。同席した代理人弁護士も「イジメと同じ」と擁護して、彼女が出席を希望した委員会を流会させた都議たちを批判したのだ。

 そもそも「理不尽な現実」を生み出したのは、木下氏の不祥事がきっかけである。今年7月に行われた都議選の期間中、免停中ながら当て逃げ事故を起こした彼女は、それを有権者に隠したまま「都民ファーストの会」公認候補として当選を果たす。その後の警察の捜査では、人身事故も含め7回にも及ぶ無免許運転をしていたことが発覚。11月19日には在宅起訴されるに至った。

 都政担当記者が言う。

「当の木下氏といえば、当選直後から“体調不良”を理由に議会を欠席して雲隠れ。都議会は召喚状を複数回出して、2度の辞職勧告決議も行いましたが、彼女は“応援する声もある”として応じませんでした。これには都民からの抗議が議会事務局へ殺到。業を煮やした都議会の議員たちが委員会への出席を拒否するなど、彼女を辞職させようと動いたのは当然のことです」

 会見で木下氏は、小池百合子都知事から辞職を促された際に、「これで人生が終わるわけではない。不祥事を反省して再出発する時は相談に乗る」と言われたと明かし、今後も“実力者”に支えてもらえる立場にあることをアピールした。

“クールビズを手掛けた”

 都政関係者はこう話す。

「木下さんは“小池知事とは古い付き合いでクールビズを一緒に手掛けた”と自慢して、知事の威を借り自分を大きく見せていました」

 一方で、当時を知る関係者に聞くと、

「博報堂の社員だった木下さんが、クールビズのプロジェクトに参加していたことはありましたが、あくまで裏方の事務仕事が中心。コンセプトやクリエイティブな部門を担う社員は別にいましたけどね……」

 かような人物を政界に跋扈させた責任を、小池知事はどう考えているのか。

「小池知事としても、責任を感じて裏で説得を続けていたとは聞いています」

 と話すのは、都政に詳しいジャーナリストの鈴木哲夫氏。

「あくまで小池知事は“議員の出処進退は自分で決めるべき”だと言っていましたが、仮に“辞めるべき”と口にしてしまえば、自らが応援した責任が明確に生じてしまう。それでああいう物言いになってしまったのでしょうけど、小池知事や都民ファ自体も木下氏と連絡が取れない状態が続いて、行き詰まっていたようです。結果的に木下氏は在宅起訴され、都議会も水面下で除名処分に動いていたことを木下氏も察知した。除名なら事実上、政界には復帰できませんからね。最後に小池知事の説得に従ったと明かしたのも、彼女にとってみれば再出発の担保になると思ったのでしょう。会見は終始自分は悪くないという思いが滲み出ていて、再びチャンスがあれば政界に戻ろうという野心を感じてしまいました」

 ポピュリズムの徒花とはいえ、小池知事も猛省すべきだろう。

「週刊新潮」2021年12月2日号 掲載