時事通信は8月8日、「安倍派『塩谷・下村氏』体制に 名称存続、会長は当面空席」の記事を配信した。安倍晋三元首相(享年67)が死去したため、自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会:略称、清和研)を、塩谷立・元総務会長(72)と下村博文・前政調会長(68)の2人が、会長代理として束ねていくという内容だ。

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 2人の“素顔”を簡単に紹介しておこう。塩谷氏の地元は静岡8区、当選10回。父親の塩谷一夫氏(1920〜1989)も自民党の衆議院議員という二世議員だ。ちなみに、2021年の衆院選では小選挙区で落選し、重複立候補していた比例東海ブロックで復活当選を果たした。

 下村氏の地元は東京11区、当選9回。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合。以下「統一教会」)が名称を変更した2015年、所轄する文部科学大臣を務めていたのが下村氏だった。

 統一教会の関連団体からの寄付を受領したことも明らかになっており、「統一教会と関係の深い国会議員」としてメディアだけでなく有権者も注視している。

 この2人が安倍派=清和研を仕切ることになったわけだ。彼らにとって最重要課題は、明日に控えた「内閣改造における閣僚ポストの確保」であることは論を俟たない。担当記者が言う。

「安倍さんが射殺されるという悲劇が起きなかったら、今も岸田さんは様々な場面で安倍さんの意向を聞く必要があったでしょう。しかし安倍さんは亡くなられました。安倍派が自民党における最大派閥なのは変わりませんが、岸田さんが内閣改造でどのような姿勢を安倍派に示すのか、大きな関心を集めています」

岸田・塩谷会談

 8月5日、「TBS NEWS DIG」は「【速報】岸田総理、来週10日にも内閣改造・自民党役員人事の方針固める」との速報を配信、YAHOO!ニュースのトピックス欄にも転載された。

「速報が流されたことからも明らかですが、まさに岸田さんによる“サプライズ改造”です。安倍さんの国葬決定に加え、統一教会と自民党議員との深い関係が次々に明らかになり、岸田内閣の支持率は低下しています。閣僚の顔ぶれを変えることで支持率を回復しようということでしょう」(同・記者)

 翌6日、岸田文雄首相(65)は地元の広島市で行われた平和記念式典に出席。記者会見で改造を行う理由として、統一教会の問題に言及した。新内閣の顔ぶれからは、統一教会と深い関係にある国会議員を一掃する必要があるというわけだ。

「興味深いことに、内閣改造の速報が配信された前日の8月4日、塩谷さんが首相官邸を訪れ、岸田さんと会談を持ちました。この様子を一部の新聞社などは、内閣改造の意向が発表された後に記事化しています。例えば共同通信の記事は、8月7日に全国の地方紙やブロック紙が掲載しました」(同・記者)

安倍派の閣僚は4人

 九州のブロック紙、西日本新聞は「安倍派処遇 ジレンマ 内閣改造・自民役員人事 旧統一教会と多数が関係 最大派閥へ配慮欠かせず」との見出しで報じた。

《人事がもっと先だとみられていた4日、会長代理の塩谷立元文科相は首相を官邸に訪ね「うちは政権を支える最大派閥だ。人事でそれなりの要求をさせてもらう」と伝えた。現在の閣僚数4人は「派閥の規模に比べれば少ない」(安倍派中堅)との不満もある》

《応対した首相は「なかなか比例代表のドント式のようにはいかないんだよなあ」とはぐらかした》

 会談の内容を知る自民党の関係者は、「ドント式で計算すれば、安倍派=清和研における閣僚のポストは5になります」と言う。

「岸田内閣で閣僚4人を擁したことがあるのは、安倍派と茂木派(平成研究会)、そして岸田派(宏池会)です。岸田さんが安倍派に配慮していたことが浮き彫りになりますが、安倍派は90人を超える大所帯、茂木派は50人台、岸田派に至っては40人台です。塩谷さんが『ウチは最大派閥だから閣僚枠を1人増やせ』と要求したということでしょう」

 もし安倍氏が岸田首相に「4人を5人にしてほしい」と要望したのなら、岸田首相も真剣に考えたかもしれないという。

余裕の冗談!?

「しかし会談で、岸田さんは塩谷さんに『ドント式は無理』と返答しました。つまり『安倍派から5人はない』という意味です。安倍さんが亡くなられたことで、岸田さんは『安倍派に特別な配慮をする必要はなくなった』と判断したということでしょう」(同・関係者)

 ちなみに記事に出てくる「ドント方式」とは、比例選で政党に投じられた票数を議員数として配分する計算式のことを指す。

「岸田さんは『いくら安倍派の議員数が多くても、自動的に閣僚の数を増やすわけにはいきませんよ』と釘を指したわけです。更に興味深いことに、岸田さんは塩谷さんの要望は無下にしながらも、同じ安倍派の萩生田光一経産相(58)は評価しており、積極的に意見交換をしています」(同・関係者)

 萩生田氏に関しては複数の新聞社が、政調会長の可能性を報じた。これに萩生田氏は8日の記者会見で“不満”を表明した。

「会見で萩生田さんは、経産相を続投したいと明言しました。更に、岸田さんが内閣改造について『骨格は維持する』と説明したことに触れ、経産相交代説が報じられている自分は『ああ、俺は骨格じゃなかったのかとそんな思いもあります』と冗談を口にしました」(前出の記者)

統一教会との関係

 要するに萩生田氏は、冗談を口にできるだけの余裕があるのかもしれない。

「萩生田さんは安倍さんが亡くなった後、茂木敏充幹事長(66)に『安倍派における今後の窓口は自分にしてもらいたい』と申し入れたそうです。今回の組閣にあたっても、岸田さんサイドから『安倍派の入閣候補者は?』と問い合わせがあり、萩生田さんが対応しています。この話は塩谷さんや下村さんの耳にも入っていて、『自分たちの頭越しに交渉している』と激怒しているようです」(前出の関係者)

 岸田首相は萩生田氏を「失言など突拍子もないトラブルとは無縁で、安定感がある」と評価しているという。ただし、閣僚にとどまることは避けてほしいようだ。

「読売新聞などが報じていますが、萩生田さんは統一教会の関連イベントで挨拶するなど、密接な関係が疑われています。もし経産相でなくとも大臣として閣内にとどまれば、統一教会との関係を国会で問われるのは間違いありません。それを避けるため、岸田さんは政調会長など党三役を考えているようです」(同・関係者)

女性議員にも関心が集まる

 政治家は人一倍、嫉妬心が強いとも言われる。岸田首相は安倍派と距離を置く姿勢を見せながら、萩生田氏とは“特別な関係”を構築しつつあるようにも思える。となれば、安倍派の議員としては黙っていられない。

「塩谷さんや下村さんの頭越しに官邸と交渉したということも大問題ですが、経産相の残留を会見で希望したことも反発を集めています。岸田さんが考えている安倍派の閣僚ポストは4です。うち参院枠が1あるので、安倍派の衆議院議員が閣僚になれるのは残り3ということになります。ところが萩生田さんが閣内にとどまると、残りは2に減ってしまう。そのため安倍派内から『萩生田さんが勝手なことを言っている』との声が出ています」(同・関係者)

デイリー新潮編集部