早くも優位が伝えられる自民党。余裕の表れか、岸田文雄総理(64)は永田町で選挙とはまた別の戦いを仕掛けているという。「元総理」との暗闘の内幕……。

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「現状、自民党には負ける要素が見つかりませんね」

 と今参院選の情勢を分析するのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏である。

「公明党も手堅く議席を守るでしょう。野党は立憲民主党が微減し、共産党も改選議席を割り込む一方、維新は若干、伸びると思います。参議院でも自公と維新・国民民主党の4党合わせ、3分の2を超える可能性が出てきますね」

 維新・国民は時に与党に対しても融和姿勢を取る勢力。総理にとってますます盤石な政権運営が約束されるというわけなのだ。

安倍元総理は再考を直談判したが…

 そこでの次の一手なのか。

〈防衛次官交代に波紋〉

〈「続投希望」官邸認めず」〉

 新聞にそんな見出しが躍ったのは6月半ばのことである。

「この17日、夏の省庁人事が発表されましたが……」

 とは、さる政治部デスク。

「そこで話題になったのは、官邸が島田和久・防衛事務次官の退任を決めたこと。島田さんは8月で就任2年になりますが、国家安全保障戦略の改定を主導しており、それが決まる年末までの在任は既定路線でした。岸信夫・防衛大臣も続投を熱望し、官邸サイドに伝えていたのですが……」

 それを押し切っての交代劇だった。

「この件が注目されたのは、島田さんが“安倍印”の官僚だからです」

 とデスクが続ける。

「島田さんは第2次安倍政権時から、6年半にわたって総理秘書官を務めました。今般、安倍さんは防衛費の大幅増額を主張し、『GDP比2%』という文言を政府の骨太の方針に入れさせましたが、これも島田さんとの連携作業といわれています。異例の交代案に、安倍さん自身も岸田総理に再考を直談判したものの断られた」

 ゆえにこの人事は、総理vs.元総理の争いの火種となりかねない、と捉える向きも少なくないのである。

逆らうなら…

「退任に至る官邸の戦略は、狡猾でした」

 とその内幕を述べるのは、防衛省関係者。

「交渉に当たったのは、警察庁長官を務めた、栗生(くりゅう)俊一・内閣官房副長官。彼は反対する岸大臣サイドに、もし逆らうなら、大臣の交代もあるぞ、と仄(ほの)めかしながら説得を続けました」

 大臣は体調に不安を抱え、時に車椅子を使用する身。交代の2文字は脅しになっただろう。

「それでも大臣は続投を主張しましたが、栗生さんは裏で“総理に留任を3度もお願いしたが、首を縦に振らなかった”と岸田さんの名を使って次官を説得し、本人の受諾を取り付けた。そしてその事実をもって、大臣や関係各所に改めて退任をのませたんです」(同)

岸田官邸への怒りが

 安倍氏が岸田総理に直談判したことについても、

「副長官は次官が裏工作をしていると勘繰ったようで、島田さんサイドに“この界隈で今後も仕事をしようとするなら、余計なことをするな”とドヤしつけたそう。安倍さんの周辺では、岸田官邸への怒りが渦巻いています」(同)

 前出・伊藤氏によれば、

「選挙での勝利が見え、岸田総理は今後の政局に向けて動き出しているのでしょう。これまでほど安倍さんに配慮することはない、と舵を切ったのではないか。今後も、自分と政策的な軸足のズレがある人物を、したたかに外していく可能性はあるでしょうね」

 柔和な裏に、「悪代官」の顔も見え始めた総理。次のターゲットは果たして、誰か。

「週刊新潮」2022年6月30日号 掲載